外科の醍醐味 vol.1

 外科とは、cheiro(手)とergon(技)を合わせた言葉で、“手の技”を意味するラテン語chirurgiaやギリシャ語chirurgieを語源とするsurgeryの訳語であるが、internal medicineを内科と訳し、それに相対する領域が外科と称されている。外傷や体内の諸疾患を手術や処置によって治療する医学の一分科である。
 医師になり、外科を専門に選んで20年余りが過ぎた。
 医師として患者さんに向き合い臨床を行うのであれば、あらゆる手段を講じて疾患と取り組みたいと考えたのが外科を志望する動機であった。しかしながら学生の身にどの専門分野をライフワークに選ぶかなどは判るはずもなく、卒業と同時に選択肢の広い一般外科分野、九州大学第二外科(杉町圭蔵教授)に入局した。
 2年間の研修生活の後、胃がんをテーマに研究を始め、がんの増殖活性について学位論文をまとめた。
 九州がんセンター勤務時代は、食道がん、胃がん、大腸がんの3つの診断名のみで診断から手術、化学療法、緩和ケアまで、患者さんを通してがんという疾患を学ぶことができた。主治医執刀制が原則で、がんに対して外科的切除が効果的で最も根治性が高いことを学ぶ一方で、生体に侵襲を加える手術と術前・術後の全身管理について、メスの持つ重みを真摯に受け止めることも教えられた。
 「病む人の気持ちを」という初代院長入江先生による色紙が院内に掲げられており、がん診療の原点を考えさせられた貴重な3年間であった。
 米国BostonにあるHarvard Medical School, Dana Farber Cancer InstituteにResearch Fellowとして留学し、シャーレの中で培養したがん細胞に対して抗がん剤が効くのに、マウスに移植したがん細胞は抗がん剤耐性を示すというin vivo抗がん剤耐性について、Dr. Teicherのもとで研究を行った。病理が中心であった研究分野ががん細胞を用いたin vitro, in vivoへと拡がり、化学療法の知識も深まった。
 同時期に血管新生の大御所であるProf. Folkmanとの共同研究に参画させて頂いたのも貴重な経験であった。がん細胞と周囲の間質組織との相互作用でがんは増殖し、進展していくわけで、抗がん剤というストレスに対してがん細胞は徹底抗戦を試みる。
 次回は外科医にとっての化学療法について話を進めたい。

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  2010/03/26 外科の醍醐味 vol.4