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地域医療連携を使命に掲げて
千葉県立東金病院


院長 平井 愛山 氏

 千葉県九十九里浜沿い1市8町村からなる人口約20万人余りの山武医療圏の地域医療向上のために建てられた千葉県立東金病院。千葉県初の県立病院として開設された同院に平成10年4月、平井愛山氏が院長に就任した。今回は地域医療連携に奔走する平井院長にお話を伺った。


平成16年12月出版された平井院長の著書
「失敗しない地域医療連携」(医学芸術社)



  <病院の沿革>

 昭和28年8月20日、木造平屋建てで開院。昭和43年、現在の地に新築移転する。平成7年にはエイズ治療拠点病院の指定を受け、平成13年9月、保健医療福祉行政の一環として性差に基づく医療整備の推進を目的に「女性専用外来」がスタートする。また平成14年4月からは電子カルテ網で病院・診療所・保険調剤薬局をつなぐ「わかしお医療ネットワーク」の本格運用を開始し、「病院完結型の医療から地域完結型の医療へ」の転換を進めている。


病院外観



  <病院の特徴>

骨密度測定装置(左)と乳房用X線撮影装置(右)

◆ 都道府県立初の女性専用外来を開設

平井院長は平成12年より、健康づくり運動『千葉健康プラン21』(その後『健康ちば21』と改称)を進める策定専門委員会の委員長として、千葉県の様々な疫学データの収集・分析に関わっていた。その中で見えてきた問題点は以下の4点である。

・動脈硬化性疾患による死亡原因の割合は男性よりも女性がかなり高い。

・働き盛りの女性の死亡原因は乳ガンが飛び抜けて多く、また千葉県内の女性乳ガン死亡率は全国で4番目に高い。

・若年女性のカルシウム摂取量が著しく低下している。

・更年期女性のケアが十分でない。

 そして都道府県立病院としては全国初の女性専用外来が平成13年9月、東金病院に開設された。
「女性専用外来にもいくつかのパターンがありますが、当院の場合は心と身体のトータルケアができるように、内科の医師を中心として初診から一貫して治療を行っています」
当初、非常勤医師1名でスタートするが、患者数が予想を上回ったためすぐに医師3名に増員し、さらに平成14年4月より常勤の女性専用外来専任医が配置された。
なお、東金病院からスタートした「女性専用外来」はその後、千葉県下10病院へ拡大し、平成16年9月の時点でのべ12000人の女性が受診した。その半数以上が東金病院での受診だという。

◆地域完結型の医療への転換

山武医療圏では人口10万人あたりの医師配置数が全国平均190人に対して89人と千葉県下でも最も少ない(県平均130人)。それを踏まえ、診療所、急性期病院、慢性期病院の役割分担を明らかにして、それらを連携強化する必要を感じた平井院長は「地域全体がひとつの病院である」と考え、山武医療圏の底上げを目指した。そして実行したのが広域電子カルテ網「わかしお医療ネットワーク」の構築である。その目的は以下の4点だと平井院長は語る。

・生活習慣病における医療機関格差の解消と面診療(医療圏を面として捉えたときの診療機能)の底上げ

・新たな医薬連携体制の確立

・在宅データの活用による糖尿病診療の充実

・遺伝子解析に基づくテーラーメイド医療の確立

 現在、「わかしお医療ネットワーク」に参加している施設は医療機関24カ所、保険調剤薬局は21カ所、そのほか保健所、訪問看護ステーション、介護老人保健施設などがある。

 導入後の成果のひとつに、地域における糖尿病診療のレベルアップがあげられる。「わかしお医療ネットワーク」参加施設に「糖尿病診療の実践的ガイドライン(SDM)」をオンライン配信し、併せて「山武SDM研究会」という研修会を継続開催している。また病院・診療所・薬局間でオンライン服用指導システムを使い、双方向の情報交換を図った。その結果、

・糖尿病専門医の経験を共有することで、診療所でインスリン自己注射患者の管理が可能となった
(糖尿病診療の技術移転)

・重症糖尿病の合併症の発症・進展の防止

・患者QOLの向上と医療経済の改善

・血糖降下剤の服用状況の向上


といった一定の成果を収めることができた。なお、患者のプライバシー保護については千葉県の個人情報審議会の認可を受け、十分配慮されているという。
「以前は地域医療機関との交流がなかったのですが、私が就任後、『地域全体がひとつの病院である』という考えから、今のような医療連携を図るようになりました。また自治体立病院というのは、患者サービスを大前提として、保健医療政策の先兵だという意識があります」



  <運営・経営方針>

◆救急体制の強化と医師の確保
山武医療圏では医師不足に加え、三次救急病院が存在しない。その結果、平成15年度の域外搬送率は25%と極めて高い。現在域外搬送になっている様々な疾患を受け入れられるように、域内の二次救急病院である東金病院および成東病院の救命救急診療体制の強化を急いでいる。その際医師不足がネックになると平井院長は言う。千葉県内の医学部は千葉大学一校だけという実情に加えて、卒後臨床研修制度の開始により、大学病院の研修医は大幅に減り、地域病院から大学病院へ医師を引き上げるケースが出てきた。そのため各診療科の維持が困難になっているのが現状だ。
「病院の安定経営のためには医師の確保が重要です」
そこで新たな医師確保の手段として、人材紹介業者の活用も視野に入れ始めたという。

◆医療の質の向上
平成10年より、院内と地域医療スタッフの研修と交流を進めている。東金イブニングカンファレンスや東金イブニングセミナー、山武SDM研究会などの研修会を定期的に行うことにより、生活習慣病を中心に医療スタッフの継続的なレベルアップを図っている。これにより技術レベルの向上はもちろんのこと、人的交流も促進されている。

◆将来の構想
現在、山武医療圏では中核病院の糖尿病専門外来はオーバーフローしていて、その結果糖尿病の合併症である糖尿病壊疽による下肢切断件数は、全国平均の5倍と極めて高い。そこで平成17年度より同院に糖尿病内分泌センター(仮称)の開設を予定している。このセンターは血管病治療部、糖尿病代謝内分泌治療部、人工透析部からなり、重篤な血管合併症を発症した糖尿病患者に対して、トータルケアが可能な設備として整備する。さらに紹介型急性期医療を担う山武地域医療センター構想も進行中である。
(詳細は、下記URLをクリックしてください)

http://www.pref.chiba.jp/byouin/



  <病院の理念>

1)わたしたちは、いつでも、だれでもが安心してかかれる病院をめざします。

2)わたしたちは、全人的な質の高い医療看護サービスを通じて県民の皆様に奉仕します。
そのためにおのおのの技術の向上に努力します。

3)わたしたちは、病める患者さんの心を大切にします。十分なインフォームドコンセント
(説明と同意)の上に立った納得のいく医療看護サービスをめざします。

4)わたしたちは、患者さんの療養環境の整備、ホスピタルマナー(職員の応援)と
アメニティ(あたたかさ)の向上にたえず努力します。

5)わたくしたちは、地域医療に携わる方々と連携して山武医療圏のレベルアップをめざします。

千葉県立東金病院HPは下記をクリック↓

●常勤医師募集情報
●非常勤医師募集情報

  

2005.01.01 掲載 (C)LinkStaff

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