vol.4

◆第4週目◆
勤務医受難の時代
 医療は予測不可能なことが頻繁に起こります。特に外科治療は生体に直接侵襲を加えるので、本来、最悪の事態も覚悟して行うものです。経験を積めば積むほど、日常診療にいかに多くの落とし穴が潜んでいるかを知ることになります。ここ何年か、メディアの過熱報道が医師を追い詰め、検察が業務上の過失で医師を逮捕する事件が続きました。最近の医療内容は高度に専門化しており、医師であっても自分の専門外の事柄には軽々に意見を述べられないのが実情です。医療の本質に精通しない記者が一面的、短絡的な記事を書き、検察が一般犯罪と同様の視点で取り調べ、裁かれることがあったとしたら問題です。手術は常に生命の危険と、合併症発生のリスクと隣り合わせており、結果論で責任を問われ、犯罪者にされるのでは外科系医師のなり手はいなくなり、リスクの少ない職場を選択する医師が増えるのは当然の帰結です。病院勤務医は科にかかわらず、重症患者を診る機会が多く、その心理的重圧や不安が萎縮医療を招き、病院を立ち去る原因にもなっています。勤務医の多くは一般社会人の休日にも、当直やオンコール体制を担い、肉体的・精神的負担を負っています。加えて、一朝事あるとメディアの批判に晒され、負わされる重責とそれに見合わない低い給与に耐え、いつ犯罪者にされるかわからない不安に怯えています。こうした点に目をつぶったまま、いくら医学部の入学定員だけ増やしても、わざわざリスクの高い科を選んで、苦労の多い勤務医になろうという人はいないでしょう。勤務医の待遇改善や免責に全く目を向けないのでは、とても現在進行している医療崩壊の歯止めになるとは思えません。

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