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             「サービス業としての医療を目指して」

  洛和会音羽病院 院長  中島 久宜 先生
                
 <病院の沿革>
 

 今回ご紹介するのは、京都市山科区の洛和会音羽病院である。京都市に巨大なネットワークを持つ洛和会ヘルスケアシステムの中核病院として、1980年に開設された。
洛和会ヘルスケアシステムの歴史は、1950年に開院された矢野医院(京都市中京区)にさかのぼる。その後、67年に丸太町病院、80年に音羽病院が開設された。その頃の当院について、院長は「周囲には田んぼしかないところでした」と振り返る。しかし、名神高速道路の京都東IC近くという地の利があり、さらに、救急や遠方からの患者さんの受け入れ態勢を充実させていった。その結果、698床を備え、30科目を標榜する病院に成長したのである。




院長 中島 久宜先生
 
 
 病院の特徴>
 
 
◆サービス業としての医療

スタッフのコンシュルジュ

 まず当院で目に付くのは、ホテルのベルガールを思わせる制服を着た女性達であろう。取材に訪れたとき、ちょうど患者さんの大きなバッグを持って、病室に案内しているところを目撃した。「医療は、ホテルや航空と同じようなサービス業である」とは院長の持論であるが、この女性達の職種名も「コンシュルジュ」と、ホテルさながらである。

「このコンシュルジュを導入するまで、入院する患者さんは受付で看護師の出迎えをずっと待っていらしたんですよ。それが、今ではこちらが患者さんをお出迎えしているので、入院前に不安を感じさせることはありません。
彼女たちは当院の理念を十分に学んだ上で、『患者さまの一歩先を考える』ことをモットーに仕事をしています。おかげ様で、コンシュルジュの案内は非常に好評を頂いております」

 
◆早期回復を可能に

 前述の姿勢をベースに、クリティカルパスや短期集中リハビリなどにより、早期治療、早期退院の成果を上げてきた。その結果、現在の平均在院日数は13.5日となっている。また電子カルテの導入により、丸太町病院や連携する地域診療所などからの検査データや画像の送受信が可能になり、診断を早く行えるようになった。ドクター間のコミュニケーションもスムーズで、「遠隔診断」も随時行っている。

 かつての医療は自己完結型でした。ひとりの医師が外来から在宅までを診るという形です。しかし現在は地域完結型で、急性期、リハビリ、在宅とそれぞれが機能分化し、ネットワークを組んで経過を見ていけますから、『お互いの現場が分からない』ということがありません。さらに、私どもは健診センターを持っているので、予防の段階から患者さんに関わっていけるのが強みですね」


電子カルテ
 
◆品質マネジメント


     自動支払機
 京都の病院で初めてのISO9001:2000の認証を受けるにあたり、様々な業務改善を行った。一例としては、全職員の1割にあたる70人で行っている院内パトロールがある。この70人は品質管理者と呼ばれ、何名かのグループを作って他部署を「パトロール」し、気づいた問題点を改善する。現場で対処できないレベルのものは、院長に報告して判断を仰ぐ。このようにして、小さいことでは整理整頓から、大きなことでは医療機器の購入や設定に関することなど、様々な問題に対処してきた。

「私が数えてみましたら、私どもの病院内には医師や看護師、管理栄養士など、24種類のライセンスを持つ職員が働いているのです。皆それぞれがプロフェッショナルですが、これまでは横のつながりが希薄でした。ですが、この院内パトロールにより他部署の職員の顔が見えてきたと申しますか、横向きに話をすることの重要性を認識できたと思います。もちろん、医局内での風通しもよくなってきました」
 
 
 <運営・経営方針>
 
 ◆医師の教育システム
 当院には140人を超える常勤医師がいる。「医局講座制度では、医師が競争しないで馴れ合いになる」との考えから、その出身大学は全国51大学と幅広い。いわば「他流試合」をしながら、医師はスキルを磨いていくのである。また、院長は「医師の免許はあくまで『医師』の免許であり、『○○科』の医師免許ではない」と語る。

「出身大学の名前でメシが食えるのは、卒後5年までですよ。10年経って基本的なことができないというのではいけません。少なくとも応急の技術は身につけてもらいます。そのうえで、他の科にお願いすること、転送の依頼をすることといったことができればと思います」

さらに、当院は充実した再研修システムも備えている。かつては、心臓血管外科の部長が内科のレジデントを務めたこともあったという。その間の雇用条件は医師にとっては不利にはなるが、転科や開業を希望する医師からは問い合わせが相次いでいるという。このようなレジデントを受け入れる際には、患者さんへの説明を丁寧に行い、また医療事故の防止に力を入れている。

「このシステムは、いわゆる役所の病院でない強みから生まれたものですね。しかし、責任の伴う仕事ですから、興味本位の方はお断りしています。だって、開業医を希望されている方に心臓カテーテルの研修は不必要でしょう。このように必要なことと不必要なことを整理しながら、医師として1人立ちされるまでをお手伝いしています」
 
◆コスト意識
 中島院長は「良い医療は良い経営があってこそ達成できる」との信念を持つ。医療とは目的であり、経営とは手段である。手段が十分に尽くされていなくては、目的が達成できない。
一方、これまで医療側、すなわち医師に「バイパス手術でのコストはいくらか」といった感覚はなかったが、今後はこのようなことも求められる。これは今年7月からのDPC(診断群分類別包括評価)実施を前に、当院が検討課題にしていることでもある。

「職員の能力のばらつきをなくしたいです。つまり、どの医師、どの看護師にあたっても患者さんが等しく利益を受けられるように努力したいです。限られたマンパワーを、どのように患者さんのために活かしていくかを考えていきたいですね」
 
◆医療は文化である

 院長は「医学は科学であるが、医療は文化である」と語る。医学が相手とするのは、数式や法則といった無機的な存在である。一方、医療が相手とするのは患者さん、すなわち多種多様な人間である。

「患者さん個々人の立場があるにもかかわらず、医療提供側に一方的な価値観の押し付けがありました。今後は、各人の立場を理解しようと努め、説明責任を果たしていかなくてはならないでしょうね。そのためには、スタッフや患者さんと上手くコミュニケーションをとる能力が必要です。今後、このような能力が医師にとってより一層必要となるのではないでしょうか?」

 
 
 <洛和会ヘルスケアシステムの理念>
 
1. 顧客第一に、質の高い医療と介護を提供します。
2. すべてのサービスに、誇りと責任を持ちます。
3. 経営基盤を確立し、個人と組織の向上を目指します。

          洛和会音羽病院外観
 
 


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(終わり)
このインタビュー後の3月31日、中島院長先生は急逝されました。慎んで御冥福お祈り申し上げます。


2004.4.1掲載 (C)LinkStaff

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