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めぐろ皮膚科クリニック

深野 祐子 院長

深野 祐子 院長プロフィール

1970年に東京都目黒区で生まれ、小学2年生から山口県防府市で育つ。1995年に川崎医科大学を卒業後、川崎医科大学皮膚科に入局し、川崎医科大学附属病院で研修を行う。1997年に渡米し、シアトルのFred Hutchinson Cancer Research Centerに留学する。1998年に川崎医科大学大学院に入学する。2001年に米国ワシントン大学皮膚科にVisiting scholar として留学する。2002年に川崎医科大学大学院を修了し、川崎医科大学附属病院皮膚科の臨床助手に就任する。2004年に米国ワシントン大学皮膚科にSenior fellowとして留学する。2005年に流山東部診療所に勤務し、東京慈恵会医科大学附属病院皮膚科で非常勤臨床医師を兼務する。2007年に六本木ヒルズクリニック皮膚科に医長として勤務する。2012年に肌クリニック表参道皮膚科に院長として勤務する。2014年に東京都品川区にめぐろ皮膚科クリニックを開設する。
日本皮膚科学会専門医など。日本臨床皮膚科学会、日本美容皮膚科学会にも所属する。

 東京都品川区上大崎はJR山手線が縦断し、目黒駅から程近くのエリアである。目黒駅はJR山手線、東京メトロ南北線、東急目黒線が通り、目黒通りのバス路線も充実するなど、アクセスに恵まれた場所である。目黒駅の東側は花房山と呼ばれる高級住宅街となっており、各国の大使館も点在している。
 めぐろ皮膚科クリニックは目黒駅から徒歩3分、花房山の一角に2014年8月に開業したクリニックである。皮膚科と美容皮膚科を標榜し、皮膚で悩む全ての患者さんに対応できる「オールラウンドクリニック」を目指している。
 今月はめぐろ皮膚科クリニックの深野祐子院長にお話を伺った。

開業に至るまで

病院風景02

◆ 医師を目指された経緯をお聞かせください。
 父が内科医をしており、私が小さいときは勤務医でしたが、小学生になった頃に山口県で開業したんです。両親からも勧められましたし、自然な流れで医師を目指すようになりました。


◆ 大学時代はどのような学生でしたか。
 スキー部と軽音楽部に入っていました。冬はほとんどスキー場に行っていましたね。大山に行くことが多かったですが、西医体が長野県の戸狩であるため、合宿は戸狩で行っていました。ただ、合宿所に入れるのは学校の成績次第なんです。追試験を受けないといけないとなると戸狩入りできなくなるので、そのために勉強した感じですね(笑)。最初の方のメンバーに入れたら、人数が少ない分、和気藹々の雰囲気で合宿できて、楽しかったです。


◆ 大学時代はどんなご趣味をお持ちでしたか。
 軽音楽部にも入っていましたので、音楽が趣味でした。軽音楽部ではキーボードを担当していました。コピーバンドのガールズバンドです。恥ずかしくて、当時の写真は見られないですね(笑)。スキー部と軽音楽部で、部活動ばかりの大学生活でした。


◆ 専攻を皮膚科に決められたのはいつですか。
 6年生のときです。弟が内科医になって実家の跡を継ぐことになりましたので、私は何科を選んでも良い状況でした。ポリクリで皮膚科に行った際に、先輩医師が患者さんを診ただけで「帯状疱疹だね」とおっしゃったのを見て、「診ただけで病名が分かるなんて、すごい」と思ったんです。他科でしたら検査に出して、データを見て診断をつけるのに、皮膚科は勝負が早い科なのだと勘違いしました(笑)。本当は皮膚科も研鑽を積んでいるのに、気づかなかったんですね。
 それでも、当時の皮膚科の教授のご専門が膠原病でしたので、内科的疾患にも携われること、小手術などで外科的な内容も経験できることといった範囲の広さに魅力を感じて、皮膚科を選びました。女性の先輩からは結婚や出産をしても続けやすい科だと言われましたが、その観点はあまり重要ではなかったです。私の場合は出産したのは開業後でしたし、大学病院にいる限りは難しかったでしょうね。


◆ 川崎医科大学皮膚科に入局されたのはなぜですか。
 弟も川崎医科大学に在学中で、以前から一緒に住んでいましたので、慣れた環境で仕事を始めたかったからです。実家に近いという理由もありましたね。
 入局したときには大学院に進学することも決めていました。当時はEBMもなく伝統芸能のようだなと思いました。患者さんに説明するのも心もとなかったので、いい臨床医になるために基礎の世界も見ておきたいと考えていました。


病院風景03

◆ 留学を3度もされたのですね。
 渡米前には医局の先輩方から実験のイロハを教わってから行きましたが、1回目は卒後3年目でしたし、アシスタントを務めた程度で、「お客様」扱いをされて終わりました。留学にあたっては先方に雇ったらメリットになると思ってもらえるほどのバックグラウンドが必要だと痛感しましたね。それで、2回目は自分のプロジェクトでの留学に挑戦しました。大学院に入ってから、1回目に留学したときのラボの同僚と会ったり、大学から留学用基金をいただけるように準備したりしたんです。渡米後はそのプロジェクトで結果が出たので、お給料も出ることになりました。3回目の留学はそのプロジェクトをもとにNIHのグラントを取りたいということで、向こうからオファーをいただいたのがきっかけです。そのタイミングで医局を辞めました。


◆ 2005年に帰国して、東京で勤務医になられたのですね。
 医局を辞めていましたから、選択肢は実家の近くか、小さい頃に住んでいた東京しかありませんでした。そんなときに友人からのお誘いで流山市のクリニックに勤めることになり、慈恵医大病院でも外来を担当することになったんです。その後、六本木ヒルズクリニックや肌クリニック表参道で勤務医を続けました。


◆ 勤務医時代を振り返って、いかがですか。
 不自由なこともありましたが、組織に守られていたのだと感謝しています。私の場合は外来勤務がほとんどでしたので、オンオフの切り替えがしやすかったのも良かったですね。


開業の契機・理由

病院風景04

◆ 開業の動機をお聞かせください。
 いつかはどこかで開業したいと思っていましたが、「いつ」については具体案はなく、50歳になったときかもしれないなあと漠然としていましたし、「どこ」も実家に帰ろうかなあというぐらいでした。動機になったのは以前からの患者さんの存在ですね。慈恵医大病院の外来にいらしていた患者さんが私の勤務先が変わっても来てくださるんです。「次はここに来てね」と言うのが申し訳なくなって、私がずっといる場所を作ろうと思いました。卒後20年近くになろうとしていましたし、夫からも「そろそろ開業していいんじゃない」と背中を押してもらいました。


◆ 開業地はどのように探されたのですか。
 住まいに近いところが良かったので、恵比寿、目黒、五反田駅の周辺を探しました。この物件を最初に知ったのはインターネットです。すぐに現地に見に行きました。


◆ 開業地の第一印象はいかがでしたか。
 目黒駅から徒歩3分でしたし、駅からの近さは気に入りました。権之助坂あたりの雑居ビルも見たのですが、患者さんからすれば入りにくい雰囲気ですし、新築のこの物件の方が良かったです。皮膚科は命に直結する疾患が少ないので、クリニックは「入りやすい」ことが大切ですね。
 また、目黒駅とこの物件の間にツインタワーのマンションが建ち、人口が飛躍的に増えること、住宅街であること、私が生まれた場所に近くて馴染みがあることも決め手になりました。この辺りは外資系企業や大使館が点在していて、外国人が多いんです。私は六本木ヒルズクリニックでは英語診察も行っていましたので、国際色豊かな場所で自分の強みを活かせそうだと思いました。


病院風景05

◆ 開業にあたって、マーケティングはなさいましたか。
 友人のコンサルタントにお願いしました。この付近は皮膚科単科のクリニックが1軒しかなく、美容皮膚科に関しては競合がなかったんです。昼間人口も多かったので、いい結果が出ました。それに、以前からの患者さんがいらしてくれることになっていたので、楽観視していました。


◆ 開業までに、ご苦労された点はどんなことですか。
 タイムスケジュールですね。4月に物件と出会い、5月に許可が下りて、融資も決まり、8月に開業でしたので、忙しかったです(笑)。コンサルタント会社の方が保健所への届け出などのタイミングを教えてくださったり、色々なアドバイスをいただきました。仕事の前に打ち合わせして、仕事して、仕事のあとにも打ち合わせする日々でしたが、全て自分に返ってくることですので、楽しかったです。


◆ 医師会には入りましたか。
 これから入会します。


◆ 開業当初はどのようなスタッフ構成でしたか。
 看護師1人、受付1人、助手1人です。看護師と受付は常勤で、助手は非常勤でした。看護師はすぐに退職してしまい、次の看護師が2月に入職しました。まだ半年の勤務ですが、仕事熱心な看護師なんですよ。


病院風景07

◆ 医療設備については、いかがでしょうか。
 QYAGレーザー、炭酸ガスレーザー、ヒーライトを揃えました。あくまでも保険診療メインのクリニックですが、皮膚科の一般診療で解決する術がないことでも気軽に相談していただきたかったので、美容皮膚科の入口的な存在になりたかったんです。勤務医時代の最後の勤務先では美容皮膚科の経験も積みましたし、患者さんのニーズにお応えしつつ、より侵襲の大きな治療でしたら他院をご紹介しています。


◆ 設計や内装のこだわりについて、お聞かせください。
 友人の設計士に依頼したのですが、クリニックにありがちなパステルカラーは嫌だと伝えました(笑)。私自身が長い時間を過ごすところなので、飽きないようにしたかったですね。ビル自体もお洒落ですし、クリニックで入居しているのは私どもだけで、ほかは企業のショールームが入っているんです。ビルのオーナーのこだわりもありますので、意匠にはこだわりました。白を基調に清潔感を出しながら、赤とグレーの差し色を効かせています。各室のドアは患者さんと話す部屋はグレー、施術する部屋は赤、お手洗いなどの水回りに関する部屋は白に色分けしています。


クリニックについて

病院風景06

◆ 診療内容をお聞かせください。
 皮膚科と美容皮膚科を標榜しています。皮膚科は蕁麻疹、いぼ、湿疹、水虫、帯状疱疹、ニキビ、アトピー性皮膚炎などの一般的な皮膚科ですね。テレビでほくろが取り上げられると、悪いほくろではないかといった相談も増えますし、小手術も行います。水いぼやとびひの子どもさんも来院されますね。
 美容皮膚科ではピーリング、イオン導入、レーザー、トレチノイン、プロペシアなど、ベーシックな内容となっています。


◆ どういった方針のもとで、診療なさっているのですか。
 患者さんに納得、安心していただきたいと思っています。もちろん、治ることも大事なのですが、患者さんは同じように納得や安心をしたいのではないでしょうか。私どもは患者さんの「納得したい」、「安心したい」をケアできるクリニックでありたいです。説明を丁寧にしたり、薬の塗り方をきちんとお伝えするなどですね。薬に関しても、「この状態になったら止めてもいいですよ」とエンドポイントを明示することも心がけています。勤務医時代には時間的な余裕がなかったので難しかったことですが、開業医であれば患者さんが「これ、病気なの」と、皮膚のことなら何でも相談できる外来を実現できるはずです。


◆ 患者さんの層はいかがですか。
 メインは30代から40代の方々です。この近辺で働いていらっしゃる方がほとんどですね。男女比は男性4割、女性6割ぐらいでしょうか。男性が意外に多いのが特徴だと思います。子どもさんもよくいらっしゃいますが、反対に高齢の方は少ないです。


◆ 健診はどのような内容で行っていらっしゃいますか。
 まだ医師会に入っていませんので、行っていません。


◆ 病診連携については、いかがですか。
 東京都立広尾病院、NTT東日本関東病院、東京慈恵会医科大学附属病院が中心です。また、六本木ヒルズクリニックには画像を撮っていただいたりもしています。今後は近隣のクリニックの先生方との交流を深めていきたいです。


病院風景08

◆ 経営理念をお教えください。
 経営に関しては手堅く行っていきたいですし、地域密着の姿勢を保ちたいです。私の目が届く範囲で、患者さんのニーズに応えていければと思っています。


◆ スタッフ教育はどのようにされていますか。
 毎朝のミーティングで、患者さんの情報を共有しています。まだ、院内のオペレーションがきちんと定まっていないので、これからの課題ですね。スタッフには気づいたことを適宜、伝えるようにしています。


◆ 増患対策について、どのようなことをなさっていますか。
 ホームページはSEO対策に配慮し、様々なキーワードで検索をかけたときに上位に来るようにしています。WEBに関しては優先予約のファストチケットなども使っていますね。また、目黒駅構内の周辺図にクリニック名を載せたり、電柱広告にも出稿しています。目黒駅前で大規模な工事を行っているので、私どもへの曲がり角が分かりにくくなっているんですね。そのため、道案内を兼ねた電柱広告を2本と、1本は目黒雅叙園方面に向かう道に出しています。


開業に向けてのアドバイス

 同業だけでなく異業種の友人をできるだけ作っておくことをお勧めします。色々な面で助けてもらえるだけでなく、患者さんの気持ちが分かるようになりますよ。
 開業は自分の思い通りにできるチャンスですし、どんな状況になっても、辛いことがあったとしても、全て自分に返ってくることですから、楽しんでやってほしいです。私は開業準備が終わり、来週が内覧会というときに妊娠が分かりました。産休中は慈恵医大の先生方にフォローしていただき、出産後も皆さんに良くしていただいて、感謝しています。

プライベートの過ごし方(開業後)

 子どもがまだ1歳にもなっていませんので、休みの日は育児をしています。最初は戸惑いましたが、開業してからできたのは良かったですね。勤務医時代でしたら、自分の裁量で時間を使えなかったので、私には難しかったと思います。今は色々な方々のお助けを得ながら、仕事と育児を両立できています。

タイムスケジュール

タイムスケジュール

クリニック平面図

平面図

クリニック概要

めぐろ皮膚科クリニック
  院長 深野 祐子
  住所 〒141-0021
東京都品川区上大崎3-10-49
ノット花房山1階
  医療設備 QYAGレーザー、ヒーライト、炭酸ガスレーザー、電子カルテなど。
  スタッフ 4人(院長、非常勤医師1人、常勤看護師1人、常勤事務1人)
  物件形態 ビル診
  延べ面積 75㎡
  敷地面積 75㎡
  開業資金 5,500万円
  外来患者/日の変遷 開業当初13人→3カ月後23人→6カ月後21人→現在33人
  URL http://meguro-derm.jp/

2015.10.01 掲載 (C)LinkStaff

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