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「やりたい医療より、必要な医療を」
医療法人ふらて会 西野病院

 医療法人ふらて会 西野病院は北九州市八幡東区に位置する。JR鹿児島本線八幡駅から車で15分、JR小倉駅からは車で20分と、自然に恵まれた約10000坪の広大な敷地にある。同じ敷地に「ケアハウス惠迪館(けいてきかん)」、「グループホーム 森の家」、「デイサービスセンター 惠迪館」、「ヘルパーステーション フロイデ」が併設され、また多目的利用のためのログハウスが小高い丘に建っており、園芸療法を行う庭園などが豊かな自然環境に花を添えている。今回は理事長である西野氏にお話を伺った。

◆西野憲史(にしのけんし)理事長 プロフィール

  1945年大分県中津市で生まれる。1970年に日本大学医学部を卒業後、1971年に日本大学医学部第2内科に入局する。医局人事で、山梨甲陽病院(山梨県北杜市)、都留診療所(山梨県都留市、現 都留市立病院)にそれぞれ1年勤務した後、1983年1月に父親が経営する西野医院に戻り、勤務する。1986年10月に西野病院を開設し、院長に就任する。1995年に医療法人ふらて会 西野病院理事長、2002年に社会福祉法人ふらて福祉会理事長に就任し、現在に至る。

  <病院の沿革>
外観

 1950年に西野憲史理事長のお父様である西野憲次氏が西野医院を開設する。現在の西野病院から約1km離れた場所であった。当時は高度成長時代が始まる頃で、北九州工業地帯が近隣に位置していることもあり、患者さんも多かったそうだ。西野憲次院長は30数年にわたり、多くの患者さんを診てきたが、高齢となり、西野理事長に後を託した。西野理事長は大学卒業後、山梨県内で勤務医生活を送っていたが、1983年に帰郷し、西野医院を継ぐこととなる。
地元に帰った西野理事長は高齢者の患者さんが非常に多いことに驚いたそうだ。自分の育った場所で高齢化が進んでいる現状をみて「やりたい医療よりも、必要な医療」がここにはあると痛感する。また医局では循環器を専攻していたので、循環器疾患を中心に、慢性期医療や老人医療で何が必要かを考えて新たな展開を図ることを模索した。
そして1986年に西野病院を設立し、1995年に医療法人ふらて会西野病院として新しく出発した。「ふらて」というのはあまり聞き慣れない言葉だが、ラテン語で「仲間」を意味する<frate>を語源としており、「同じ理念をもって共に歩んで行く仲間」という意味を込めてつけたそうだ。ところが2001年の第4次医療法改正により、慢性期病床と急性期病床を分ける必要が出てきた。さらに一般病床の病床面積の問題など、老人医療を取り巻く環境が一変した。
そこで西野理事長は病院を新築することを決意し、約10,000坪の土地を取得して、2003年に新築移転を完了する。従来の場所から約1.3km離れた場所であるが、都市高速道路の料金所も近いため利便性も良く、かつ広大な敷地を取得できることもあって、この地に決めたそうだ。新病院は一般病棟20床、特殊疾患療養病棟50床、医療療養型病棟50床で構成される。

 待合ロビーやカフェテラスなどもゆったりくつろげる空間を演出し、外壁も明るいライトブラウンが使用されているため、病院という暗いイメージを払拭するのに一役買っている。同じ時期に電子カルテを導入し、チーム医療の根幹である「患者さんの情報の共有化」ができるようになった。
理事長は「社会福祉法人も同時に設立するという目的もありましたので、広い場所を中心に探していました。高齢者は歩いて行ける範囲が限られていますので最初はやはり外来患者数が減ったのですが、入院の療養環境は格段に良くなりましたから、他の総合病院よりも良い環境を作ることができたと思います」と話す。

  <病院の特徴 慢性期医療の充実を>
 高齢社会の到来で老人医療のニーズの増大、中高年にしのびよる生活習慣病が増えている一方、慢性期疾患に対応できる病院の数が足りないことが問題視されている。
「今の医療の教育は急性期医療を中心にプログラムが組まれており、急性期の医療で教育を受けてきた人たちが慢性期医療を行っているケースがほとんどです。慢性期医療を専門にしたり、あるいは突き詰めて考えている人が少ないですね。慢性期の患者さんは実際に増えているので、慢性期医療の充実にどう取り組むかを考えることが重要になります。」

急性期治療は悪い部分を治せばそれで終わりという側面もあるが、慢性期治療は複雑であり、様々な要因が絡み合っているため難しい。それゆえ慢性期医療では医師がトップダウンで看護師や技師に指示を出すよりも、チーム医療で患者さんに対応する必要がある。つまり患者さんをよく理解しているのは医師よりも介護スタッフかもしれないし、技師かもしれないということだ。医師はそのチームリーダーとして、ボトムアップで意見を聞き、指示したり、あるいは医師が指示を出さなくてもスタッフが独自に対応する場合もある。
 「例えば、乳がんを手術すると、手術した側の腕が非常に腫れる場合がありますが、医師はたまに来て『リハビリしなさい』と言うだけで帰っていきます。しかし患者さんはその一言で治るわけではなく、リハビリのスタッフが頑張り、また介護のスタッフがお風呂に入れてあげることなどを続けることによって、状態が少しずつでも改善していくのです。乳がんの手術をした患者さんや脳卒中で体が麻痺している患者さんの治療は毎日変わるわけではありません。患者さんが目標や生きがいなどを持って暮らせるように仕向けていくことが欠かせないことであり、QOLの向上を大切に考えています。」

  今までの病院はそういった点を努力してこなかったという反省が西野理事長にはある。そこで西野病院では、医師やスタッフに「慢性期医療では、何がベストなのかを常に考えるように」という指導を行っている。ただしチーム医療がうまくいったとしても、それだけでは患者さんを治癒することはできない。西野理事長はそれなりの仕掛けが必要だと話す。
「人間は人工の物の中にいることで非常にストレスを感じますが、自然はとても人間を癒してくれると思います。特に高齢期ではうつ状態になったり、高齢期になればなるほど我がままになることも多いようです。ストレスを吸収できるのは、人や物ではなく、自然なんでしょうね。」
そういう意味では慢性期病院の周辺環境はとても大事であろう。西野病院が他の病院に勝る面はここにあると言える。
  <運営・経営方針>

 西野理事長は運営面における現在の課題として、外来の患者数を増やすことを一番に挙げる。その対策として、近くの医療機関との連携を実現した。
「幸いなことに、私どもの経営方針に賛同して頂いて、スタッフともども来てくださるようになりました。現在外来患者数は1日平均50~60人ですが、そちらの医療機関は70~80人だそうで、その患者さんに来て頂けると大幅に患者数を増やすことができますね。」
さらに地域リハビリテーションにも注力する。回復期のリハビリが終了しても、維持期のリハビリテーションの受け皿を作っている。そこでは地域住民の医療や介護にかかわる「サービス利用相談」を受けて、その後相談に応じて実際のサービス利用のプランを立て、サービスの提供開始まで、トータルなサポートを行っている。在宅支援センター内に4つの医療保険・介護保険サービス事業所を配置しており、各サービス事業所が連携して適切かつ必要なサービスを提供する。
「体の不自由な方や高齢者の方も一般の方と同じように生活できるノーマライゼーションを目指したいですね。」

  <今後の展望>

 西野理事長は外来と病棟を担当しているが、この担当を減らすことを計画中だ。西野理事長が診ている患者さんの数を減らせば、増患対策などの経営面をさらに考える時間が確保できるからである。
また回復期リハビリテーションを充実させたい意向である。回復期リハビリは医師に加え、理学療法士、作業療法士などのスタッフや看護師など、様々な専門的な職種が欠かせない。そのために患者さんの情報の共有化も必要で、特に医療と介護の橋渡しもあるため、介護福祉士などの介護職との連携を確立しなくてはならない。
「ふらて会の名前にもなっている同じ志を持つ人の参加大歓迎です。いつでも遊びに来てください。チーム医療については非常に進んでいる病院だと自負しています。余談になりますが、リハビリの日数制限を設けたことは非常に遺憾で、厚生労働省は国民ではなく、どこを向いて施策を出しているのでしょうか。」

  <地域とのかかわり>

 西野理事長は1992年4月に八幡医師会理事に就任し、1994年には北九州市医師会理事に就任するなど、医師会活動に積極的に取り組んでいた。また行政と40団体が加わった八幡東区いきいき21推進協議会に15年間携わり、地域の保健、医療、福祉の連携に力を入れる。また医師、保健師、社会福祉協議会のメンバーとともに認知症の予防や啓発のための講演会を定期的に年間20回程度行っている。
「このようなことはすぐに効果がでるものではありませんが、講演会も徐々に来場者も増えており、今後もこのような活動を続けていきたいと思っています。」

  <病院理念>
医療法人ふらて会 西野病院の理念
・適切な医療と、優れた環境の提供
・一人ひとりにやさしさと、やすらぎの提供
・生涯にわたる健康の支援
  <病院概要>

創立

昭和58年

敷地面積 15,000㎡
建物面積 7864㎡

病床数

120床

診療科目

一般内科、消化器内科、循環器内科、神経内科、呼吸器外科、整形外科、放射線科、小児科、リハビリテーション科

  <アクセス補足>

・JR八幡駅より車で  15分
・JR小倉駅より車で  20分

・北九州都市高速道路 山路インターチェンジ下車、車で1分
・西鉄バス43番 「松尾町」 バス停下車・徒歩5分

2007.05.01 掲載 (C)LinkStaff

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