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亜急性期からリハビリまで安心できる医療を
医療法人財団 健友会 上戸町病院

 上戸町病院はJR長崎駅から南へ車で10分程の小高い丘の上に位置している。市の中心部から程近い立地であるが、閑静な住宅街が広がっており、山側から昇る朝日も海側へと沈む夕日も綺麗に眺めることの出来る絶好の環境に恵まれている。
 上戸町病院は一般病棟80床・回復期リハビリテーション病棟24床を有し、救急・急性期からリハビリ・在宅・介護まで安心できる病院を目指している。専門科に特化するのではなく、地域の医療要求に応えるべく幅広い疾患に対応するとともに、サブスペシャリティーとしての専門性も追求している。「経済的な理由で受診できない患者さんを生まない」「いつでもどこでも安心して医療にかかれる」ことを目指し、無差別平等の旗を掲げる「はたらくひとびとの病院」である。
 政府は財政健全化のもと、大幅な医療費削減政策を行っている。しかし現実には日本の医療は現場の努力によって何とか持ちこたえている状況で、改善どころか医療崩壊に繋がりかねない。上戸町病院が掲げる理念を貫き通すにはなかなか困難な状況である。
 今回は、押し寄せる医療制度改革に立ち向かいながら、目の前の患者さんを一人一人元気にしていく宮崎幸哉院長にお話を伺った。

◆宮崎 幸哉 院長プロフィール

1984年に鳥取大学を卒業する。その後、鳥取生協病院に赴任し、1990年12月まで7年間勤務する。1991年1月から地元である長崎県諫早市に隣接する長崎市の上戸町病院での医療活動を開始し、現在18年目である。専門科目は外科。

  <病院の沿革>

 1982年の上戸町病院誕生の前に、大浦診療所が設立されたという経緯がある。「働く者が安心してかかれる医療機関がほしい」という地域の人々と、「患者さまの立場に立った医療がしたい」と願う医療の担い手の力がひとつとなって、1972年5月1日に大浦診療所が誕生した。創立から30余年、生活習慣病、被爆者や障害者の医療、労災職業病、保健予防・健康づくり活動に取り組んでいる。2000年からは、ホームヘルプサービスやデイサービス、グループホーム、ショートステイ、配食サービスも行い「医療と介護の総合センター」として多彩な取り組みをしている。
 1978年に医療者の希望と患者さんの声に答える形で、「健友会 センター病院建設五ヵ年計画」が始まり、大浦診療所のスタートから10年後の1982年12月に、後方支援病院として上戸町病院が入院のみの50床でスタートする。この際、福岡と沖縄の民医連から応援の医師が派遣された。翌年の1983年から新卒医師を2名受け入れ、医師の研修も始まる。
「その後も続々と研修医を受け入れ、次代の医療の担い手となる『住民に求められる医師』を育てる病院を目指しています。」

 そして1983年7月、現在まで続く104床を開設する。それまで入院のみだったが、翌年の1984年4月に外来をオープンし、6月にはリハビリ室を開設する。坂道の多い長崎ゆえに、7月には連絡バスも完備され体制が整う。
 1986年には「高校生一日病院体験」をスタートさせる。これは、将来医療界での活躍を目指す高校生のために、夏休みなどを中心に医療・看護体験研修をするもので、病院内の実習から地域に密着した訪問看護や診療所での実習・フィールドワークを行うものだ。その後も多い年は300名程、平均して毎年100名規模で受け入れているという。彼らの中から実際に医療・介護分野に身を置き、長崎県のみならず日本各地の福祉を支える人材が生まれている。
 院長が赴任した1991年、雲仙普賢岳が噴火した。行き場を失う被害者が続出し、院長をはじめとした上戸町病院のスタッフも地元の医療人として当然の行為として現場に向かった。悲惨な光景が広がるなかで、懸命に被害者の手当を行ったそうだ。
 「自然の恐ろしさを実感しましたよ。あの時の光景は今でも深く記憶に残っています。その後も全日本民医連の支援を受けて、1994年まで救援健診活動を続けました。」

 宮崎院長が就任して以降、救急告示病院の認定・リハビリ室等の増改築・回復期リハ病棟の届出・在宅支援サービスの強化など、様々なチャレンジを実践してきた。
 地道に医療活動を続けてきた結果、地域の患者さん・医療機関から厚い信頼を受けて、院長をはじめとしたスタッフも様々な医療資源もフル稼働している。現在は自前の法人で地域のニーズを全て吸収するのではなく、地域の医療機関と話し合いを十分に行い、役割分担する時期に差し掛かっているという。

  <病院の特徴>

 一般病床が80床で小規模なため、冬場の風邪や肺炎が流行るシーズンは入院の受け入れが難しくなる場合もあり、出来ることと出来ないことをはっきりとさせて、あとは開業医を含めた地域の医療機関との連携を充実させている。長崎市で高度急性期医療に傾注している病院は長崎大学病院、日赤原爆病院、長崎市立市民病院などがあり、その他は循環器科や脳神経外科など診療科ごとに特化した急性期医療を行っているため、以上のような医療機関に、急性期高度医療を必要とする患者さんを紹介している。
 「私どもでは亜急性期からリハビリまでに特に力を入れていますが、自宅療養中で肺炎になった患者さんを治療し、回復したらまたご自宅に帰っていただくといった慢性期救急も行っています。」

 回復期リハビリテーション病棟は24床と小規模ではあるが、長崎市内では比較的早くから開設している。主に脳神経外科専門の救急病院や長崎市立市民病院で脳血管疾患の急性期治療を終えた患者さんのリハビリから在宅までの橋渡しを行っている。ベッド数は小規模ながら、リハビリスタッフは現在36名程在籍しており、十分なケアが行える体制が整っている。2階に入院患者用の広いリハビリスペースがあり、1階の外来患者用と分けて設置している。
 「脳血管疾患はリハビリがその後の具合を大きく左右するため、強い責任感を持って患者さんを引き受けています。」

 

 <課題とその対策>

 長崎市内は自転車が売れないことで有名であるように非常に坂道が多く、斜面に暮らす高齢者も多い。膝軟骨の磨り減りや、筋力の衰えがある上に様々な合併症が加わり、治療、リハビリ後も自宅に帰ってしまうと生活が難しい場合がある。長崎でも核家族化が進み、二世帯一緒に生活している家庭が少なく、高齢のご夫婦や独居が非常に多くなっている。各家庭での介護力が著しく低下しており、高齢者自身が長い階段や坂道を上り下りして買い物をすることなどが難しいことも多い。こういった高齢者に在宅療養を強いることは出来ない。選択肢は療養病床か長期療養施設になるが、療養病床でのケアは政府の医療費削減政策のため、今後はますます難しくなる。やはり長期療養施設においてケアをしていかなければならない。
 しかし、療養病床の代わりとなる長期療養施設は、長崎市全体で見ても非常に不足しており、地域の医療機関全体で受け入れ体制を整えていかなければならない。施設の順番待ちをしている方で可能であれば、グループホームとか介護付きの老人住宅などに入居して頂くといった、それそれの家庭環境や容態に応じてリハビリ後の橋渡しをしている。
 健友会では病院・診療所を中心に併設施設として上戸町病院在宅総合ケアセンター・訪問看護ステーションそよかぜ・ヘルパースーションかみとまち・上戸町病院デイサービスセンターなどがあるが、在宅療養が難しい方のために「戸町ふくし村」を設置している。
 「戸町ふくし村」は上戸町病院から車で5分程の所にあり、グループホーム18床、介護付きの老人住宅、介護なしの老人住宅、特別養護老人ホームからなる複合施設であるため、高齢者が自身の状況に応じて様々な生活の場を選択することが可能である。国の政策により療養病床の運営が厳しくなる中で、健友会はリハビリ後も在宅療養が難しい高齢者のための生活の場をいち早く提供している。
 また、大浦診療所では坂の街長崎に暮らす高齢者に有用な食事の宅配サービスを提供している。もちろん保険適用外であるが、「食事さえ何とか出来れば、やはり自宅がいい」と思う高齢者は非常に多い。経営的には採算が取れるサービスではないが、一人暮らしの高齢者の安否を確認することも出来る。こういった宅配業者は最近増えてきてはいるが、高齢者にとっては医療機関が行うことで強い安心感を持つことが出来る。

  <今後の目標>

 上戸町病院の主な使命は、「高齢者の生活を支える」ということである。長崎地区全体の高齢化のスピードは速まり、高齢者の人口が急増している。今後、ますます上戸町病院が地域に果たす役割は重要なものとなっていくだろう。そのような中で、医療・リハビリ機能、在宅支援、住居サービスを強化していく。ただし、健友会だけでの施設展開を考えるのではなく、地域医療連携室を中心に長崎地区全体で役割分担をして、効率的な運営を目指していく。
「特にリハビリに関しては地域の医療機関から信頼を頂いているため、さらにこの分野を強化していきたいですね。急性期病院で治療後、即在宅は無理ですが、リハビリをすれば大丈夫という患者さんを積極的に紹介して頂いています。」
 現在、一般病床を削減して、回復期リハ病床への転換を計画している。健友会の医療資源をどこに振り分けるのか、地域の中での役割を考えて出した結論である。今年から来年にかけてリハビリのスタッフをさらに充実させて、実行に移す予定である。

  <医療制度改革について>

 長崎地区においても医師不足による病棟閉鎖・閉科が実際に発生しており、上戸町病院がそこにいた患者さんを引き受けている実例がある。そのため宮崎院長も強い危機意識を持って、この問題を捉えている。
 医師不足には様々な原因があるが、まずは医師の絶対数が足りない。偏在もあるが、人口に対する医師数を見ると先進国の中で日本は最下位である。これを根本的に解決するには医学部の定員増しかない。教育・研修が必要なため、定員を増やしても即解決するわけではないが、これを実行しなければ永遠に解決しない。
「現在の舛添厚生労働大臣は医療費の削減は限界に来ていると認識していらっしゃると評価させて頂いていますが、もちろん財源をどうするかという問題を考える必要があります。政府は福祉目的税という名の消費税を導入しようとしています。消費税というのは所得に関係なく支出に際して課せられるため、ますます高齢者を追い込むことになりますので、私は強く反対しています。増税すれば増収になるというのは安易な考えです。国民全体の消費が萎縮するし、なにより所得の無い高齢者を苛めることに繋がりかねません。予算編成の段階で無駄を削り、医療費を捻出すべきではないでしょうか。」

  <転職先を探しているドクターへのメッセージ>
 「上戸町病院での主な仕事は、高齢者の急性疾患の治療ということになります。高齢者の方々は元々色んな病気を抱えていらっしゃる中で、体調を悪くして来院されるわけですから、できるだけ総合的に患者さんを診ることが出来る医師が必要です。一つの科目に特化した専門的な治療というのは行っていません。比較的ゆったりと患者さんと接しながら、全身を診て、生活背景まで考えながら付き合っていくような病院です。
  当院は幅広い疾患に対応するとともに、サブスペシャリティーとしての専門性も追求できるような医師を育てるプログラムがありますので、まずは是非見学にいらっしゃって下さい。」
  <病院概要>
経営主体 医療法人財団健友会
所在地 850-0953  長崎市上戸町4丁目2番20号
代表電話 095-879-0705
FAX 095-879-3756
理事長 菅 政和
院 長 宮崎 幸哉
開  設 1982年12月1日
併設施設 上戸町病院在宅総合ケアセンター
訪問看護ステーションそよかぜ
ヘルパースーションかみとまち
上戸町病院デイサービスセンター
こばと保育所
副院長 平野 友久
上尾 真一
加 盟 全日本民主医療機関連合会
(長崎県民主医療機関連合会)
職員数 200名
病床数 104床 一般80床、療養24床(回復期リハビリテーション)
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  <アクセス補足>
JR長崎線 長崎駅より ●バス15分

2008.02.01 掲載 (C)LinkStaff

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