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石川内科クリニック

石川 直文 院長

石川 直文 院長プロフィール

1949年に北海道芦別市で生まれる。1977年に長崎大学を卒業後、長崎大学第三内科に入局し、長崎大学病院で研修を行う。1979年に長崎大学病院第三内科の関連病院である長崎市立市民病院(現 長崎みなとメディカルセンター市民病院)、長崎原爆病院で循環器疾患診療に携わる。1980年に長崎大学病院第一内科で内分泌、代謝、膠原病疾患診療に携わる。1982年に伊藤病院に勤務し、甲状腺疾患診療に携わる。1999年に伊藤病院内科部長に就任する。2004年6月に千葉県船橋市に石川内科クリニックを開設する。


日本内科学会認定内科医、日本内分泌学会内分泌・代謝専門医、日本甲状腺学会専門医など。

 千葉県船橋市本中山は周囲を市川市に囲まれた地区である。JR総武本線の下総中山駅の北には中山法華経寺へ向かう参道が伸び、門前町の面影がある。中山法華経寺は日蓮宗大本山の寺院であり、境内の鬼子母神も有名である。また、日蓮の真蹟である観心本尊抄や日蓮が筆写した立正安国論が寺内に現存し、国宝に指定されている。本中山には下総中山駅のほか、京成本線の京成中山駅や東京メトロ東西線の原木中山駅があることから都心へのアクセスが良く、船橋市内では高齢化率が低いエリアとなっている。
 石川内科クリニックはJR総武線の下総中山駅から徒歩6分の中山メディカルスクエアに2004年に開業したクリニックである。石川直文院長は甲状腺疾患の専門病院である伊藤病院で内科部長の要職にあったが、専門性を活かした開業に踏み切った。甲状腺の細胞診検査の設備も整え、現在は甲状腺疾患の専門施設としての認可を受けている。また、甲状腺疾患の中には循環器疾患、糖尿病、脂質異常症を合併するものが少なくないため、内科に加えて、循環器科も標榜している。
 今月は石川内科クリニックの石川直文院長にお話を伺った。


開業に至るまで

◆ 医師を目指された経緯をお聞かせください。
 父は医師になりたかったそうなのですが、戦争などもあり、諦めざるを得なかったのです。父はその気持ちを自分の弟に託したんですね。私の叔父も開業医となり、網走市の医師会長も務めていました。私にとって大きなきっかけとなったのは2歳の頃に火傷を負ったことです。親からみれば熱くない程度のだるまストーブの熱で、右手の手のひらがただれてしまいました。水疱を破いてしまったので、診てくれた医師が感染を防ぐために私の大腿の皮膚を使って自家移植をしてくれました。右手が拘縮しないように手には板をつけていましたが、板を外した後は右手で普通に字も書けるようにもなりましたし、その医師には感謝の気持ちで一杯です。その医師と叔父の姿を見て、私も人の役に立つ医師の仕事がしたいと考えたのが動機です。


◆ 大学時代はどのような学生でしたか。
 あまり勉強せず、よく遊んでいました(笑)。どうにか卒業できたという感じですね。しかし、卒業後は勉強に励みました。


◆ 大学時代はどんなご趣味をお持ちでしたか。
 麻雀です。当時の学生の聞で流行っていたんですよ。車で遠くまで遊びに行くような時代でもありませんでしたし、友達と近揚で遊んだり、飲んだりしていました。


◆ 専攻を内科に決められたのはいつですか。
 専門の3年生のときです。右手に不自由さがありますから、外科で手術をするのは無理だろうと考えました。


◆ 最初は循環器疾患を専攻されたのですね。
 私はせっかちで、気が短いところがあるんです。循環器疾患は一刻を争うものが多く、診断や治療の際にスピードが要求されます。結果が早く分かる疾患ということに惹かれました。


◆ 内分泌や代謝、膠原病を学ばれたのはなぜですか。
 第三内科で直属の上司と意見が合わなくなって辞めざるを得なくなり、第一内科に移りました。当時の第一内科では膠原病班が黎明期で、歴史がまだ浅く、人が欲しかったということもあり、誘っていただきました。私を引き受けてくださった先輩には今も感謝しています。免疫の勉強は理屈っぽい私には合っていましたね。学んでいて、本当に面白かったです。


◆ 伊藤病院にも勤務されたのですね。
 第一内科の教授が甲状腺のプロフェッショナルである長瀧重信教授に代わったのです。
長瀧教授は当時まだメインテーマのなかった私にバセドウ病の免疫異常について研究するようにと勧めてくださいました。伊藤病院に勤務したのは長瀧教授のご紹介です。当時の伊藤國彦院長は甲状腺の世界では神様のような方でした。長崎大学に研究に必要な血清を持ち帰ることが主な目的で、半年の約束だったのですが、院内で研究することになり、20年以上も勤務しました。勤務して数カ月は外来の新患は診せてもらえませんでした。國彦院長は私の甲状腺の触診の技術を確かめておられたようです。初めて新患を任された日のことは今でも鮮明に覚えています。その後、私の研究が進むにつれて、國彦院長はクリーンベンチやインキュベーターを揃えてくださいました。厳しいけれど、面倒見が良い先生でした。


◆ 勤務医時代を振り返って、いかがですか。
 楽しかったです。國彦先生が名誉院長に退かれる前から伊藤病院は少しずつ変わってきましたが、外来の患者さんは常に多く、遣り甲斐はありましたね。伊藤病院では内科部長も務め、後輩の医師の論文の直しなど、アカデミックなことにも携わっていました。


開業の契機・理由

◆開業の動機をお聞かせください。
 伊藤病院の勤務の年数が長くなるにつれ、外来の患者さんが増えていくにも関わらず、私の手を抜けない性格もあって、外来の診療時間が非常に長くなってきました。病棟の患者さんも受け持っていましたし、一方で、内料部長の仕事もありましたから、なかなか落ち着いて臨床的なことに専念できなくなりました。そのうちに、年齢も50歳を超えてきたこともあり、自分の医師の原点に戻って臨床を本格的にやりたいと考え、開業を考えるようになりました。


◆ 開業地はどのように探されたのですか。
 コンサルティング会社の方と一緒に探しました。東京の都心部は家賃が高いですし、開業している仲間も多いので諦めました。しかし、伊藤病院で診ていた患者さんが来院されることが予想されましたので、東京近郊とは決めていました。最初は知人からホテルの中の物件を紹介されたんですが、コンサルタントの方から止められました。甲状腺疾患の患者さんはほとんどが女性です。具合の悪い女性が一般の健康な方が多くいるホテルに来るのは嫌がるはずだと忠告されたのです。さすがにプロの視点だと思いました。今の物件はコンサルティング会社の方が探してくれました。私は千葉に土地勘はありませんでしたが、コンサルティング会社の方を信頼していましたので、こちらに決めました。


◆ 開業地の第一印象はいかがでしたか。
 前の勤務先が原宿でしたので、田舎だと思いました(笑)。市川や船橋は知っていましたが、下総中山のことは知らなかったのです。そこには薬局とアパートがあったのですが、薬局を建て替えるときに医療モールにする予定になっていました。下総中山駅からの途中に真間川を渡る橋がかかっています。橋の前後がともに緩やかな坂道になっているので、年配の方にはきついのではないかと思い、休日ごとに何度も橋を渡り、何とかなるとの感触を得ました。また、下総中山駅にエスカレーターがあるのは良かったですね。
 そして、何よりも薬局のオーナーとスタッフがいい方々でした。院内の設計図を書く費用、さらには内装の費用もオーナーが出してくださったのです。また、大人の患者さんは診ていましたが、小児の診療はしたことがないのが気がかりでしたが、専門がそれぞれ異なる3人の小児科医が1階にサンライズこどもクリニックを開業されると伺い、これで何とかなると確信しました。


◆ 開業にあたって、マーケティングはなさいましたか。
 コンサルティング会社にお願いしました。この地域は新しいマンションに若い人たちが、古くからある一戸建てには年齢の高い方々がバランス良く住まれています。生活習慣病が診られるということと、千葉では少ない甲状腺疾患が専門であるということもあって、事前調査では良い結果が出ました。


◆ 開業までに、ご苦労された点はどんなことですか。
 マーケティングの結果は良かったのですが、それでも甲状腺の患者さんがわざわざ電車に乗ってまでクリニックに来てくださるのだろうかという不安はありました。でも、伊藤病院では早めの時期から退職することを担当の患者さんに伝えてもいいと言われていましたので、1,200枚のチラシを用意し、患者さんにお配りしていましたし、結果的にはそのうち約900人の患者さんがお見えになりホッとしましたね。また、患者さんのデータを記したノートを手書きで退職前に準備しました。これで伊藤病院から移ってこられた患者さんから以前のことなどを聞かれても、すぐに答えることができました。


◆ 医師会には入りましたか。
 船橋市医師会、千葉県医師会に入りました。


◆ 開業当初はどのようなスタッフ構成でしたか。
 事務長(妻)のほかは受付スタッフ4人と看護師が3人です。受付も看護師も1人にならないように配慮しました。当時はスタッフ集めには苦労がなかったですね。


◆ 医療設備については、いかがでしょうか。
 甲状腺超音波機器、X腺撮影装置、12誘導心電図、24時間ホルター心電図、簡易血糖測定器、簡易酸素濃度測定器、簡易尿検査ぐらいです。40代での開業なら大きな投資もできるのでしょうが、私は当時54歳でしたから、最低限の設備を揃えることにしました。電子カルテは開業後に導入しました。手書きで9,000枚ぐらいになったときにカルテスペースが問題となってきましたので、電子カルテに移行しました。


◆ 設計や内装のこだわりについて、お聞かせください。
 スタッフの業務上の動線と患者さんの診療の動線を分けました。スタッフ間の業務関連の行動の際に患者さんの前を通らなくてもいいようにしていますし、トイレも別にしています。インフルエンザや胃腸炎の患者さんを隔離するため、また心電図を撮る患者さんのために採血室の中にベッドも3台、完備しました。


クリニックについて

◆ 診療内容をお聞かせください。
 内料と循環器科を標榜していますが、最近は約8割以上が甲状腺疾患の患者さんです。純粋な循環器疾患の患者さんはあまり増えていません。これだけ専門性を打ち出すと、仕方ない面もあります。ただ、単一の疾患の診療はスムーズに進む利点はあります。患者さんの待ち時間などのストレスが軽減され、満足度も高くなるようです。
 甲状腺疾患では昭和大学横浜市北部病院の専門医による細胞診検査も行っています。甲状腺の腫瘍が良性か、悪性かを調べるための検査法で、患者さんが治療法を選択するうえで大切なものです。この設備を完備したこともあって、私どもは甲状腺疾患の専門施設の認定を受けています。
 専門性が高いクリニックとは言え、地域の方々への一般的な内科診療は必要ですから、風邪の患者さんも診ますし、インフルエンザワクチンの接種も行っています。
 また、日曜日の診療は「日曜日なら来られるのに」という甲状腺の患者さんも多かったので始めました。甲状腺疾患のセカンドオピニオンと医療相談も日曜日に行っています。これには東京の方や千葉県のかなり遠くの地域からの方も来院されますね。


◆ どういった方針のもとで、診療なさっているのですか。
 医師の満足度と患者さんの満足度が時に違うことがあります。医師が「良くなったね」と言っても、患者さんが不満足なこともありますし、医師が「データが悪いんですよ」と言っても、患者さんが満足していることもよくあります。リスキーな状態のときは医師寄りのスタンスでいないといけませんが、安定しているのであれば、患者さんサイドに立ち、患者さんの話に耳を傾け、できるだけ患者さんに寄り添える努力をしていきたいと思っています。


◆ 患者さんの層はいかがですか。
 甲状腺疾患がメインですから、8割近くが女性の患者さんです。男性の患者さんはポツンと座っていらっしゃいますよ(笑)。バセドウ病は20代も少なくないので、年齢層は幅広いですね。小児以外の全ての年齢層の方がいらっしゃいます。小児は医療モールの1階で開業しているサンライズこどもクリニックにお任せしています。


◆ どのような内容の検診を行っていらっしゃいますか。
 以前は船橋市の成人病検診を行っていましたが、メタボ検診に変わった時点からは辞めています。私どもは現在は甲状腺疾患をメインに診療していますので、公的な検診は今後も考えていません。ただ、健診は一部予約制で対応しています。


◆ 病診連携については、いかがですか。
 メインは東京歯科大学市川総合病院です。緊急時は船橋市立医療センターですね。千葉大学医学部附属病院や順天堂大学医学部附属浦安病院にご紹介することもあります。甲状腺疾患の場合は昭和大学横浜市北部病院、伊藤病院、金地病院、日本医科大学付属病院、東京医科大学病院、がん研有明病院、帝京大学ちば医療センター、国立がん研究センター東病院にお世話になっています。


◆ 経営理念をお教えください。
 お金のことは事務長に任せているので、私はあまり考えたことがありません(笑)。ただ、甲状腺疾患の検査の単価は高いので、患者さんの負担が大きくなりますから、当たり前のことですが、必要最小限の検査を常に考え、患者さんの負担を少しでも軽くできるように努めています。また、スタッフに対しては雇用条件も近隣の医療機関と遜色ないようにしています。


◆ スタッフ教育はどのようにされていますか。
 週に1回、事務長が定期的に朝礼をしています。業務上に大きな変更点があるときなどは臨時に私がスタッフ全体に伝えます。診療時にトラブルや気になることがあった場合は先送りせずその場できちんと注意します。仕事が終わった後に個別で呼び出して注意することはしていません。また、事務長が数カ月に1回、スタッフと個別に面接して意見を聴いています。その内容は私にも伝わります。開業した頃は患者さんへの言葉遣いなどを注意したこともありましたが、今のメンバーは落ち着いていますし、改善を促すこともほとんどありません。スタッフの子どもさんがインフルエンザなどで、急に休まないといけないときも私を通さずにスタッフ同士でやり繰りしてくれているので、助かっています(笑)。


◆ 増患対策について、どのようなことをなさっていますか。
 ホームページは作ってありますが、有り難いことに患者さんのロコミと医療機関からの紹介が中心で増患しています。最近は医療媒体には積極的には宣伝は出していません。新規の患者さんには時聞をかけて治療方針を伝えるようにしていますし、一日に診られる患者さんの数には限りがありますが、これからもできるだけお待たせしないように努力して増患に対応していきたいと思っています。


開業に向けてのアドバイス

 人口が減少すると、患者さんも減るわけですから、開業には厳しい時代です。しかし、「情勢が今より良くなったら、開業しよう」ではいけません。パソコンを買うときと同じで、その時点が一番いいと考えるしかありません。厚労省の政策などに振り回されず、開業したいと思ったときがそのタイミングと割り切ることです。ただ、普通は開業して1、2年は安定しませんので、最初からうまくいくと期待して大きな投資はしない方が無難です。私はニッチな疾患を専門にしていたことが幸運でした。循環器、呼吸器、糖尿病といった生活習慣病を専門にされている先生方はライバルが多いので、患者さんを集めるのは大変です。区別化にはより高い専門性が求められますし、ニッチな分野でも日々の勉強は怠れませんが、専門性は経営面で確実に武器になります。
 今はスタッフ、中でも看護師の確保は難しいです。いくら患者さんがいらしても、看護師がいないと回りませんし、そうなると患者さんも減ってしまいますので、看護師確保にも注力してください。

プライベートの過ごし方(開業後)

 最近は休日が全くありません。休診日もクリニックで数時間仕事をしています。余暇は犬と遊ぶぐらいでしょうか。和犬のスピッツを飼っています。一日2回の犬の散歩には行けないので、家族は怒っていると思います(笑)。お酒を飲む曜日を決めていて、その日に行きつけの店に行ったり、友違と飲むのが楽しみです。でも遅くとも23時までには帰宅していますね。

タイムスケジュール

タイムスケジュール
石川内科クリニック
  院長 石川 直文
  住所 〒273-0035
千葉県船橋市本中山4-22-10
中山メディカルスクエア2階-1
  医療設備 心電図、24時間ホルター心電図、X線撮影装置、エコー(心臓部、頸動脈部)、電子カルテ、簡易血糖測定器、簡易酸素濃度測定器、簡易尿検査など。
  スタッフ 15人(院長、非常勤医師2人、常勤看護師1人、非常勤看護師6人、事務長、常勤事務1人、非常勤事務3人)
  物件形態 ビル診
  延べ面積 38.8坪
  敷地面積 38.8坪
  開業資金 不明
  在宅患者数の変遷 開業当初40人→3カ月後40人→6カ月後45人→現在80人
  URL http://ishikawa-clinic.jp/

2017.03.01 掲載 (C)LinkStaff

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