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出生直後から看取りまでの地域医療を担う
国保多古中央病院

 千葉県香取郡多古町にある国保多古中央病院は、地域の中核的医療機関として地域に密着した医療サービスを提供している。また検診から訪問看護・訪問リハビリ・通所介護・通所リハビリ・居宅介護支援事業など、保健と福祉を含めた包括的医療を実践している病院でもある。しかしこの5年の間に常勤医師の数が12名から7名まで減ってしまい、整形外科を閉鎖するなど、診療を縮小せざるを得なくなり、救急の受け入れも難しくなってきている。

 現在の日本の医療が内包している問題点、医師不足といわれる現状の真の姿を小久保茂樹院長に語っていただいた。

◆小久保茂樹院長プロフィール

  1975年に千葉大学医学部卒業後、千葉大学医学部第一外科に入局する。1977年に国立療養所下志津病院医員、1978年に成田赤十字病院外科医員、1980年に千葉大学第一外科医員を経て、1983年に成田赤十字病院第3外科部長として着任する。1991年に国保多古中央病院に副院長として迎えられ、1997年4月に国保多古中央病院院長に就任する。 千葉県国民健康保険直診協会常任理事、日本外科学会指導医、日本消化器外科学会認定医

  <病院の沿革>

 国保多古中央病院は、1951年8月、組合立という形で55床の病院として開院した。「一地域に一病院」との呼び声のもと、盛んに病院が造られ始めた時代である。この地域では旭市の国保旭中央病院よりも早く開設された。さらに、不燃建築にする必要のために1964年に79床に増床して移転を行う。
 「私が1991年にこの病院に来たときには当時に建てられたままの病院で、冷暖房がなく、夏はよしずで日よけをしているような状態でしたよ。」

 現病院が完成したのは1993年6月のことである。健康・福祉・医療の包括医療を行える一般病床100床の病院として生まれ変わった。さらに2001年には増築して、療養病床56床、一般病床10床を増床した。
「一般病床だけでは今後100床規模でやっていけないだろうと考え、地域包括医療を担っていくことにしました。以前から予防医療と保健事業には力を入れていて、病院の発足当時から胃がん検診については数十年の実績があり、住民検診やこの近くにある工業団地の企業検診などを行っています。また福祉の分野でも、27~28人にデイサービスを利用していただいていますし、居宅介護支援事業や在宅診療も行っています。地域に密着した医療サービスで、小児科から最期の看取りまでをさせていただける医療を実践しています。」

  <病院の特徴>

 内視鏡や超音波の設備はもちろんのことながら、院内の検査科に生理機能検査室、自動分析装置があり、検査機関を経ないで迅速に検査結果が出るのは、地域にありながら診療所にはないメリットだ。またMRIとCTも備えている。
 「大きな病院だと、検査の予約を取るのに1ヶ月待ち、1ヶ月半という話もよく聞きますが、ここならMRIでもその日すぐに検査することも可能です。地域に密着していながら、検査機器などが揃っていることが地域中核病院のいいところですね。3年ほど前に中国人のドクターが旭中央病院に研修に来たのですが、旭では規模が大きすぎてよく分からないと、当院に来ました。そこで当院のシステムはすばらしいとひどく感心していただき、帰国後に当院を参考に中国で新しい医療機関を作られました。細かい部分でまだ分からないところがあるからまた来たいと言っていますし、私も漢方を学びたいのでいろいろ交流したいと思っているのですが、やはりこの規模の病院とシステムは地域医療によく合ったスタイルなのだと思います。」

 患者さんは多古町内が約70%、芝山地区が15~16%で、そのほかは栗源・匝瑳・成田からが少しずつというところである。多古町の高齢化率は27~28%と比較的高く、患者さんの年齢でみれば圧倒的に高齢者が多い。しかしながら交通機関が運行本数の少ないバス路線しかなく、送迎してもらえる人でないと通院できない点が地域の病院として課題になっているという。
 「私がこの病院に来たときには、患者さんへの接遇が悪く、看護レベルもいいとはいえませんでした。それから勉強会を開いたり、旭中央病院から新しい看護師が移ってきたりして、次第にレベルアップしていきました。また医療安全については小児科の医長が海外の学会に出席したり、他の病院を見学するなど熱心に取り組んでいます。その成果をこの病院に活かしてくれていて、この地域では最も進んでいると思います。 例えば医療具類も採算より安全性を優先して選ぶとか、ヒヤリ・ハットの経験を数多く挙げていくことでスタッフみんなが興味を持ち、対策を講じていくことなどで、安全な医療を地域に提供しています。」

 

  <医師不足の現状>

 しかし国保多古中央病院では深刻な医師不足になっている。2001年までは常勤医師が12名の体制だったが、2002年には筑波大学から派遣されていた整形外科の医師2名が引き上げられ、現在は、非常勤医師による週2日の診療となっています。整形外科を閉鎖せざるを得なくなった。整形外科がなくなると、リハビリにも影響を及ぼすが、いまだ復活できずにいる。その後も、開業や他の病院へ移るなどの事情で医師が抜けていき、補充できないまま、2006年10月からは内科が常勤医2名で診療を続けざるを得ない状況になっている。
 医師の減員に伴って診療を縮小したため、外来患者は昨年1日平均200人であったが、150~160人にまで減らしている。
 「この地域の方たちのために入院機能はぜひとも保持したいので、外来を地域の医院にお願いして減らしています。
 しかし深刻なのは救急です。二次救急の指定病院ですので2~3年前までは基本的に救急車は断らない方針でやってきたのですが、現在は昼間と夜間救急の外科は受け入れますが、夜間の内科の患者さんは普段この病院にかかりつけの方しか受け入れられません。当院が属する香取海匝地区には国保旭中央病院という大きな病院はあるのですが、そちらもパンク状態です。ここで対処できない急患が出て、夕方に旭中央病院に送っても、処置が済めば夜中には帰ってくることもあるというのが現実です。救急車からの連絡で『もう9軒の病院に断られている』と言われれば受け入れざるを得なくなるのですが、それでこの病院で対処できない患者さんだった場合はその9軒を外してお願いできるところを探すしかないということですよね。この現状では地域医療は崩壊していると言わざるをえません。」

 医師不足解消のために、院長、副院長が以前勤務していた成田赤十字病院から初期臨床研修の研修医を数ヶ月間、地域医療の現場研修という形で派遣してもらっているほか、来年度からは後期研修地域医療枠として2~3年目の後期研修医に国保多古中央病院での研修を働きかけてもいる。多古中央病院のような総合医的な診療は、開業医や地域の病院の勤務医になろうという研修医には大変勉強になるであろう。
 「患者さんを迎える立場としては、一人の研修期間が終わっても、切れ目なく次の研修医が来てくれるような体制を望んでいますが、やはり常勤の医師がぜひとも必要になってくるのです。」

  <地域一体となった病診連携>

 現状に対処するために、地域の医療が一体となって役割分担を行っている。
  「当院はもともと地域のかかりつけ医を兼ねた病院です。 しかし人員の面でそれができなくなって内科を縮小したときには、町内の医院が協力してくれました。医院から検査のために送られてきた患者さんは早く結果を出してお返しするようにしていますし、手術した患者さんのフォローアップはお任せしています。」

 また旭中央病院や成田赤十字病院との関係も良好に保ち、キャパシティを超えた患者さんを受け入れてもらっているほか、縮小した整形外科に関しては匝瑳市民病院に診療協力を依頼している。

  <今後の方針>

 現状では毎日の診療を滞りなく行っていくだけでいっぱいの状況である。しかし地域包括医療を敷衍するという役割を果たすためには、地域全体として過不足ない医療を提供できるようにと願っているのも確かである。
 「産婦人科や耳鼻科など、この地域になくて強い要望のある診療科目はありますが、今のままでは新しい科の増設は難しい状況です。私が最初になんとかしたいと思っているのが整形外科医を呼び戻すことです。高齢者が多いので、骨折や腰痛、膝痛を訴える患者さんが多いのですが、その方たちに遠くの病院に行ってくださいと言うのは忍びないものがあります。また、この地域には皮膚科がないのですが、需要は数多くあります。私は本来は外科医なのですが、私の代わりに外科医に来ていただき、私が皮膚科を診る可能性も考えて、いま皮膚科の勉強を始めています。ともかく新しい医師に来てもらうことが先決ですね。」

  <行政は医師不足の認識を>

 「私たちはこのように医師不足を実感しています。OECDの平均では人口10万人に対して医師は300人ですが、日本は多いところでも250人です。ところが千葉県は百数十人と低い水準です。平均としてもOECD各国に比べて少ないのですが、さらによく見ると、医師は都市部の大病院に集中していて、地域にはいないというのが現状なのです。国にしても県にしても、どこに医師がいてどこにいないのか、実態をつかんでいません。もっと現場の声を聞いて、どこに配分しなければならないのか、きちんと把握しなければいけないでしょう。」

 かつては大学の医局制度が厳然としていたため、医師が足りないというときには病院長や自治体の首長などが熱意を持って依頼すれば派遣してもらうことができるという道があった。しかしそれが崩れた現在ではプッシュする場所がなくなったともいう。関連する大きな病院に派遣を頼むにしても、相手もまた同様の状況を抱えていると分かっているだけに強く願うことができない。

 「机上の数字ではなく、現場の本当の状況を知って予算配分や政策立案ができなければ、医療崩壊は目の前です。日本の医療費は31兆円といいますが、そのほとんどは自己負担と保険料です。パチンコ産業が30兆円、葬儀が15兆円産業だということを考えると、本末転倒としか考えられません。現実を真摯に見つめて適切な政策を取らなければ、患者さんも医師も立ち行かなくなるのです。診療報酬や医師の数を増やすことについては国レベルの政策ですが、適正配置は県の役割です。その県が、他の都道府県から千葉に来て勤務する医師に対して月に20万円の助成を5年間行うという制度を出してきました。それでは、もともと千葉で誠心誠意地域医療をやってきた医師はどうなるのでしょう。そのような政策ではなく、勤務医になることに魅力がもてるような医療行政をしてもらいたいと思います。」

  <求める医師>

 多古中央病院では、現在診療を手控えている内科のほか、縮小している整形外科、小児科の医師を求めている。これは単にこの病院の医師不足を解決するだけではなく、多古町周辺地域全体の医療をまんべんなくカバーするためにも必要な人材だ。
「当院には魅力もたくさんあります。まず生まれてすぐから寿命の尽きるまで、トータルして患者さんを診られること、そして自分が最初に患者さんを診て、診断をつけ、治療が可能です。これは自分の実力を試すことでもあり、力さえあればそれをいかんなく発揮できる場でもあるということです。特に老人を診る技術には特別のものがあり、頭でも心臓でも科目の隔てなく何でも診られなければならないし、診られるようにもなります。
  そういった医療を行ううえで、当院は規模が小さいので院内のほかの科の医師に相談することは日常的に行われていますし、コミュニケーションも密です。病診連携と医療連携もできていますので悩むことはありません。検査なども小回りが利くので早くできます。
  このような経験を積むことは、将来の日本の医療で一般の臨床医、特に開業医になるには大変役に立つでしょう。特別に専門的な分野で研究するのでない一般医であるならば、あらゆることにある程度の対処ができるというのは、欠かせない経験です。
  またここは環境のいい田舎らしい病院ですが、実際は千葉には車で1時間、成田へは30分、東京駅にも高速バスで100分という距離です。学会などに出席するにも出やすいところですし、成田からなら海外へもすぐに行けます。このような地の利を活かせば、かなり大きな視野で医療を見ていくこともできるはずです。」

 病院の前には水田が広がり、背後には里山という中に悠々とスペースをとった病院でありながら、高速バスのバス停までは徒歩10分足らずという立地である。地域と一体になった病院でありながら、適切な設備を持つ恵まれた医療環境である。国保多古中央病院だからこそ医師としてのやりがいと医療経験が得られるだろう。

  <病院理念>
国保多古中央病院の理念
1・地域医療の充実を図り「安心と満足を提供する」病院作りに邁進します。

2・職員は、常にその技術を磨き、仕事に情熱を持ち、病院を利用する方々に真心と優しさを持って接します。
  <病院概要>

診療時間

月~金曜 8:30から17:00まで (受付は8:30から11:30まで)
土曜   8:30から12:30まで (内科外来は休診)

面会時間

平日
土日祝日

15:00から19:00まで
13:00から19:00まで

住 所

〒289-2241 千葉県香取郡多古町多古388-1

電 話

0479-76-2211

FAX

0479-76-3286

URL

http://www.takochu.tako.chiba.jp/

e-mail

hospital@town.tako.chiba.jp (病状についてはお答えできません)

併設施設

ケアプランセンター 、訪問看護ステーション、 デイサービスセンター

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  <アクセス補足>

 

2007.08.01 掲載 (C)LinkStaff

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