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ITによる新しい医療スタイル
恵寿総合病院


神野正博 理事長

 渚のいで湯として全国的にも有名な和倉温泉や風光明美な能登島を有する石川県七尾市は能登の玄関口であり、能登地域の政治や経済、文化の中心となっている街である。
恵寿総合病院はJR七尾駅から車で5分の七尾市富岡町に位置する。1998年には日本医療機能評価機構から、北陸で第一号となる認定病院の評価を受け、さらに2003年には新評価基準による更新を受けた。また今年2月にはリハビリテーション付加機能の認定も受けるなど、地域医療の中核を担う総合病院である。
今回は院長も兼任されている神野正博理事長にお話を伺った。

 

 神野正博理事長は1956年に生まれ、1980年に日本医科大学を卒業後、金沢大学第二外科に入局した。専攻は消化器外科である。研修医として、富山県立中央病院の外科に勤務した後、金沢大学第二外科助手などを経て、1992年に恵寿総合病院へ外科部長として着任した。その後、1993年に院長、1995年に特別医療法人菫仙会の理事長に就任し、現在に至る。



  <病院の沿革>

 恵寿総合病院の歴史は戦前にさかのぼる。1934年、神野正博氏の祖父に当たる神野正隣(まさちか)氏が当地に神野病院を設立した。神野正隣氏は日本製鋼室蘭病院(現:日鋼記念病院)で外科部長を務めていた。当時、能登には盲腸の手術ができる外科医さえおらず、地域から迎えられる形での開業となった。現在のように陸の交通が便利ではなく、奥能登からの患者さんは船で来院したという。
戦後になり、神野正博氏の実父である神野正一氏が院長を引き継いだ。病院名も現在の恵寿総合病院に改め、診療科目の拡大を行った。それは拡大路線を敷いたわけではなく、すべて地域のニーズによるもので「金沢まで行かなくても治療できる」とのコンセプトからだったという。


病院外観


病院全景

 現在の標榜科目は内科、循環器内科、神経内科、外科、消化器科、整形外科、脳神経外科、胸部心臓血管外科、呼吸器外科、形成外科、美容外科、小児科、産婦人科、眼科、耳鼻咽喉科、泌尿器科、麻酔科、皮膚科、リハビリテーション科、放射線科。能登地域では心臓血管外科を唯一標榜し、専門医を確保している病院である。
1993年に三代目となる神野正博氏が院長に就任し、2000年には延べ床面積5,410平方メートルとなる6階建ての新館を増設した。しかし454床の病床数が変わったわけではなく、1床あたりの面積を広げることにより、ゆとりある療養環境の充実を図ったものだ。1階の救急センター、5階の健康管理センターなどに加え、6階には露天展望浴場を備えた。さらに道路に面した場所にはコンビニエンスストアのローソンを誘致している。今でこそ病院内のコンビニエンスストアはよく見られる存在であるが、当時は日本初の試みとして注目を集めた。

 

 また同年には鳳珠郡穴水町に恵寿鳩ヶ丘病院を設立した。これは介護保険制度の発足と機を一にするもので、療養病床143床を有し、奥能登地域の医療、介護の一翼を担う。
現在は特別医療法人の認定を受けている恵寿総合病院であるが、来年には認定医療法人の認定をいち早く目指す。今後も「ヒューマン・サービス」の原点を保ちながら、地域の中核病院としての役割をますます大きいものにしていくだろう。



  <病院の特徴>

◆ITを利用した画期的システム

神野理事長が院長に就任したころ、恵寿総合病院は経営面で若干の苦しさを抱えていたという。そこで目指したのがITによる改革である。まず、医薬品などの購入先と連携し、院内での在庫管理を行うなど物流のシステムを徹底的に見直した結果、経営に余裕が出てきた。
次に「物」と「人(患者さん)」の流れを情報として組み込んだ形でオーダーシステムを構築した。これによって安全管理が徹底し、結果としてミスが減少した。

病院外観

 

 介護保険制度が始まったものの、依然として続く縦割り行政に神野理事長は不自由さを感じていた。そこでさまざまな制度をシームレスにつなぎたいという思いをITによるシステムで実現させていった。
神野理事長は話す。
「患者さんにとっては病院や施設、監督官庁がどこであっても関係ありません。とにかく健康になりたい、病気を治したいという思いがあるわけですから、私たちはその気持ちに応えていきたいと思ったのです」
そこで構築されたのがKEIJU-INFORMATION-SPHERICAL-SYSTEM(KISS)というコンピュータシステムである。法人と関連の社会福祉法人の全施設を専用線でオンライン化した。患者さんの院内での動き、スタッフなどの流れの情報をもとに、患者さんを第一に考え、作られたシステムだ。このKISSの導入によって、待ち時間が短縮され、効率的な診療予約、患者さんへのスピーディーな情報提供が可能となった。また一部疾患に適用されるクリニカルパスによる治療では、患者さんが簡単に治療スケジュールを確認することができる。


けいじゅサービスセンター
(コールセンター)

 一方、コールセンターの存在も特筆すべきであろう。これはKISSや介護業務データベース、物販データベースなどにより電子化された患者さんの情報を電話で伝えられるほか、患者さんからの電話などがイントラネットによって診療科に伝えられるシステムである。
「開業医の先生方からのファクシミリなど電子化が難しいものも記録して残しています。また、検査の予約をコールセンターから患者さんに直接電話して確認するなど、すべてをデジタル化するのではなく、こうしたアナログの部分も大事にしています」

◆脳神経センター

初期治療からリハビリまで一貫した診療を可能にするため、脳外科と神経内科、リハビリテーション科でストロークユニットを構成している。血管内手術ではトップレベルの技術力を持つ。脳卒中、くも膜下出血などの手術件数が多い。また、回復期リハビリテーション病棟は石川県有数の施設であり、常勤の専門医を擁している。ここでは「回診」ではなく「ウォーキングカンファレンス」という独自の形式を採っている。整形外科、脳外科、神経内科、リハビリテーション科の医師、看護師、介護士、理学療法士、作業療法士、言語療法士、管理栄養士、薬剤師、ソーシャルワーカーが高度に連携し、患者さん本人にも参加してもらう体制が大きな特徴である。
◆消化器病センター

最新の電子内視鏡システムを導入している。医療スタッフも、10名の医師が内視鏡による治療を行うという充実した陣容となっている。このほど内科と外科の医師を統合し、消化器病センターとした。
「病棟のみならず診察室も共有し、カンファレンスや回診も合同で行っています。その場で検討会になりますから、内科、外科双方の医師のレベルアップにもつながると期待しています」
このほど早期胃がんに対する新しい内視鏡治療として「内視鏡的粘膜下層はく離術(ESD)」を開始した。従来の内視鏡的粘膜切除術(EMR)では2㎝を超えるがんの場合、がんを数回に分けて切り取る「分割切除」となるため、病変を一括して切除することができなかった。また、切除した組織の病理学的評価が難しく、取り残しが出る危険性も指摘されていた。しかし近年、ITナイフ、フレックスナイフ、フックナイフなどの内視鏡治療処置具の進歩によりESDが可能になり、これまで切除困難であった病変の確実な治療が可能となった。こうした能登地域の先端医療ニーズにも応えている。

◆健康管理センター

2000年に新館が設立されたのを機に健康管理センターが発足した。人間ドック、脳ドック、禁煙外来、減量外来、歯周病検診、健康教室など健康に関する多様な活動を行っている。健康管理専門医が常勤し、診療所、老人保健施設、ケアハウスなどと連携を取るなど、地域の健康増進の拠点ともいえる存在である。


  <運営・経営方針>

◆お客様主義

先述のコンビニエンスストア開設も、患者さんからの「病院の売店は閉店時間が早いので、もっと遅くまで営業してほしい」との要望から実現したものである。またクレジットカードでの支払いを可能にしたのも恵寿総合病院が初めてであったという。
「すぐそばに和倉温泉がありますが、観光客の方が急に病気になってこちらに運ばれてきても現金の持ち合わせがないので支払いのときに困ると伺って、カード会社に連絡してみたら簡単に実現しましたよ(笑)」
大浴場、露天風呂の設置も患者さんが「入院しても毎日入浴したい」との声から生まれたものだ。新館最上階に位置し、七尾湾が一望できる癒しの場となっている。


露天展望浴場(上)
コンビニエンスストアのローソン(下)

 

 さらに患者さん専用の相談窓口である「アドボカシー室」を設け、患者さんからの「ご意見箱」の設置や定期的なアンケートを行い、スタッフと患者さんとの意思の疎通を図っている。
「病院は誰のためにあるのか、私たちはこのことをいつも忘れません。常に、患者さんにとって、その時々で何が一番重要なのかを皆で考えていくことを心がけています」


サーバールーム

◆地域連携

無床診療所を運営する連携登録医に対して、ASP(Application Service Provider)という仕組みを使って電子カルテシステムを提供している。電子カルテ端末は診療所に、専用サーバーは恵寿総合病院に設置し、病院内の保守スタッフが管理を行っている。また、VPN(Virtual Private Network)という仕組みによるセキュリティーを確保した上で、公衆インターネット回線から恵寿総合病院の電子カルテを閲覧できるシステムも導入している。恵寿総合病院の開放病床を利用する連携登録医にとっては、病院の電子カルテに抵抗なくアクセスできるメリットを持つ。

 

 さらに、昨年9月から市立輪島病院が、金沢大学医学部放射線科、恵寿総合病院をつなげて診断と患者搬送を目的とした画像転送システムを構築した。これまで市立輪島病院からは主に脳神経外科や循環器科に数多くの患者搬送実績があり、この搬送システムを補完するものとして開始された。画像診断は、24時間体制で専門医による読影が可能な金沢大学医学部放射線科で行い、患者搬送は恵寿総合病院が請け負う。恵寿総合病院では、救急車が到着する前に画像情報を閲覧することができるので、緊急の手術やカテーテル検査の準備が可能である。

◆VHJ機構加盟病院

恵寿総合病院はVHJ機構の発足当時からのメンバーである。これは「民間病院が主体となって人々のQOLの向上を目指そう」という目的で設立されたNPO法人で、医療の質を保つための様々な取り組みを行っている。DPCの研究会や指導医セミナーなどに加えて、ペースメーカー、人工関節などの医療機器の共同購入を行う。
「職員同士の交流が活発で、鍛錬できる環境ですから、若い医師には大変勉強になる場ではないでしょうか」
VHJ機構についての詳細はホームページをご覧ください。
http://www.vhj.jp/index.html
今後の展望

医療は「安心産業」です。やはり患者さんに「安心」していただかねばなりませんから、その意味で「急性期疾患の恵寿総合病院」はこれからも、「けいじゅヘルスケアシステム」の中心となると思います。
七尾市は過疎が進み、高齢化率も25%を超えています。このような状況下で街の回遊性を高めるためには商店街の活性化なども重要なテーマとなっています。こうした街全体が抱えるテーマの中から、私どもが果たすべき社会的責任についても積極的に考えていきたいですね。現在、その一環として小規模多機能施設や地域包括センターの設立を検討しています。 また、公的病院、準公的病院が徐々に民間活用の道を探っています。例えば、私どもの物流管理のシステムなどは他院でも使えるモデルとなり得ます。そのような
民間活用の請負先としての役割を果たしたいです。


  <病院の理念>

 基本理念

人命尊重、心身の健康第一の立場に立ち、職員が一体となって地域住民の健康維持(予防、診療、リハビリテーション、介護)に努めると共に、地域の中核医療施設として、社会、経済、文化の発展向上に貢献します。

一、 信頼の心
私達は、患者様・利用者様の権利を尊重し、
信頼される質の高い医療により、地域に貢献します。
一、 思いやりの心
私達は、思いやりのある病院・施設づくりに努めます。
一、 健全な経営
私達は、収支構造の安定した病院・施設を維持します。
一、 職員の幸せ
私達は、菫仙会の発展を通じ、職員の幸せを築きます


神野正博 理事長

 

<アクセス補足>

JR七尾線 七尾駅より車で約5分。七尾バス 和倉温泉行き桜町バス停下車すぐ。
病院送迎バスあり。
能登空港より車で約40分。ふるさとタクシー(相乗りタクシー)で約50分。

恵寿総合病院HPは下記をクリック↓

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2005.07.01 掲載 (C)LinkStaff

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