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環境変化を捉え特色ある地域医療へ
川崎社会保険病院

 川崎市南部地域で、地域医療の連携を深める中で特に、心臓カテーテル、リハビリテーション、糖尿病、緩和ケアの4分野を中心に市民の健康を守っている病院。結核や公害による呼吸器疾患の時代から、いま、メタボリックシンドロームへ、時代と共にその役割を変化させながら、地域貢献してきている。

◆永澤康滋院長プロフィール 永澤康滋院長は1971年東邦大学医学部を卒業後、東邦大学医学部大森病院第一外科に勤務。1986年には東邦大学医学部第一外科医局長、翌1987年には東邦大学医学部講師(第一外科)に、1994年には東邦大学医学部助教授に就任した。
1997年より川崎社会保険病院主任外科部長として着任し、2000年に副院長を経て2006年4月に院長に就任する。日本外科学会指導医、日本消化器外科学会指導医、日本大腸肛門学会指導医、日本ストーマリハビリテーション評議員、日本褥瘡学会評議員。

<病院の沿革>

 川崎社会保険病院が誕生したのは、昭和23年10月。日本冶金株式会社の診療所を買収し、「健康保険川崎病院」の名称、病床11床で発足した。

「現在全国52箇所にある社会保険病院は、国の医療政策の実験的な性格をもった施設で、医療上課題を抱えた地域におかれ、不採算分野を埋めるような役割が課せられたようですね。この川崎社会保険病院も、京浜工業地帯のまんなかの、埋立地に石油コンビナートや鉄鋼関連の工場などが立ち並ぶ埋立地に置かれました。当時は国民の健康状態、栄養状態ともよいとはいえない状態で、肺結核の患者も多く、結核病棟があったということです」

永澤康滋院長は、川崎社会保険病院の発足についてこう語る。

昭和32年には「健康保険総合川崎中央病院」と改称。病床数は360床に増えた。
昭和40年代は全国各地で公害が問題となり、この地域も川崎喘息の患者が数多く出た。この時期、肺結核治療と喘息治療の必要から呼吸器センターが開設され、さらに昭和47年には健診センターも開設された。健診業務は発足から間もなく始められたが、これは社会保険病院に義務付けられているところがあったようだ。個人の病院ではなかなかやりにくい不採算分野が、社会保険病院が担当するような歴史的経緯があったのだ。

 その後結核患者は激減し、また公害対策が進んで川崎の空気がきれいになってくるにつれ、呼吸系疾患の患者も減っていった。そしてこの10年あまり、旭硝子の工場跡地にマンションが建設されたのをはじめ、工場が次々と撤退し、それに代わって住宅が増加。それまで昼間人口が中心だったのが、夜間人口がどんどん増加している。
「そのような中、平成6年から病院の建て替え工事が着工され、10年10月に現在の1号館が竣工。308床の病院になりました。この規模は、ちょうどいいところに落ち着いたと思っています。続いて、13年5月には介護老人保健施設『サンビューかわさき』と健康管理センターの入った2号館も竣工しました」
現在は、地域の企業の社員や地域住民の疾病予防、健康の保持増進、川崎市南部地域の中核病院として役割を果たしている。

<病院の特徴>

 社会保険病院としての性格から、肺結核、公害喘息、肝疾患、糖尿病、循環器疾患と、地域の疾病構造が変化するのに合わせ、診療体制を対応するものにと整えてきている。


◆ 経皮的冠動脈形成術

「循環器科では、心臓病の経皮的冠動脈形成術において5年連続で1000症例を超える実績をもち、全国的にも手術件数の上位ランキングに名を連ねています。人事的な異動なども入っていますが、その循環器のレベルを下げることのないよう、今のメンバーも努力を続けています」
患者は、神奈川県内はもちろん、東京、関東近県をはじめとした全国から集まっている。現在は部長で日本心血管カテーテル治療学会指導医の資格をもつ菊池正ドクターほか2名の態勢で行っており、24時間365日受け入れ可能な態勢を整えている。
これが評価され、心臓カテーテルの分野で、「患者の選ぶいい病院ランキング」の川崎市内トップの病院との評価も受けている。また、心臓血管外科においても、成人の心疾患(虚血症、弁膜症、大血管)、大動脈疾患を中心に、末梢血管、ペースメーカーに至るまでをカバーしている。
他科との連携による、脳梗塞、糖尿病、腎不全などの重篤な合併症を抱える患者への診療も行い、総合病院の特色をよく出してもいる。


◆リハビリテーション

この川崎市南部地域では、リハビリテーションについて適切に行える病院が少ない中、この病院ではリハビリテーションセンターを設置している。
「リハビリテーションセンターは、1つのゆとりある広い空間の中に、理学療法室(PT室)、物理療法室、作業療法室(OT室)がゆったりと配置されています。一部屋にまとまって、リハビリ全体が一体となっているので、それぞれの療法の連携が図りやすく、情報共有がしやすいという、大きなメリットがあります」
対象疾患は、骨折、腰痛、変形性関節症、頚髄症、五十肩といった整形外科の分野から、脳卒中、糖尿病、また外科手術後の体力回復など。急性期から維持期までのリハビリテーションを行っている。
「将来的には、回復期リハビリテーション病棟をつくろうという構想もあります。さらに、脳外科の分野でもドクターを増員して、リハビリとの連携をとりながら脳疾患の患者さんが、入院から回復まで一貫した治療が受けられるようにしたいとも考えています」


◆糖尿病

全日本医師団連合でもメタボリックシンドロームについて集中的に対応しようとしているが、これは日本人の健康を守る上で非常にたいせつなことと認識している。
「特に糖尿病は、あらゆる病気の大元です。この病院では、糖尿病の認定看護師がいますので、彼女たちが中心となって、糖尿病患者さんたちに指導を行っています。月2~3回、患者向けの糖尿病教室を開催すると同時に、一般市民向けの教室も開いて糖尿病予防に対する理解を深めています。これには、看護師をはじめ保健師、薬剤師、医師なども参加しています。生活習慣病には、予防としての生活習慣の見直しがいちばんたいせつですからね」
これが、全国的に平成20年から本格的に始まるメタボリックシンドローム対策につながるものと考えている。




◆緩和ケア病棟

平成10年に現在の建物が新築されたとき、8階を緩和ケアフロアとし、緩和ケア病室、多目的ホール、デイケア室、ボランティア室を設けた。全国に52ある社会保険病院でも、緩和ケア病棟をもつのは他に2つしかない。緩和ケア病棟では、終末期の患者の肉体的苦痛、精神的苦痛を取り除き、残された時間をより有意義に過ごすための医療を行っている。また患者のみならず、家族の悩みにも配慮し、本人とその家族の終末期を安心して過ごせることを目指している。
この分野を専門的に目指す医師はまだ少ないが、今後重要な領域となることは間違いない。
「緩和ケア病棟は、病気の治療ではなくQOLを高めることが中心となりますから、特に看護師さんたちが力を発揮できる場でもあります。この病棟ではお正月に始まって、毎週のようにさまざまな催しが開かれていますが、それは20名あまりの看護師・看護助手とボランティアの手で運営されています。緩和ケア病棟につながる8階屋上のミニガーデンも、ボランティアが丹精して、ほんとうに気持ちのいい空間にしています」

 心のケアのためには、臨床心理士が入っているほか、患者からの要望があればシスターや僧侶の力も借りている。その他、薬剤師、栄養士、メディカルソーシャルワーカーなど、多くの人の手で終末期医療が実践されている。
病室も、全室に電動ベッド、ミニキッチン、ウォッシュレット付きトイレを備え、家族の付き添い・面会には規制を設けていない。快適で自由な時間と空間を過ごせるよう、ハード・ソフト両面から支えているといえよう。また、自宅とできるだけ近い環境で過ごせるよう、衣類や愛着のある身の回りの物も病室に持ち込むことができる。
緩和ケア病棟の看護師長がかつて国立がんセンター中央病院の師長だったことから連携を保っていて、がんセンターからの患者も多い。
「しかし、緩和ケアは診療費が定額制になっているため、充分な痛み止めのケアを行うには、その分が病院の持ち出しになってしまうというような現実もあって、悩ましいところです。患者さんには、痛みに悩まされずに最期のときを静かに過ごしてもらいたいと思うし、病院経営を考えるとそれが難しい。こんな悩みが出てくるようなことではいけませんね」


◆地域医療連携

「川崎社会保険病院では院内に地域連携室を設けて、地域の診療所や病院との連携を密にしています。なんでもかんでも、自分のところの病院でやろうというのは土台無理なことです。病院も診療所もお互いの特徴を活かして、得意なところで力をふるっていくのがいちばんよいのであって、患者さんの抱え込みがいちばん問題です。例えば、同じ川崎市内の太田総合病院は、特に耳鼻咽喉科が充実していることで定評があり、その分野に力を入れることで、地域の中で役割を担っています。川崎社会保険病院でも、循環器やリハビリテーション(整形外科、脳神経外科)といった分野のレベルを上げることで、特色を出しています」
また近年マンションが増えてきたことによって、産婦人科や小児科のニーズが増えてきている。しかし他地域同様、産婦人科・小児科の医師がいないのが現状である。神奈川県内の医学部全体で初期臨床研修修了後、産婦人科・小児科を選んだ人が、わずか9人しかいなかった。川崎市にも、この分野を充実させてほしいという市民からの要望が最も多いが、対策をとれない状況にある。

<病院の運営・経営>

◆人材をたいせつに

病院の特徴を伸ばすために、人材と医療機器、職員配置を適切に行っていくことを中心に考えている。
「なんといっても病院は人がたいせつです。『人は城、人は石垣、人は堀……』という武田信玄の言葉がありますが、医師だけでなく研修医、看護師、職員すべてがレベルを上げることで、病院の質を高めていくようにしていきたいと思います」
特に医師は、すべての科目で募集している。
看護師については、急性期から終末期まで幅広い看護を追及することができ、また一方では各分野の看護の専門性を追求していくこともできる。教育プログラムも、看護技術が中心の基礎教育、リーダーシップや専門看護へ進む中堅教育は、年間計画で月1回程度の研修会を行っている。さらに専門コースとして、認定看護師が認定領域(重症集中・がん性疼痛・ホスピス・糖尿病)の研修会を開催し、専門的な知識や技術を共有して看護の質の向上に向けて努力している。


◆院内での勉強会等

院内では医局会が月に2回行われているほか、内科と外科の合同勉強会などで横のつながりも常に図っている。
また病診連携の一環として、地域の診療所等から紹介された患者の経過報告会を、年4回開いている。
職員間の親睦会等は小グループで適宜行われているほか、年に2回、忘年会と暑気払いが行われている。この日には、夕方から抄読会を開き、研究報告なども行っている。また、職員旅行などでも職員同士の意思疎通を図っている。


◆学会の研修認定施設

「川崎社会保険病院は、多くの学会研修認定施設に指定されています。これは、認定医、専門医の資格を取得したいドクターには魅力です。また、初期臨床研修も後期臨床研修も受け入れています」
だが、実際には研修医も少ないのが現状である。この病院は、川崎駅から京浜急行大師線に乗って終点にあり、市の中心部から見ると末梢にある。人の心理として、中心に向かうのが普通であるので、なかなかこちらに目が向かないということであろう。


◆救急医療が成長のチャンス

川崎社会保険病院では二次救急の受け入れを行っているが、救急医療は医師としてたいへん勉強になる。南北に長い川崎市の中で、ここは南の端に当たるが、患者は武蔵小杉など北部方面から、また川をはさんですぐ近くの大田区や、羽田空港からも搬送されてくる。救急患者数は、1日昼夜合わせて平均救急車10台強。病院の特徴となっている循環器系の患者のほか、交通事故などさまざまな患者が運ばれてくる。
当直は、内科、外科、産婦人科、循環器科の4人体制で行っている。
「最近のドクターは当直を好まない傾向にありますが、さまざまな状態の救急患者に対してすばやい判断をしながら対応していくことによって、広範な知識と経験、迅速かつ適切な判断力などが身につきます。医師としての実力が飛躍的に伸びる場でもありますから、むしろ進んで当直に着くようなガッツがほしいですね。そいういうチャンスを活かして、力をつけていきたいという、積極的なドクターにぜひ来てほしいです」

<安全のための院内体制>

 近年、医療現場における安全性が特に重要になっている。
それは、院内感染の防止策から、医療訴訟に至らないためのことばづかいまで、あらゆる分野にわたっている。これは、すべてのスタッフに対する徹底的な教育でしか対処できない。
医療安全の勉強会、講習会は年3~4回。また、感染症対策等の勉強会も別途年3~4回開いて、職員全員に徹底するようにしている。

<今後の展望>

 「この病院の特徴である、循環器、リハビリを中心とした整形外科、糖尿病、緩和ケアの4本の柱は、今後も力を入れていく予定です。医師、看護師等も、この分野で特に増員を図っていきたいと思っています。
しかしそれらすべての診療の基本となるのは、内科です。現在、内科の医師が少ないのも問題なので、内科の医師も増員していきたいと考えています」

<若い人材へのメッセージ>

 永澤病院長は、若い医療関係者にこのように語りかける。
「医師、看護師ともに、たいせつなのは人類愛です。地域の人の健康を守ることに、能力を発揮しようという人たちに、ぜひ集まってほしいと思います。それは、いざというときに自分の肉親をきっちりと助けられる力と意志をもっていられるか、ということばにも換えられます。医療の実際の現場で、頭の中の理論だけではなく、実際に手を動かし、体を動かせる人と、一緒にやっていきたいですね」

<病院理念>

川崎社会保険病院の理念

明るく、親切に

<運営方針>

優しく心のこもった医療
患者様の人権を尊重し、説明と納得の上にたった、優しい心の医療の提供に努めます。

良質で信頼される医療
専門知識と確かな技術に基づく、良質で信頼される医療の提供に努めます。

地域の皆様の健康を支える医療
保健予防活動の充実を図り、地域の皆様の健康を支える医療を推進します。

<看護方針>

1.

満足していただける看護を実践します

2.

安全で安楽を考えた看護を実践します

3.

経済性を考えた看護を実践します

4.

地域医療に貢献できるよう各機関と連携を密にした看護を実践します

5.

地域住民の健康を支える看護活動を実践します

  

<病院概要>

創立

昭和23年10月

施設基準

健康保険法、生活保護法、労働災害、救急指定、総合リハビリテーション、緩和ケア

病床数

308床(一般284床、緩和ケア24床)

病院施設

病院:地下2階、地上8階 健康管理センター:2号館4階

併設施設

介護老人保健施設「サンビュー川崎」

診療科目

内科、呼吸器科、消化器科、循環器科、小児科、外科、整形外科、心臓血管外科、皮膚科、泌尿器科、こう門科、産婦人科、眼科、耳鼻いんこう科、リハビリテーション科、放射線科、麻酔科、歯科、歯科口腔外科、(腎臓科・人工透析)

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<アクセス補足>

京浜急行 大師線 小島新田駅 ●徒歩3分

京浜急行川崎駅で大師線(3番ホーム)に乗り、約10分。
終点・小島新田駅で下車し、徒歩3分。

2007.04.01 掲載 (C)LinkStaff

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