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患者さんの「こころのふるさと」に・・・
医療法人杏和会 阪南病院


院長 黒田健治 氏

 阪南病院は大阪府第二の都市である堺市に位置し、JR阪和線津久野駅、泉北高速鉄道深井駅などからそれぞれバスで10分ほどであるが、高台のためか都市部とは思えない清冽な空気が漲り療養環境としては申し分ない立地となっている。取材に訪れたのは春浅いというよりは厳冬の2月であるが、院内には庭園花壇が設けられ、丹精込められた花々が咲き誇っていた。病院の持つべき環境を「光と風と緑」と標榜しながら、ハードの整備だけでなく患者さんの「心の癒し」のために行っている院内緑化の成果であろう。
「心の世紀」になると言われた21世紀ではあるが、人々の不安の高まりやストレスの増加から、精神科医療の重要性はより強く認識されている。阪南病院は精神科許可病床690床を擁す一方、退院後にはデイケア、グループホーム、訪問看護ステーション、地域生活支援センターなどで患者さんの生活をトータルに援助している。また、1997年には関西初の「メンタルケア病棟」を開設し、スリープラボ(終夜睡眠脳波室)を備えるなど、臨床、研究の両面から、地域になくてはならない精神科中核病院として確かな歩みを続けている。
2004年に院長に就任したばかりの黒田健治先生にお話を伺った。



  <病院の沿革>

 1951年10月、阪南病院は144床で開院した。開設者で現会長の後藤田義男先生は地域との連携を密にした医療活動を進めていく。1970年に作業療法センター、1978年にソーシャルワーカーの配置に続いて、1981年には関西で2番目にデイケアセンターを完成させた。また1998年には精神科療養病棟1、2000年には精神科急性期治療病棟を開設する。

 黒田院長は語る。
「開院した当初は昔ながらの精神病院だったのではないでしょうか。小高い丘の上なので、アクセスも便利というわけではなく周囲の開発も遅れていたと思います。ただそれが現在の眺望の良さに繋がっているわけですが」


病院正面入口

 その後、精神保健福祉法も改正され、精神疾患の患者を取り巻く状況は刻々と変化していく。また24時間社会の到来から、人の睡眠にも変化が起こるようになり、睡眠障害の治療を必要とする患者さんが増えてきた。
1989年に「スリープラボ」を開設したのに続いて、1991年には他院に先駆けて「睡眠外来」をオープンさせた。その後、1997年にはメンタルケア病棟を開設した。ここでは日常生活から離れ、自立的回復を目的とした快適な治療環境を提供し、患者さんの心に寄り添った温かみのある治療を行っている。2004年6月、大阪医科大学助教授であった黒田健治先生が院長として就任する。もともと睡眠外来の担当医師として非常勤で阪南病院に勤務していた縁があったとはいえ、大阪医科大学神経精神医学教室の助教授として活動的な動きをされていた黒田先生を院長として招聘するに当たっては、現理事長後藤田公一先生、前院長で現名誉院長の宮崎眞一良先生など周辺の粘り強い働きかけが必要であった。


E棟精神科急性期治療病棟をはじめとした
全160床の開放病棟

 黒田新院長は、小野寺喜義事務長の言を借りるなら「学究の徒でありながら戦略家で強いリーダーシップの持ち主」であり、「医局態勢の強化」「病院の専門性追及」「救急体制の整備」など、次々と院内改革に着手した。
この結果、就任7ヶ月で15年度比入院患者数40%アップの110名~120名へ、平均在院日数は244.9日から171.9日と大幅に短縮し、さらに紹介率は59.5%、逆紹介率も57.7%と同比7%~10%ほどの上昇をみた。そして現在、医療機能評価受審も済ませた。

「お蔭様で熱心なスタッフに支えられていますが、ただ何かをしようというときに組織の末端まで浸透させるように伝えていくことは難しい。そこで病院全体で改革に取り組む姿勢を持ってもらうためにも第三者評価を受けることが大切であると考えました。この評価を受けることで医療やサービスの質の向上を願っています。例えば臨床研修制度の義務化が始まりましたが、精神科病院の多くは<協力型>の施設にとどまっている。優れた人材の確保のためにも<管理型>の病院に近い存在でなくてはと思っています」

 現在、阪南病院は堺市の大阪労災病院と近畿大学医学部附属病院の研修プログラムで協力型の施設となり、本年6月にはスーパーローテートの研修医を受け入れる運びである。このほど図書館を新築し、多数の文献を揃え、今後は医療情報検索支援体制を整えていく予定である。さらに、この図書館を拡張し、将来的には地域住民に役立つ体制にしたいという構想もある。



  <病院の特徴>

◆ 病棟の編成
多様化している精神疾患に対応すべく、病棟は「急性期」や「リハビリ/慢性期」「合併症/老人」など機能別・専門別の5グループ12病棟で編成されている。高層建築は人間が本当の意味で安らぐことが難しいとのことから建物は全て3階建て以下となっている。これも敷地面積約1万坪という広さから可能なことであろう。前述の院内緑化に関しては「8,500株の花」「3メートル以上の木だけで2,000本、合計1万本の樹木」を植樹し進めてきた。常勤で2人のガーデニング担当者がいることも特筆すべきであろう。


院内風景


終夜睡眠ポリグラフ検査(PSG)

◆ 睡眠外来
終夜睡眠ポリグラフ検査(PSG)を行うことが可能である。これは睡眠が生体にどのような影響を与えているかを観察するため、約20個の小電極を装着し、脳波・眼球運動図・筋電図・呼吸運動・心電図・酸素飽和度を終夜記録するもので、1日1人しか受け入れることができないが、現在月に14~15件という実績を持つ。この検査を行うために設置している設備が外音を遮断した「スリープラボ」である。宮崎前院長(現名誉院長)が「病院の明確な売りを持たなければ、大学医局や派遣されてくる医師へアピールできない」と考え、当時新築されたD棟の地下の一画で研究を行うことになった。

 当時、一般病院が大学病院に伍する研究をするためにはP300などの大脳誘発電位を用いた電気生理学的なアプローチから始めざるをえなかったという。しかし大学病院に匹敵するスタッフを揃え、睡眠障害の診察から治療までを集中的に行った結果、今年6月には睡眠学会の認定施設に選定されることとなった。診療対象は睡眠呼吸障害、不眠症、過眠症、概日リズム睡眠障害、むずむず症候群、周期性四肢運動障害など多岐に亘っている。

◆ 専門外来
 患者さんの多様なニーズに応えるために、上記の睡眠外来以外に6つ、計7つの専門外来を開設。「女性外来」「ストレスケア外来」「物忘れ外来」「アディクション外来」「往診相談外来」「口腔心身症外来」である。

◆ メンタルケア病棟
 この病棟では木々の緑を見渡せる大きな窓が特徴となっている。また病室や廊下に天窓を設け、自然の光や風を呼び込める設計である。病室には障子風の窓をあしらうなど「癒し」の空間を演出する。開放型50床から成り、主な疾患はストレス関連疾患やうつ状態といったうつ病圏が中心であるが、治療的対応だけでなく患者さん自らの気づきと自然治癒力を高めることも目的となっている。
黒田院長は「こころの安らぐ場、いわばシェルターですね」と話している。


  <運営・経営方針>

◆ 今後の方針と展望
専門外来の充実ですね。統合失調症も思春期に発症しますので思春期障害に力を入れていきたいと考えています。子どもの患者さんを担当できる小児精神科の認定医に来てもらって近々始める予定です。子どもに関することを全て行えるようにセンター化することも視野に入れています。

 またリハビリに関しても懸案ですね。ベッドが空いていればできるだけ急性期病棟に入院して頂きたいとは思っていますが、だからと言って次々に入院されますと、病棟は早々にパンクしてしまいます。しかしながら、社会的要請である急性期対応を止めるわけにはいかないので、入院患者受け入れのキャパシティを確保するためにもリハビリに力を入れていきたいのです。訪問リハビリを充実させて、看護師やケースワーカー、ヘルパーが常時活動する24時間体制でのフォローが理想です。現在、ヘルパーステーションの認可を申請中です。さらに高齢者の筋力アップのための身体リハビリ(パワーリハ)をリハビリステーションの中に作ることも検討中です。

◆ 経営者として
これまで精神科を標榜する医療機関では、統合失調症の患者さんの在院日数などアウトカムの部分で遅れていました。「治癒しなかった」という数の公表はリスクであるとの考え方が強かったのです。しかし私どもでは今後、ホームページなどを通じてそれらのことをオープンにしていきたいと思っています。
また、何かがうまくいっていると余裕ができて楽しく仕事ができるものです。目標を達成してもスタッフが憔悴しきっているのでは意味がありませんから、働いているスタッフがいつも明るくにこにことしている病院にしたいですね。



  <病院の理念>

◆ 基本理念
「私たちの誓い」
・愛の心で医療に奉仕を
・和の心で総力一致を
・励む心で創意工夫を

◆ 杏和会阪南病院 基本方針
1.人権を大切にし、患者さんやご家族の「こころのふるさと」になれるよう、患者さんの立場に立ったやさしい医療をおこないます。
2.最新の知識と医療技術を身につけ、予防から急性期治療・社会復帰・在宅支援まで、継続的な質の高い医療を提供します。
3.「光と風と緑」にあふれた、安全で快適な療養環境を提供します。
4.地域の中核病院として、行政機関や病医院・地域の方々と協力し、保健・医療・福祉に貢献します。
5.信頼される医療サービスを提供するために、経営の健全化につとめ、すぐれた医療従事者を育てます

◆ アクセス
送迎バス
JR阪和線津久野駅、泉北高速鉄道深井駅~泉ヶ丘駅より
南海バス
JR阪和線津久野駅より、南海高野線・大阪市営地下鉄御堂筋線なかもず駅より
南海高野線堺東駅より、泉北高速鉄道泉ヶ丘駅より 小阪バス停下車、徒歩5分

医療法人杏和会 阪南病院HPは下記をクリック↓

  

2007.03.01 掲載 (C)LinkStaff

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