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良質で安全な医療の提供を
東京都立広尾病院

 都立病院には、この広尾病院のほか大塚病院、駒込病院、豊島病院、墨東病院、府中病院、神経病院、清瀬小児病院、八王子小児病院、松沢病院、梅ケ丘病院、老人医療センターの12院がある。
 この中で広尾病院は、周囲に各国の大使館や高級マンションなどが林立する都南部の至便な場所に位置し、都民の診療に当たっている。
 公立病院として20の診療科を持つ総合病院であるほか、救急救命医療も担う。いつでも安心して受診できる病院であると同時に、高度医療にも対応し、また災害時に中心となって被災者の処置に当たる災害拠点病院としても大きな役割を担っている。
 東京都立広尾病院の設楽信行院長にお話を伺った。

◆設楽信行院長プロフィール

1944年生まれ。東京都豊島区出身。
1971年に東京大学を卒業し、東京大学附属病院脳神経外科に入局する。1年の研修の後、国立がんセンターなど都内の3か所の総合病院に勤務する。
1977年から2年間は東京大学医学部附属病院に勤務し、1980年から米国メリーランド州ベセズダにある国立衛生研究所(NIH)に留学。
1985年に東京大学医学部脳神経外科講師。
1990年に都立駒込病院脳神経外科医長、1994年同部長。
2001年に都立広尾病院に副院長として移り、2003年6月に院長に就任、現在に至る。

脳神経外科学会評議員・専門医、Journal of Neuro-oncology editorial board

  <病院の沿革>

 都立広尾病院は1895年(明治28)8月6日に開設された、非常に歴史のある病院である。当時は伝染病の予防と治療が主な課題であった。

 現在の形に建て替えられたのは1979年のことだった。その再出発にあたっては救命救急、循環器、脳神経、公害病を中心とした呼吸器、島嶼医療に重点を置いた病院として位置づけられた。

 2001年、都立病院にそれぞれ特長をもたせる政策がとられるに当たり、広尾病院は災害医療センターとして位置付けられている。


 この年に広尾病院に副院長として着任した設楽現院長は語る。
 「基幹災害医療センターは、各道府県に1か所ありますが、東京都は独立行政法人国立病院機構災害医療センターと広尾病院の2院が指定されています。救命救急・ERの実績があったので、私どもが選ばれたのです。このほか循環器疾患、脳血管障害、島嶼医療の3点を重点医療として行っています。」

  <病院の特徴>

◆救急災害医療

 広尾病院の最重点医療のひとつが救急災害医療である。「東京ER・広尾」の開設は2002年だが、以後、三次救急の受け入れは月100件を超えている。

 「病院の運営理念に『365日24時間の安心』が入っていますが、私どもでは24時間、年中いつでも高度診療を行える態勢を整えています。現在、救急搬送を断る病院が増えてきたことが問題になっていますが、私どもでは特殊な状態で対応できない例以外は、ほぼ受け入れています。東京消防庁ホットライン受入率は2004年度に93.3%、2005年度は92.7%と高い実績でした。」

 救命救急センターは、ER、センターICUと同フロアにあり救急専用レントゲン撮影室(64列CT)、内視鏡室、画像伝送室、重症初療室には麻酔器、ER手術一式、血液ガス分析装置、自動心肺蘇生装置、超音波診断装置などが備えてある。

 「災害医療に対しては、災害時に負傷者などを受け入れる拠点となるだけでなく、院内の職員、外部の医療関係者の災害研修を行うことも重要な役割となっています。特に、緊急時に派遣できる災害医療チームDMAT養成の機関にもなっています。」


◆循環器医療

 心臓疾患の患者に対して高度な内科的・外科的医療を行っており、特に不整脈治療では実績が高く評価されている。

◆脳血管疾患医療

 くも膜下出血をはじめ重症の脳卒中に対して、脳神経外科、神経内科、救命救急センター、放射線科などと協力し合って、高度な専門医療を行っている。また、脳動脈瘤に対する血管内治療も積極的に行っている。


◆島嶼医療

 特に伊豆諸島、小笠原諸島の医療充実のための島嶼医療基幹病院としての役割は大きく、屋上にヘリポートを備え、島嶼部からの患者の搬送に利用している。年間の受け入れ件数は160~170件となっており、入院患者のうち、島嶼部からの患者が約1割を占めているという。救急医療や入院を要する治療だけでなく、島嶼部の診療所や病院との医療連携を行い、画像伝送システムを活用した医療支援を行う。また自治医科大学の卒業生の初期研修を行っている。

 「当院では急性期の患者さんが圧倒的に多く、またスタッフが救急医療に携わっているため、フットワークと迅速な判断力が養われるという特長があります。これは日常診療にもよく生かされています。」


  <運営・経営方針>

◆重点配置

「人が財産であるという考えが基本であり、各科に適切なバランスの良い人材配置を行うことが重要で病院の経営もそれによって改善されていくと思います。人員の配置を適切に行うとともに、積極的に医療に取り組んでいる科にできるだけサポートをしていくようにしています。機器整備なども優先的に行っています。
 看護配置についても同様に、10:1、7:1といった数字ではなく、患者さんの重症度や仕事の量によって配置することによって、適切な医療が行えるようにしている。特にICUやCCU、その後方病床などのユニット系病床が42床あるが、そこには看護師を延べ100人近く配置しているという。


◆女性医師の働き続けやすい環境

 「現在、医学生の中で女性の占める比率は都内で約20%、地方だと40~50%です。地方医大の学生が卒業後に都心に戻る例も多いので、都内では女性医師が23%になっています。女性が出産、育児を経て、仕事を続けるためには、働きやすい環境や復帰しやすい環境を作っていくことが必要です。都立病院では出産休暇や育児休暇は充分に取得できますが、2人、3人出産するとなると、働き盛りの10年近くを休んだり、復帰したりの繰り返しになってしまいます。それに対応するために、女性医師の多い科では人員を多めに採用して、復帰しやすいような環境づくりをするようにしています。」
 今後、女性医師の戦力は見逃せない。彼女たちが生涯を通して働き続けやすい環境を整備していくには休暇や保育施設ばかりでなく、大きな意味での職場のあり方を見直す必要がある。


◆設備の充実で収益を

 現在、病床利用率は90%、平均在院日数は15日を目標としている。一方、人件費率は2005年度が64%、2006年度は62%でしたが、今後は、合理的な運営を目指し、60%を切るよう努力したい。
 「スタッフの総員を増やすことはなかなか難しい状況ですが、画像診断など設備を充実させることなどで収益を上げていくように考えています。」


◆今後の公立病院

 「都立病院は、独立行政法人化した国立病院などよりは制約が大きいので、急激な動きを行いにくいのが実情です。しかし今後も公的医療を円滑に行えるようにすること、また量的な面でも患者さんに対応していけるようにしていけるように工夫していきます。」

  <メッセージ>

◆医師へ

 「医師は免許取得後10年ぐらいの間はハードな職場にも積極的に入っていって、自分自身で未知のものを探求していくような姿勢が望まれます。若い医師の中には全てにおいてマニュアル化された印象の人が見受けられ、予測された以上の事態に遭遇すると対処できなくなって人頼みになってしまうようなこともあります。そういったひ弱な面を抑えて、予想外の状況にもぶつかっていくような精神的な強さと社会性を持った人に、この病院の医療を一緒に担ってほしいと願っています。」
 ジュニアレジデントは各6人を定員としているが、倍率は10倍近くあり、優秀な研修医が集まっている。またシニアレジデントも数多く研修を行っている。広尾病院の中には研修医を指導できる人材が多く、また若くアクティブな研修医が増えることによって病院が活性化される期待もある。
 広尾病院には自治医科大学の出身者が多く、部長クラスの医師も多い。彼らは一定期間を僻地医療に従事した後、広尾病院で専門的な医療に携わり、総合医と専門医両方の経験を身につけている。
 「ひとりでも広領域を診られる総合医は僻地医療には欠かせませんが、一生総合医というスタンスでいるのには、きついものがあります。総合医であったとしても、ある部分で専門性を持つことも必要だと思います。それには私どものような病院での経験が有効なのではないかと考えています。」


◆広尾病院の今後の展望

 1.医療の質を向上させること
 2.安全対策をしっかりしていくこと
 3.治療がここで完結できるようにすること
 「この3点に基づいて、選ばれるメリットのある病院にしていきたいと思います。」
 医療レベル向上のためには、各科がその領域で新しい治療法や効果のある治療法を積極的に導入していくことであるとしている。そのために必要な材料や機器などは積極的に入れていくという。
 「広尾病院は薬物誤注入事件で信頼を失っただけに、安全対策のモデル病院になるぐらいでなければならないと考えています。それぞれの立場の担当者を立てて、あらゆる安全対策を講じています。」

  <病院理念>
東京都立広尾病院の理念
 1.患者中心の医療の実践
 2.「365日24時間の安心」の医療体制の確立
 3.チーム医療による総合力の発揮
 4.医療連携の推進
 5.安定した経営基盤の確立
  <運営方針>
 当院は、「一人でも多くの患者さんに、安全・安心・良質の医療を提供する」ことを運営理念に掲げ、都立病院改革マスタープラン及び都立病院改革実行プログラムの方針に沿って着実に病院改革を進めている。
  <ビジョン>
 日々、安全・安心・良質の急性期医療に尽力し、災害時には万全の医療を提供できることを目指して、都民から信頼される病院づくりを進める。
  <行動指針>
 1.安全・安心・良質の医療を提供するため、チーム医療の確立、医療安全対策の徹底、患者サービスの向上などに向けた職員の意識改革・院内体制の再構築を進める。
 2.災害用備蓄資器材の整備、災害対策教育・訓練の更なる充実等、災害医療センターの機能・運営体制を整備する。
 3.当院の特色、専門性を明確にし、地域との連携を推進する。
 4.専門性に応じた教育・研修、職種横断的な教育・研修を実施し、質の高い医療を効率的に提供するための人材育成を行っていく。
 5.良質の医療を底支えする、経営基盤を確立していく。
  <病院概要>

創立

明治28年8月6日

敷地面積

22,171.62㎡

建物面積

40,089.98㎡

病床数

医療法許可病床482(一般452、精神30) 平成19年度予算定床476床

診療科目

血液内分泌代謝内科、消化器内科、神経内科、呼吸器科、循環器科、神経科、小児科、外科、脳神経外科、心臓血管外科、整形外科・リハビリテーション科、形成外科、皮膚科、泌尿器科、産婦人科、眼科、耳鼻咽喉科、診療放射線科、麻酔科、歯科・歯科口腔外科(全20診療科)

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  <アクセス補足>

東京メトロ日比谷線 広尾駅より ●徒歩7分

2007.11.01 掲載 (C)LinkStaff

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