HOSPITAL INFO

バックナンバーはコチラ

59


存続を願う13万人の署名
星ヶ丘厚生年金病院

 星ヶ丘厚生年金病院は大阪府枚方市に位置し、寝屋川市、交野市を加えた80万人を擁する北河内医療圏の中核病院として、20診療科、604床の病床を有する。
1953年の開院以来「結核治療病院」からの脱却を図り、西日本随一のリハビリテーション病院として広く認知されてきた同病院も構造改革の流れの中で売却・譲渡が論議される対象となった。3年前「国費を投入しない」方針が決められ、2003年からの3ヶ年計画では経営体質の改善を行い、経営自立を達成している。この間、枚方市のみならず、広い地域から星ヶ丘厚生年金病院の存続を願う署名が寄せられ、その数は2005年9月末現在で13万人を超えているという。
2005年6月には「年金・健康保険福祉施設整理機構」の法案が成立し、厚生年金病院(全国で10病院)については公益的な医療提供を行う病院として存続することが可能となった付帯決議が採択された。
今回は吉矢生人院長にお話しを伺った。
吉矢生人院長は大阪大学の外科、麻酔科で学び、大阪大学医学部附属病院にICUが開設された当時、チーフとして就任する。その後、麻酔科を経て1997年に総合診療部の初代教授となる。2002年に星ヶ丘厚生年金病院の第6代院長として着任、現在に至る。


吉矢 生人 院長


  <病院の沿革>

 1953年当時、結核は「国民病」と呼ばれ、死亡率1位の疾患であった。結核対策は国策であり、全国に療養所が開設されるようになった。星ヶ丘厚生年金病院の前身である健康保険星ヶ丘病院が250床で開設されたのも、そういった時代の要請であった。今でこそ、枚方市は大阪のベッドタウンとして住宅街が広がる街であるが、当時はまだまだ田園風景が広がるのどかな場所だったという。
結核治療に関しては、いわゆる療養所的な治療が広がっている中で健康保険星ヶ丘病院では胸部外科に積極的に取り組み、高い成果を上げた。結核患者数も全国的に減少していき、健康保険星ヶ丘病院でも「結核療養施設」から「リハビリテーションを中心とした総合病院」へと転換を試みた。


病院外観

 吉矢院長は語る。
「初代の鏡山松樹院長が、これからはリハビリテーション医療であると、その重要性を強く説かれたそうです。昭和30年から40年代にかけての頃ですから先見の明をお持ちだったと思いますね。」
この転換方針に当時の厚生省も賛同し、1968年には厚生年金に移管し、名称も現在名へと変更する。都市化が進んだ1969年には国道1号線枚方バイパスが開通し、交通の便も改善された。「リハビリテーション総合病院」に生まれ変わるべく多くの診療科を新設し、1972年には新病院が落成する。その後、脊髄損傷、脳卒中を中心とした疾患を扱い、新病棟、手術棟を新設して病院施設の拡充を行った。リハビリに関しては理学療法、作業療法に加えて、当時まだ珍しかった言語療法も取り入れるなど先駆的な内容であったという。
また、1995年には星ヶ丘厚生年金保健看護専門学校を開校、臨床研修病院の指定を受けるなど教育にも力を注いだ。
2001年には結核病床40床を廃止し、病床数は現在の604床となった。さらに、この年、病院機能評価を受け、現在は2回目の評価を受審中である。これからも「公的病院」であった歴史を継承しながら、地域の信頼を集める病院として発展していくだろう。




  <病院の特徴>

◆ 脳卒中内科

 星ヶ丘厚生年金病院における特筆すべき治療は脳卒中治療であろう。診療科の標榜としては珍しい「脳卒中内科」を掲げたのは1973年のことである。開設当時はリハビリテーションを中心とした慢性期治療を主に行ってきたが、現在では脳梗塞患者の70%が発症7日以内の急性期の脳梗塞患者であることから急性期治療にも力を傾注している。
吉矢院長も「1998年から救急医療を始めたのも、脳卒中を急性期から回復期リハビリを経て、在宅へという流れで治療したいという地域の皆さんからの大きなニーズでした。」と話すように、現在、年間入院患者は約400人、うち急性期脳梗塞患者は200人を超え、虚血性脳血管障害が主な疾患である。救急では、めまい症や脳卒中合併症、髄膜炎などの脳卒中関連の疾患が多い。
脳神経外科、神経放射線科と共同で診療してきたが、最近では糖尿病内科の医師も診療に参加するなど充実したチーム医療となっている。
検査では頚部血管超音波検査法の評価が高く、年間1300件以上実施している。
また、リハビリについては脳梗塞以外にも脳出血、くも膜下出血の患者さんも多い。


病院体育館によるリハビリ風景

◆ 整形外科

吉矢院長は「脊髄損傷病棟54床を有して、急性期から慢性期までの脊髄損傷患者の治療やリハビリを行っている大阪では唯一の病院です。」と話す。脊髄損傷や末梢神経損傷などの一般病院では難しいとされている神経麻痺疾患のほか、関節リウマチ、関節症性疾患、脊椎疾患や骨折、外傷関連の疾患が多く、年間の手術件数も1200例を超える。
変形性関節症進行例や関節リウマチに対する人工関節置換術は2003年度に175例を上げ、「手術数でわかる いい病院全国ランキング2003」でも全国で19位にランクした。なお2004年では177例、2005年にも185例と件数の上昇をみている。
また脊椎・脊髄損傷、頚椎症、腰椎間板ヘルニア、腰部脊柱管狭窄症などには外科的治療を行い、スポーツ障害の肩や膝の関節には関節鏡下手術を行っている。
さらに回復期リハビリテーション病棟は54床を持ち、亜急性期から回復期までの一貫したリハビリが特徴である。

◆ 小児科

大きな特色は「プレイルーム」と「院内学級」の存在であろう。プレイルームは、ひな祭りやクリスマス会などの年中行事をスタッフや家族とともに過ごせるような施設である。一方、院内学級は1972年に設置され、古い歴史を持っている。最近では毎年小学校は20人弱、中学校も10数人が通学し、入院中の学校教育をフォローしている。
以前は慢性疾患が多く、1978年頃は平均在院日数も150日近かったが、現在は感染症などの急性疾患が中心になったこともあり、10日弱と大幅に短縮している。
また「病児保育室」も完備している。子どもを持つ医師や看護師が増加してきたこと、医師の確保のためには女性医師の採用も積極的に行うべきだとの方針で設置されたが、充実した小児科機能があればこその存在であろう。


「病児保育室」

◆ がん拠点病院

2002年に厚生労働省からがん拠点病院の指定を受けた。大阪では1962年から大阪府立成人病センターが中心となって、大阪府がん登録を開始したが、星ヶ丘厚生年金病院でもそのシステムに参加してきた。
吉矢院長は語る。
「治療成績も公開していますが、恥ずかしくない成績だと思っています。また地域住民の方への啓蒙活動も行い、私どもの医師による市民講座も好評を頂いています。現在は認定看護師が所属する緩和ケアチームを設置していますが、専任の医師や看護師がまだおりません。今後は緩和ケア病棟の建設も視野に入れています。」





  <運営・経営方針>

◆ 地域との連携

 星ヶ丘厚生年金病院の平均在院日数は現在14日から15日と高い水準にある。これは1998年に救急指定病院となり、病診連携が一層推進されたことが要因の一つであろう。地域医療相談室も1999年に設置され、開業医からの紹介予約も当初の年間約100件から現在では5000件を超すなど順調に推移している。また、ここで発行する「地域医療連絡室だより」を800軒ほどの開業医に送付している。
吉矢院長は「平均在院日数の短縮については2004年夏にDPCを導入したことも大きいですが、スタッフそれぞれの意識の高まりがもたらした数字だと思っています。またがんの化学療法を外来で行うようになったことなども要因として挙げられますね。私どもに勤務されていた先生方が近くで開業されることも多いですし、逆紹介を増やすように心掛けました。現在は紹介率が60%弱で、逆紹介率は40%となっています。」と話す。
こうした地元の医師会を中心とした地域との連携が先述の13万人の署名に結実していったのであろう。

◆ 臨床研修指定病院

星ヶ丘厚生年金病院では必修化前から独自の臨床研修を行ってきた。また吉矢院長も大阪大学総合診療部で臨床研修を担当し、クラークシップや臨床実習に手腕を発揮してきた。さらに経営母体であった全国社会保険協会連合会では指導医の研修も担当している。
「指導医研修の特徴としてはコーチングの手法を取り入れたことでしょうか。教育理論を詰め込むのではなく、勤務先に帰ったときに実際に行えるような研修であることを目指しています。研修医と指導医が一緒に到達度を設定して、その目標に取り組んでもらいたいですね。」
星ヶ丘厚生年金病院は現在8大学と連携を保っている。脳卒中内科と内科、消化器内科と消化器外科、呼吸器内科と呼吸器外科などでは異なる大学の医局から医師が派遣されているが、極めて良好な関係を築いているという。吉矢院長は「大学が違っても、星ヶ丘では一緒なんだという思いがあるようですね。そういった雰囲気の良さは臨床研修医にとってもいいことです。これからも優秀な研修医に来て頂きたいですね。そのためには私どもも良くならないといけません。」と話す。

◆ 今後の展望

 まずは紹介率を60%以上に高めて、地域医療支援病院の指定を受けたいですね。これが全てに関わってくると思います。合わせて救急の受け入れを増やさなくてはいけません。救急専従医を増員して、体制を充実させたいですね。がん拠点病院という立場では放射線療法、化学療法を整備しながら、緩和ケア病棟を立ち上げることが肝要でしょう。また患者さんの満足度を調査するベンチマーキングでは、外来に比べ入院の結果が思わしくありませんでした。全職員が毎年30人ずつCS(顧客満足)研修に参加していますが、さらにいい結果になるように高い意識を浸透させたいです。



  <医療理念>

・ 地域の皆様が安心できる公的病院として、高度医療を提供する。

《基本方針》
・ 地域のニーズに応じた質の高い医療を提供する。
・ 医療安全を最優先課題とする。
・ 患者様の意思を尊重した医療を行う。
・ 患者様の心とからだの満足をめざす。
・ 地域の皆様の健康増進に寄与する。




  <アクセス補足>

京阪電鉄本線 
枚方市駅より京阪バス星ヶ丘病院行き 終点下車すぐ。

または枚方市内循環100円バスで
「星ヶ丘病院」下車すぐ。

京阪電鉄交野線 
星ヶ丘駅 下車 徒歩15分。

拡大


  

2005.11.01 掲載 (C)LinkStaff

バックナンバーはコチラ