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健康都市いずみを推進する
和泉市立病院

 大阪府和泉市は大阪府南部に位置し、池上・曽根遺跡が弥生時代の集落を示しているように、古くから栄えた地域である。また近年は都市化が進み、和泉市立病院から南に4キロ程離れた泉北高速鉄道和泉中央駅を中心にして、都市再生機構による「トリヴェール和泉」の開発などで、人口増加率が大阪府内で最上位にある。さらに和泉市の新時代を担う「テクノステージ和泉」は阪和自動車道岸和田和泉インターチェンジに近く、関西国際空港への利便性を有するため注目される産業拠点となっている。
和泉市立病院は「健康都市いずみ」を推進する施設として、和泉市民のみならず、近隣の住民の健康増進をめざし、1977年の中央館新設以来、高度医療の充実に尽力し、最近では予防医学にも裾野を広げるなど、住民のニーズに合わせた改革を行ってきた。
今回は山下隆史病院事業管理者にお話を伺った。

◆ 山下隆史病院事業管理者プロフィール

1940年に大阪市で生まれ、1968年に大阪市立大学医学部を卒業する。大学紛争があり2年後の1970年に大阪市立大学医学部第一外科(現腫瘍外科)に入局する。以後、大阪市立大学医学部附属病院に勤務し、1993年に大阪市立大学医学部第一外科助教授に就任する。1998年に和泉市立病院に外科部長として着任し、医務局長を経て、2001年に院長に就任する。2005年に事業管理者職務代理を経て、2006年4月から事業管理者に就任し、現在に至る。日本外科学会指導医、日本消化器外科学会指導医、日本消化器病学会指導医。

  <病院の沿革>

 和泉市立病院は1963年に公立和泉病院分院として病床数60床で現在地に開設された。診療科は内科、外科、神経科であった。これは泉大津市と和泉市の病院組合が設立したもので、本院は泉大津市に置かれていた。そして1969年に和泉市立病院として新しく生まれ変わり、病床数も120となり、診療科に整形外科、神経科、小児科が加わる。
立地はJR阪和線和泉府中駅から徒歩12分と恵まれており、市民と病院を結ぶ動線としては市域を縦断する市道和泉中央線に面し、地域の中核病院としての役割を担っている。
1977年には中央館を竣工し、1981年に本館の改築を行い、病床数も現行の327床と大幅に増床し、診療科も臨床13科と病理科からなる。
山下管理者は「当時、泉州地域の病院は皆古い建物でしたので、中央館が建設されたときはその斬新さが話題となりました。設備、医師も充実し、患者さんが泉州地域一円から来院され、地域医療の一翼を支えてまいりました。特にリニアックを持ち、病理医がいる病院は当時非常に珍しかったようで、患者さんからの信頼を頂き、増患していきました。結果として70万から80万人の医療圏に拡大しました」と振り返る。
診療科はその後、泌尿器科、精神科が開設され、またペインクリニックも開始されるなど、充実した陣容となった。
1996年には地方公営企業法の全部適用が実施され、事業管理者が置かれることになる。山下管理者が外科部長として着任するのは1998年のことであった。
「その頃は農村地域や旧市街区域と新市街区域で患者さんの病気に対する考え方が違っていましたね。新市街に住む患者さんは都会の患者さんと同じで、病気の早期発見、早期治療に努められます。一方、農村地域や旧市街地域に住む患者さんは辛い病気であっても辛抱する方が多く、かなり悪化した段階になってから来院されるなど、それまで私が在籍していた大学病院とは違って、戸惑いもありました。」
2004年には南館が増築され、救急の体制が整う。現在は病院全体の改装工事中で2007年春には完成予定である。
1956年に5万人で出発した和泉市の人口も現在は18万人を超え、今後も人口の増加が見込まれる大阪府では数少ない自治体である。和泉市立病院は和泉市の医療、福祉政策の中心的存在として、和泉市が標榜する「健康都市いずみ」をさらに推進していくだろう。

  <病院の特徴>

◆ 内科

内科は西本正紀院長(循環器)のお膝元であり、病院の中枢部分にあたるため、市民の信頼も厚い領域であるが、診療は臓器別に行っている。循環器、呼吸器は順調に伸び、特に循環器は心筋梗塞など緊急処置を必要とすることも多く、24時間体制を組み、救急対応を行っている。また、市民の啓発のためAEDの使い方などの講習会も医師会と連携して行っている。
現在、消化器、糖尿病領域の医師が不足しているが、症例も多く、外科との連携もスムーズで、今後大きく発展させていきたい領域である。

◆ 外科

1977年の中央館新設にあたっては、悪性腫瘍に関して泉州地域のセンター的存在を目指すため、優秀な医師が集められ、今なお和泉市立病院の代表的な診療科であるといえる。当初は消化器外科が中心であったが、現在は、胸部外科、乳腺外科、内分泌外科、血管外科などそれぞれの領域で専門的な治療も行っている。
胸部外科では胸腔鏡下手術を積極的に行っており、2004年では肺がん、肺腫瘍の手術32例のうち29例、気胸では13例全てが胸腔鏡によるものである。

◆ 脳神経外科

脳神経外科の症例も多い。脳腫瘍、脳動脈瘤などの疾患が中心で、2003年から2005年までの3年間に486例もの手術数を誇る。今後は神経内科医とも連携し、診療範囲を広げていきたいと考えている。
 和泉市立病院での特筆すべき制度として国内留学がある。この制度を十分に活かしてきたのが外科系の医師たちであり、これまで4人が北海道大学、京都大学、大阪医科大学、九州の身障センターなどで学ぶ機会を得た。
「時代とともに新しい手術方法が開発されていきます。せっかく私どもに来て頂いているのですから、こちらで勉強して頂かないといけません。そのような医師のグレードアップが必要であるという観点から始まった制度です。私も留学先へコンタクトをとり、依頼書を送付するなど協力を惜しみません。今後、内科系医師にも広げたいし、他職種の職員にも積極的に勉強に行ってもらいたいと思っています。」

◆ 整形外科

2005年に新しい部長が着任し、大きく実績を伸ばしているのが整形外科である。新部長は関節外科を得意としており、人工関節置換術では手術成績の高さゆえ紹介率も高い伸びを見せているという。
「市外からも患者さんがいらっしゃいますね。2005年には150例と前年の3倍ほどの増患でした。今後、私どもの大きな柱となる分野であると期待しています。」
また脊椎外科症例も多い。脊椎外科で扱う疾患は脳神経外科とも重複する部分があり、科の垣根を超えた連携を実現している。
「脊椎外科の専門医を取得するには脊椎の上から下までの経験が必要です。腰の手術の場合は整形外科の医師が単独で行いますが、頚椎のときは脳神経外科の医師との手術となります。脳神経外科の松岡好美副院長が若手の教育に非常に熱心で、常に医師を育てていきたいと言っています。」

◆ 救急

1996年に泉州地区で小児救急の輪番制が行われるようになった。これは曜日ごとに、岸和田徳洲会病院、市立岸和田市民病院、泉大津市立病院、阪南市立病院、市立貝塚病院、市立泉佐野病院と担当を分けているものだ。
この取り組みでは大阪府では泉州地区が先駆けとなり、この方式は北摂、河内地区でも取り入れられるようになった。
「泉州地域は規模の小さい自治体が多く、教育や環境といった医療の他の分野においても協力体制をとってきた長い歴史があります。そのため公的病院同士の交流もさかんです。こういった土壌が病病連携を推進しやすい特性となっているんですね。」
和泉市立病院では2004年に南館を新設した。これは救急医療の充実を目指すもので、1階には救急外来、2階には6床を有するICUを備えている。現在は内科、外科、脳神経外科、整形外科で救急当直を行っている。
「医師不足の折り、脳神経外科と整形外科では一部の時間帯にオンコール対応になっていますが、救急重視の姿勢はこれからも保ちたいと考えています。」

◆ 女性専用病棟

公立病院では珍しい存在なのが女性専用病棟である。これは診療科を問わず、内科、整形外科を中心とした女性患者のための病棟だ。
「産婦人科の分娩数が減ってきたため、窮余の一策で開設したのですが(笑)、思わぬ好評を頂いています。病棟の中に新生児室もあるので、自分で動ける患者さんは通路から新生児の姿を見ていらっしゃることが多いですね。『赤ちゃんを見ると、命をもらったような気がする』とおっしゃられます。女性患者さんにとっての癒しの場所となっているようですね。」
一方、産婦人科医、皮膚科医による女性外来も行われ、多くの患者さんを集めている。女性医師にしか聞いてもらえない悩みやセカンドオピニオンを求めての来院も多いという。

  <運営・経営方針>

◆ 自治体病院の経営の難しさ

自治体病院の経営責任は法的には首長にあるが、実際には都道府県庁の公務員が経営を司ることが多かった。そのため病院の現状がなかなか伝わらず、結果として非効率な運営となった面もある。そこで地方公営企業法の「全部」を適用して、病院事業管理者を置くことが普及するようになった。自治体病院を「全適」にすれば、病院事業管理者の設置が許可される。任期は4年であり、首長から様々な権限を委譲される。例えば、内部組織の設置、職員の任免や給与などの身分取り扱い、予算の原案の作成、資金の一時借り入れなどである。
和泉市立病院では1996年から「全適」を実施している。これは全国でも早い取り組みであったといえるだろう。
「全国病院事業管理者等協議会の武弘道会長は鹿児島市、埼玉県、川崎市などで多くの実績を作り上げてこられ、多くの示唆を頂いています。残念ながら私には武先生ほどの権限はないですね(笑)。やはり健全化が達成できなければ、権限委譲も進まないでしょう。健全化にあたっての一番の課題は給与比率が高いことですが、ここに手をつけることはできませんし、難しいところです。」
現在、平均在院日数は13~14日である。DPCの導入によって平均在院日数を減少させる方針を持つ病院も少なくはないが、山下管理者は「平均在院日数が減少すれば空床も増えてしまう」と慎重な姿勢を見せている。


◆ 臨床研修指定病院

 和泉市立病院では1977年からいわゆる「ストレート研修」を行ってきたため、研修医の育成には実績があり、臨床研修制度が必修化された初年度からマッチングに参加している。現在はマッチングによる6人と大学からの「たすきがけ」による2人の研修医が初期研修を行っている。
和泉市立病院の理念の中には「思いやりのある医療人を育成します」と謳われているが、この思いやりを一番大切なものとした気持ちを持ち続けさせる臨床教育が特徴である。
「30年もの実績がありますので、コメディカルも研修医の存在に慣れています。そしてコメディカルの中に教育病院だという意識が浸透していることは誇らしいですね。皆、よく勉強していますし、研修医にこちらも唸るような良い説明をしていますよ。」


◆ 今後の展望

 自治体病院は地域の中核病院であると称しているわけですが、名実ともに中核病院である自治体病院ばかりではなく、民間病院の方が立派な面もあります。私どもでは名実ともに中核病院であることを目指して、地域に貢献できる医療活動を今後も行っていきたいと考えています。そのためには「この疾患は和泉市立病院だ」と思って頂けるように、特定の疾患のセンター的な存在になる必要があります。もともと外科に強いイメージを持って頂いていますし、新しい技術も積極的に導入していますので、やはり外科、脳神経外科がセンター化できうる診療科です。そして現在、非常に伸びを見せている整形外科、循環器内科を加え、これら4つの科を私どもの柱として重点的に発展させたいですね。
「自治体病院は百貨店である」という時代は去りつつあります。これからは病院間の連携を進めながら、「任せてください」と言える部分を強化して、それぞれの病院の特徴を出していくことが求められていくのではないでしょうか。

  <メッセージ>

 私どもの中興の祖と言えるのが竹林淳名誉総長です。竹林先生の院長時代に中央館を新設し、臨床研修も開始するなど、病院としての飛躍を遂げました。何日も家にお帰りにならず、先頭に立って病院の改革を進められており、常々「医師は身を挺してでも患者さんのために頑張らないといけない」と熱い思いを語っていらっしゃいました。竹林先生が引っ張ってこられた風土はいまだにこの病院の中に残っています。そしてその思いを一緒に引き継いでくださる医師に来て頂きたいと願っています。
懸命、使命、宿命という言葉があります。懸命は命を懸けるということ、使命は命を使うということ、宿命は命を宿すということです。「命を削ってでもやるという使命感、そこに命を宿すこと」こそ、医師として必要な資質ではないでしょうか。偏差値でたまたま医学部を選んだということではなく、患者さんのために医師になりたかったという人たちであってほしいと思います。

 
  <病院理念>
和泉市立病院の理念

患者さま本位の医療を実践します。

思いやりのある医療人を育成します。

質の高い医療をめざします。

  <基本方針>

市民の皆様の健康を守る信頼される病院をめざします。

1.

市民の皆様が安心できる患者さま本位の医療を実践するよう努めます。

2.

患者さまの権利を尊重した思いやりのある医療人の育成に努めます。

3.

地域の中核病院として、質の高い医療を提供できるように努めるとともに、地域医療機関との連携を図ります。

4.

市民の皆様が安心して生活できるよう、救急医療の充実に努めます。

  <病院概要>

創立

昭和47年

敷地面積

11,275.13㎡

建物面積

21,068㎡

病床数

327床

指定医療

 

診療科目

内科、外科、整形外科、小児科、放射線科、眼科、脳神経外科、
泌尿器科、皮膚科、耳鼻咽喉科、産婦人科、精神・神経科、
麻酔科(ペインクリニック)、女性外来

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  <アクセス補足>

・JR阪和線 和泉府中駅 徒歩12分
・泉北高速鉄道 和泉中央駅より南海バス1、31、32、33、35番
・泉北高速鉄道 光明池駅より南海バス20、21番
・南海本線 泉大津駅より南海バス21、直30、31、32、33番
・バス停はいずれも「和泉市立病院前」、下車すぐ

2007.02.01 掲載 (C)LinkStaff

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