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下北沢整形外科リウマチ科クリニック

桜井 明弘 院長

植田 進一朗 院長プロフィール

1961年に東京都府中市で生まれる。1991年に大阪大学を卒業し、大阪大学医学部附属病院整形外科に入局する。行岡病院整形外科、市立貝塚病院整形外科に勤務を経て、1994年に七里病院リウマチ科に勤務する。聖マリアンナ医科大学難病治療研究センターで学位を取得する。国立相模原病院(現 国立病院機構 相模原病院)を経て、2005年に福原病院整形外科に勤務する。2010年に下北沢病院整形外科リハビリ科に勤務する。2014年2月に東京都世田谷区に下北沢整形外科リウマチ科クリニックを開業する。

 東京都世田谷区北沢は世田谷区の北東部に位置する。中心地である下北沢には小田急小田原線、京王井の頭線が通り、新宿や渋谷に10数分でアクセスできる。下北沢は略して「しもきた」と呼ばれており、街全体に非常に活気がある。自由が丘や吉祥寺などと並ぶ若者の街、ファッションの街であるほか、本多劇場に代表されるような演劇の街としてメディアに取り上げられることも多い。
下北沢整形外科リウマチ科クリニックは下北沢駅から徒歩2分の場所に2014年2月に開業したばかりのクリニックである。骨や筋肉、関節の痛みやリウマチの診断、治療のほか、訪問診療も行い、患者さんが自宅で自立した生活を送ることができるようにサポートしている。
 今月は下北沢整形外科リウマチ科クリニックの植田進一朗院長にお話を伺った。

開業に至るまで

◆ 医師を目指された経緯をお聞かせください。
 私はスポーツが好きで、最初に通った東京工業大学でもボクシングなどの格闘技を続けていました。しかし21歳のとき、試合で相手の頭が私の顔に当たり、骨折したんです。手術をするような大怪我でしたから、そのままボクシングから離れました。それでも、大学を卒業後はスポーツに関わる仕事がしたくて、体育教員やスポーツトレーナーへの道を調べていたんです。その中で大阪大学の大学院に健康体育という講座があることを知り、受験に行きました。そこで、大阪大学の医学部に学士入学の制度があると伺ったのです。医師免許を持ったうえでスポーツに関わる仕事に就けるのは魅力的でしたし、学士入学で医学部に入りました。


◆ 大学時代はどのような学生でしたか。
 普通の医学生でしたよ(笑)。私は東京生まれ、東京育ちで、大阪大学に入るまではずっと東京にいましたから、大阪の街は新鮮でしたね。かなり気に入って、楽しく暮らしていました。


◆ 大学時代はどんなご趣味をお持ちでしたか。
 スポーツと並んで、音楽も好きなんです。大学では軽音楽のサークルに入り、ギターやベースを弾いていました。


◆ 専門を整形外科に決めたのはどんな理由からですか。
 やはりスポーツに関わりたかったからです。最初、健康体育を学ぼうと考えていたときに、講師でいらした越智隆弘先生と出会いました。その後、越智先生は整形外科の教授になられ、大阪大学医学部長や日本整形外科学会の会長なども歴任されましたが、当時はスポーツ医学にも力を入れておられ、阪神タイガースのチームドクターもなさっていたんですよ。越智先生のもとに弟子入りし、スポーツ医学を学ぶことにしました。そして、越智先生に「リウマチの方が奥深いぞ」と勧められたこともあって、リウマチも専攻しました。


◆ リウマチ科はいかがでしたか。
 研究室の中にリウマチグループがあり、そこで研究に打ち込みました。ちょうど免疫学が流行り始めていた頃で、飛躍的に進歩していましたね。Bリンパ球などの研究が本当に楽しかったです。


◆ その後、東京に戻られたのですね。
 家庭の事情などもあって、東京に戻ることにしました。戻って2、3カ月後に阪神大震災があり、もし関西にいたら被災していたところでした。東京に戻るタイミングで医局を離れ、当時の国立相模原病院に就職しました。相模原病院はリウマチのナショナルセンターを目指しており、私もリウマチの患者さんを中心に診ていました。そこへ、阪大でお世話になった越智先生が院長先生として着任されたのです。深いご縁を感じましたね。越智先生のご定年まで一緒に仕事をさせていただきました。


◆ 福原病院に移られたのはどうしてですか。
 理事長でいらした福原寿万子先生に誘っていただいたからです。福原先生はリウマチ科の医師でいらっしゃりながら、ご自身もリウマチを患っておられました。福原先生は『リウマチとプール療法―リウマチ医がリウマチになった』という本もお書きになっていますが、アメリカから医療用の温水プールを導入し、ユニークなリウマチ療法を行っていたのです。福原先生のご逝去後は、福原病院は下北沢病院として生まれ変わり、私も引き続き勤務していました。下北沢病院ではリウマチ治療と回復期リハビリテーション病棟での業務にあたっていました。東邦大学医療センター大橋病院や三宿病院で手術をされた患者さんを回復期リハビリテーション病棟でお預かりして、退院までの間にケアマネジャーと一緒に在宅の環境を整えるといった仕事もしていました。


◆ 勤務医時代を振り返って、いかがですか。
 リウマチは100%の完治は難しい病気なので、レベルダウンさせることを目指していました。リウマチの患者さんは一生、痛みと闘わなくてはいけません。放置しておくと骨が変形しますから、何とか進行を止めたい、何とか痛みを和らげてさしあげたいと思ってきました。
 しかし、病院でリウマチの患者さんを診るには時間の制約もありますし、周囲の医師に気を遣う面もあります。病院の中での時間の枠も欲しかったですし、病院に来られない患者さんには訪問診療をしたいと思っていました。患者さんの方にもう少し踏み込んでいきたかったんですね。相模原病院では手術が中心でしたが、福原病院や下北沢病院では手術はなく、リハビリ専門でした。そして今度は在宅診療をしたいというふうに、段々と患者さんの生活寄りになっていきました。

開業の契機・理由

◆ 開業の動機をお聞かせください。
 2013年の秋に、この場所で下北沢美容外科・皮膚科を開業しておられた神沢敏先生が東北にお戻りになることになったんです。医師になった頃は開業することは念頭にありませんでしたが、下北沢病院での勤務医時代に懇意になった近隣の開業医の先生方から「地域医療を一緒にやろうよ」と言っていただいたこともあって、開業へと気持ちが動いていきました。ですから、物件探しをしたことはありません。
 車のナンバープレートにもありますし、世田谷は注目されやすく、話題になりやすいエリアです。モチベーションを上げ、皆を巻き込んでいくためには最良の場所ですね。この場所があったからこそ、開業を考えることができました。


◆ 開業にあたっては整形外科とリウマチ科、そして内科も標榜されようと思っていらしたのですか。
 リウマチは薬での治療がメインですから、内科も必須です。患者さんは内科と整形外科のどちらにかかろうかと迷われますし、痛みがあれば整形外科にと考えられますので、整形外科、リウマチ科、内科を標榜しています。しかし、内科は薬のみで、検査や超音波などは行っていません。必要があれば、近隣の内科をご紹介しています。


◆ 開業地をご覧になっての第一印象はいかがでしたか。
 この場所に入居するクリニックは私どもで4代目なんです。私も以前からよく知っている場所でしたし、下北沢駅に近いので悪くないと思っていました。下北沢病院とも近いので、勤務医時代からの患者さんもいらしていただきやすいですしね。しかし、病院と診療所では役割が違いますので、私としてはきちんと棲み分けを行っています。


◆ マーケティングはなさいましたか。
 私の場合は近隣の病院に勤めていましたし、近隣の開業医の先生方もよく知っており、いわゆる落下傘開業ではありませんので、マーケティングはそこまで重視していませんでした。ただ、銀行での資金調達にあたっては必要でしたので、ある程度は行いましたが、あまり当てにならないですね(笑)。


◆ 開業するまでにご苦労された点はどんなことですか。
 特に苦労はなかったですね。苦労しそうだったのはスタッフ集めでしたが、逆に恵まれました。福原病院から下北沢病院に変わるときに事情があって辞めた看護師と事務長が駆けつけてくれて、事務スタッフはハローワークですぐに決まりましたので良かったです。


◆ 医師会には入りましたか。
 世田谷医師会に入会するつもりで、手続きを行っているところです。医師会入会後は検診なども行っていきます。


◆ 当初はどのようなスタッフ構成でしたか。
 看護師、事務長、事務スタッフが1人ずつです。


◆ 医療設備については、いかがでしょうか。
 レントゲンと骨密度ぐらいですね。今後も拡充の予定はありません。


◆ 設計や内装のこだわりについて、お聞かせください。
 以前のクリニックとほとんど変わっていません。レントゲンの据え付けがありましたので、レントゲン室の周辺の内装を少し変更しました。また、以前は手術室だったスペースをスタッフルームに変えている程度です。


クリニックについて

◆ 診療内容をお聞かせください。
 整形外科、リウマチ科、内科を標榜していますが、どんな患者さんがいらしても大丈夫です。整形外科は外傷も診ています。骨折の保存療法が多いですね。私どもでは手術はできませんので、手術できる病院をご紹介しています。
 整形外科には牽引や温熱療法といったリハビリのイメージがありますが、私どもではそういった物理療法のみならず、退院後に自宅のトイレに行くときのためのトレーニングなども行っています。そのため、今後は在宅診療も充実させたいです。ご自宅でできるだけ過ごすことで、人生を全うしていただきたいと考えています。


◆ どういった方針のもとで、診療なさっているのですか。
 病院と異なり、敷居を低くして、気軽に入ってこられるクリニックにしたいと思っています。患者さんが質問されたことにはどんなことでもお答えし、私どもでできる範囲のことをしていきたいです。


◆ 在宅診療はどのような形で行っていらっしゃいますか。
 病院は悪くなった方を診るところですが、在宅診療では悪くならないようなケアや介護予防ができるのが特徴です。私どもでは世田谷区の安心すこやかセンターの在宅マネージメント部門と提携し、訪問看護ステーションやデイサービスとも協力し合って、リウマチに限らない形での在宅診療を行っています。地域の多職種連携の会である「代沢・北沢あんすこカフェ」や北沢タウンホールでのイベントなどでPRしているところです。


◆ 温泉療養相談室というのはどういうものですか。
 父の植田理彦が温泉療法専門医なので、私どもに一室を設け、患者さんからのご相談に乗っています。温泉を賢く利用すれば、慢性の筋肉や関節のこわばり、痛みを軽くすることができます。また、冷え性、末梢循環障害、胃腸の機能低下、皮膚乾燥症、軽症の高血圧、糖尿病、高コレステロール血症が適応です。保険診療の対象外ですし、外科手術後の静養、交通障害後の療法などの補助療法ですね。


◆ 患者さんの層はいかがですか。
 基本的には高齢者の方が中心ですが、腰痛や外傷、ぎっくり腰などの20代の患者さんもいらっしゃいますよ。子どもさんは外傷が多いですね。


◆ 病診連携については、いかがですか。
 東邦大学医療センター大橋病院や三宿病院と連携しています。下北沢病院時代からのお付き合いがありますし、電話で気軽にお願いしやすいですね。また、患者さんからのご希望があれば、東京大学医学部附属病院や東京医科大学病院などもご紹介しています。


◆ 経営理念をお教えください。
 経営理念を申し上げるほど、まだ経営者になっていません(笑)。周囲の開業医の先生方から「利益を考えるな」とアドバイスをいただいていましたが、開業後はその意味を実感しています。自分が儲けようとせず、患者さんの満足を考えなくてはいけないですね。保険診療には制約もありますが、その枠を超えた医療を心がけたいです。スタッフを抱えていくとなると経営も大変になるのでしょうが、スタッフを大事にしながらも、最小限かつコンパクトな経営を目指したいです。ただ、この物件は30坪弱しかないので家賃が高くありません。整形外科では珍しい狭さですが、その分、在宅に力を入れていきたいです。


◆ スタッフ教育はどのようにされていますか。
 スタッフに任せているので、私からは特に教育していません。スタッフが薬や注射、医療材料の補充をしたり、そのほかの必要なものも揃えてくれているので、私は患者さんに向き合い、診療に集中できています。


◆ 増患対策について、どのようなことをなさっていますか。
 ホームページはありますが、来院動機は口コミがほとんどです。いらした患者さんに誠実に対応することを心がけていますので、口コミに繋がっているのでしょうか。
 下北沢病院時代に「はなまるマーケット」に2回ほど出演したのですが、出るたびに患者さんが増えました(笑)。また、カーナビの告知をご覧になって、長野や伊豆の下田からお越しになった患者さんもいました。今後もそういったチャンスがあれば、患者さんが増えるのかもしれませんね(笑)。


開業に向けてのアドバイス

 私は場所とスタッフに恵まれた開業ができました。患者さんとも近隣の開業医の先生方とも繋がりがありましたし、区役所の方々も知っていました。開業にあたっては「今、やろうか」ではなく、「今しかない」というタイミングが大事ですので、チャンスを見逃さないでいただきたいですね。ただ、場所探しは大変です。特にご自宅の近くで探そうとなるとなかなかないものですから、ご縁を大切にしてください。


プライベートの過ごし方(開業後)

 犬の散歩をするぐらいでしょうか。ソフトバンクのCMに出ている北海道犬を我が家でも飼っています。以前は柴犬を飼っていたのですが、6年前に亡くなったのです。犬小屋なども残っていますし、また飼いたいと思っていたところ、知り合いのところに7匹、産まれたので、そのうちの1匹を譲っていただきました。子どもたちはチワワやトイプードルがいいと言っていましたが、私は北海道犬を気に入っています(笑)。


タイムスケジュール

タイムスケジュール

クリニック平面図

平面図

クリニック概要

下北沢整形外科リウマチ科クリニック
  院長 植田進一朗
  住所 〒155-0031
東京都世田谷区北沢2-14-10 こだまビル3F
  医療設備 デジタルレントゲン、骨密度など
  スタッフ 4人(院長、常勤看護師1人、事務長1人、常勤事務1人)
  物件形態 ビル診
  延べ面積 約30坪
  敷地面積 約30坪
  開業資金 約1000万円
  外来患者数の変遷 開業当初20人→現在30人
  URL http://shimokita.byoinnavi.jp/pc/index.html

2014.05.01 掲載 (C)LinkStaff

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