HOSPITAL INFO

バックナンバーはコチラ

85


優しさをもって、信頼と満足の得られる医療を
社会保険 紀南病院

 社会保険紀南病院(以下紀南病院)は和歌山県田辺市に位置し、田辺市やその周辺町村のみならず、和歌山県南部の中核病院としてプライマリーケアから高度医療までをカバーする。356床を有し、一般診療のほか、人工透析、リハビリテーション、救急医療など幅広い診療科を持つ。救急は一部を除いて三次救急まで対応している。特に心臓センター、周産期母子医療センター、外科、精神科などに強みを発揮する。
 経営主体は公立紀南病院組合であり、ほかに紀南こころの医療センター、社会保険紀南看護専門学校が傘下にある。
 山本忠生院長にお話を伺った。

◆山本忠生院長プロフィール

1944年に和歌山県西牟婁郡上富田町で生まれる。1968年に神戸大学医学部を卒業後、神戸大学医学部第一内科に入局する。1970年に兵庫県立病院柏原荘を経て、1972年に兵庫医科大学第一内科助手、1979年に同講座講師となる。1985年に社会保険紀南病院に循環器科部長として着任し、1993年に副院長、2006年に院長に就任する。
日本内科学会認定医・近畿地方会評議員、日本循環器学会専門医・近畿地方会評議員、日本心臓病学会FJCC・評議員、日本超音波医学会専門医・指導医、日本心エコー図学会会員、日本冠疾患学会会員、日本救急医学会会員、和歌山県病院協会理事

  <病院の沿革>

 第二次世界大戦後、引き揚げの人たちが続々と帰国してきた。北からの引き揚げ船が入港したのが京都府の舞鶴港であり、南方からの船が着いたのが田辺市の文里(もり)港であった。このため文里港のそばには引き揚げの人たちのための旧田辺海兵団鳴尾病院があった。大量引き揚げが落ち着き始めた1945年12月にその医療施設や機材を譲り受け、内科、外科、産婦人科、眼科、皮膚泌尿器科、歯科の6科9人の医師がスタートさせたのが紀南病院の前身である。このとき、関係市町村長、農業会と協議し、田辺市外37町村の農業会の共同出資による紀南保健協会を設立した。
 1952年からは自治体経営に変わり、さらに1958年には社会保険病院として発足し、社会保険紀南綜合病院と改称し、経営受託者を公立紀南病院組合とした。
 「周辺の市町村の病院組合で経営をしてきたわけですが、社会保険の業務を受託する自治体病院として生まれ変わったのです。和歌山県で唯一の社会保険の業務を受託する病院となりました。」
 病床も1958年の再出発時に一般病床200床を新設したのを皮切りに、1963年に産婦人科病棟34床、1967年に南館病棟60床、1979年に新館病棟50床と増床が続き、344床となった。しかしながら徐々に老朽化、狭隘化していったため、新築移転が検討される。結果として2005年に田辺市新庄町に新築移転を行い、名称を社会保険紀南病院と改称する。なお病床は一般病床352床、感染病床4床となった。その際、新庄別館を紀南こころの医療センターと改称し、個々に独立した形態に改めた。
 「移転にあたって職員の希望を合わせていったら700床ぐらいになるところでしたよ(笑)。旧来の344床を基本に、当時流行の兆しがあったSARSをはじめとする感染症の対策、それから救急の充実を考え、356床となりました。現在の場所は阪和自動車道の南紀田辺インターチェンジからすぐで、県内のどちらからでも来院しやすくなりました。紀伊田辺駅からは少し離れてしまいましたが、バスも頻繁にありますので、交通の便は良いところだと思っています。」

  <病院の特徴>
和歌山県南部の地域中核病院

◆ 心臓センター

 循環器専門医である山本院長、赤木副院長、心臓血管外科専門医である島崎副院長と紀南病院の3人のトップが所属し、紀南病院を代表する診療科となっているのが心臓センターであり、和歌山県南部では数少ない高度循環器治療施設である。診療圏は病病連携、病診連携の充実から、和歌山県南部だけでなく、三重県や奈良県の一部にまで拡大している。
 「私どもは和歌山県の中では早くから心臓の手術を行っており、歴史としては長いですね。生理機能検査室のスタッフの教育に力を入れたので、心エコー図などほとんどの検査は予約なしで即日の施行が可能です。心エコー図だけで月に400例ほど行っています。」

 急性心筋梗塞、急性心不全、致死性不整脈などの循環器救急疾患も24時間対応可能であり、山間部からのドクターヘリや海上の船舶からの搬送依頼も地域の特性上、多いという。
 また和歌山県下では数少ない高速回転式粥腫切除術の認定施設であり、透析患者の高度石灰化冠動脈病変などの適応症例に有効な治療を行う。
 「高速回転式粥腫切除術は2005年には13例を行いました。PCI全般に関しては2005年には367例と2003年時に比べほぼ倍増していますね。」
 ICU/CCUは8床を有し、大動脈内バルーンパイピング、経皮的心肺補助装置、持続的血液透析濾過なども使用可能となっている。
 「心臓血管外科ではOPCABも取り入れるなど、ほとんどの成人心臓血管外科疾患に対応できます。今後も循環器科と心臓血管外科が協力しながら、心臓センターとして地域に必要な医療を提供していきたいですね。」

◆ 周産期母子医療センター

 県南部の周産期医療の中核施設であり、ハイリスク胎児、妊産婦に対応し、母体搬送は24時間体制となっている。和歌山県は乳児死亡率が全国平均より高かったために、1984年に和歌山市、新宮市と同時期にNICUが開設された。新宮市のNICUは廃止となってしまったが、結果として現在では当初の目標をクリアした数字となっているという。2005年の新病院開院でNICUは6床と2床増床したが、2005年度の利用状況は紀南病院の産婦人科からが53件、他の施設からの入院が22件とここ数年は落ち着いた状況になっている。

 また産婦人科は南和歌山医療センターの医師と合流し、5人体制となった。そのため分娩件数も大幅に伸び、2006年度は760件(うち帝王切開が140件)であった。妊婦への外来指導、母親学級では助産師も積極的にかかわる。
 「この地域の皆さんには安心してお産をして頂ける施設であると自負しています。和歌山県は岬と入り江による複雑な海岸線に加え、山の筋も多く、特に小児救急医療には不利な地形なのです。県の北部には和歌山県立医大病院、日本赤十字社和歌山医療センターがあり、南部は私どもが中心になって進めていけたらと考えています。最近では研修医の中から小児科医になりたいという嬉しい声も聞かれるようになってきましたよ。」

◆ 糖尿病内科

 藤本内科部長が糖尿病専門医であり、糖尿病教育病院、糖尿病教室などに力を入れている。糖尿病教育病院は2週間を1クールにして、医師、看護師、薬剤師、栄養士、臨床検査技師、理学療法士がチームを組んで、患者さんの指導にあたるものである。医師や栄養士の講義のほか、食事指導、運動指導に加え、必要に応じて薬物治療も行う。
 糖尿病教室は毎週1回2時間程度をあて、藤本部長による講義、栄養指導、臨床検査技師による血糖測定などの内容を盛り込んでいる。

◆ 外科

 「消化器外科はもともと大阪大学の消化器外科グループとつながりが深く、悪性腫瘍を中心にほとんどの疾患を対応してきました」と山本院長が語るように、食道がん、胆石に内視鏡手術を行い、県南部では最多の症例数を数えている。
 地域がん診療連携拠点病院の指定も受け、外来でのがん化学療法室も新設した。ここには10床を完備し、2006年には320例に達するなどフル稼働を続けている。
 「仕事をされている患者さんには外来化学療法は喜ばれていますね。また乳腺に関しては乳がん、乳腺症などの症例が中心で、よく頑張っています。」

◆ 透析科(血液浄化センター)、眼科、耳鼻咽喉科

 災害拠点病院として、新病院移転を機に透析ネットワークを構築中である。これは地域の開業医、臨床工学技士などと連携を取り、災害時でも透析を受けることができるようにするためのシステムである。透析科には2人の常勤医師が在籍し、シャントトラブルにも24時間対応している。
 眼科では糖尿病、高血圧などの全身疾患からの眼合併症も多く、内科、循環器科と厚い連携体制を取る。外来手術の症例数も新病院へ移転後、非常に増加している。
 耳鼻咽喉科では頭頚部がんに対し、化学療法、放射線療法、手術療法の三者併用療法を用いている。
 「これらの科は県南部で唯一の高度医療が可能な診療科なのです。したがって地域のニーズも高く、非常に存在意義がありますね。また院内の全ての診療科に言えることですが、患者さんは高齢者の方が多くなっています。そのため院内の感染、栄養などに気を配り、合併症なしでいかに早く退院して頂けるかを全科挙げて取り組んでいるところです。」
 

◆ 紀南こころの医療センター

 精神科領域を取り扱う病院として、1956年に新庄別館として100床で開設、その後1984年の移転時に312床となる(現在254床)。2005年紀南病院の新築移転を機に紀南こころの医療センターと改称する。
 精神科救急基幹病院であり、和歌山県南部を診療圏としている。
 急性期治療に加えてケースワーカーによる精神保健福祉相談、精神科訪問看護や精神科デイケアなど、様々なサービスを通じて地域住民のこころの健康をサポートしている。

  <運営・経営方針>

◆ 経営方針

 新病院になったのを機に患者さんへ満足度調査を行ったところ、やはり院内環境に関する満足が上位を占めたという。この新病院建築時の医療機器等整備の減価償却費年間8億円が負担となっているが、現在のところ概ね計画通りに進んでいる。
 「経営努力としては材料費の抑制、購入管理の徹底、値段の交渉などが挙げられるでしょうか。また私どもは社会保険紀南看護専門学校をグループに持っていますので、看護師の確保が比較的容易ですし、離職率も非常に低いのが特徴です。そこで7:1も取得しましたが、患者さんからは『話をゆっくり聞いてもらえるようになった』と好評です。検査室の生理部門からは全国表彰を受ける技師も出るなど、コメディカルも充実してきました。あとは医師の確保ですね。私どもを離れた医師から『田辺の患者さんは優しかった』と聞くことがよくあります。こちらには医師と患者さんとの良い関係が残っており、住民の皆さんがどのように医療を捉えていらっしゃるかということが経営的にも大きなポイントでしょう。」

◆ 地域医療連携室

 紀南病院の地域医療連携室は県南部では最も早く2002年に設立された。赤木副院長が地域医療連携室長を兼任し、看護師2人、MSW2人、事務職員2人の体制である。内容は退院指導が中心であるが、そのなかで最適なリハビリテーション病院の紹介や訪問看護ステーションとの連携など、幅広い業務をカバーしている。
 「窓口を一本化することで、より迅速で確実な対応になったと思っています。人材も増やしましたし、今後は連携パスを充実させて、地域完結型医療をさらに推進していきたいですね。」


◆ 健診部

 社会保険の業務委託病院としては政府管掌保険の健診は欠かせない業務である。健診内容としては巡回健診と院内健診がある。巡回健診では和歌山県南部を中心に、全域に渡って健診車による健診を行っている。デジタル健診バスを保有し、胸部・胃部X線デジタル撮影装置をはじめ、各種検査もデジタル対応を行う。デジタル画像や健診データは院内の情報システムに取り込み、各診療科と情報を共有している。
 「以前は道路事情も悪かったので、新宮あたりまで泊まりがけで行っていましたよ。最近は道路が良くなってきたので、効率も向上しました。政府管掌保険によるものだけでも年間約5000件で県下最大規模となっています。」


◆ 市民講座

 「こちらに移転してきて綺麗になったせいか、患者さんから『以前は下駄ばきで来れる親しみやすさがあったのに、新しい病院は敷居が高く感じる』と言われるようになってきました。そこで、もっと私どもを親しく感じて頂こうと市民講座を始めることにしたのです」と山本院長が語るように、紀南病院では市民講座を開講している。2か月に1回のペースで、メタボリックシンドローム、腰痛、更年期障害、青少年の性の問題など様々なテーマで開講され、時には立ち見が出るほどの盛況ぶりだそうだ。


 また医療従事者向けの講座も行っている。「金曜学術講座」と題し、結核、院内感染、クローン病、レントゲンの読影などのテーマでの医療講座となっている。
 「もともとは研修医用の講座として始めたのですが、看護師や薬剤師、それから近隣の開業医の先生方もお招きして行うようになりました。病院としては皆が集まりやすい雰囲気を作っています。

  <今後の展望>

 急性期病院として患者さんを集める努力をしていきます。親しみやすさ、かかりやすさを残した専門医療を行うのが理想です。そのためにはまず良い医師を育てていけるような病院でなくてはいけないでしょう。臨床研修制度の必修化以来、私どもは和歌山県下で唯一フルマッチングを続けています。その中にはお父さんも若い日に私どもで研修を行ったという2代目研修医が2人いるんです。これは先輩方のお蔭であり、そういう伝統を続けていきたいですね。そして後期研修も充実させる必要があります。次世代の医師がどこで活躍するにしても、誇りを持って仕事ができるようにしていく教育を目指します。

  <病院の理念>
優しさをもって、信頼と満足の得られる医療を
社会保険 紀南病院の求人票はこちら
  <アクセス補足>
JR紀勢本線 紀伊田辺駅下車後、バスで「紀南病院」下車すぐ


【HOSPITALINFOバックナンバーリストへ】

2008.01.01 掲載 (C)LinkStaff

バックナンバーはコチラ