クリニックの窓教えて、開業医のホント

バックナンバーはコチラ

夫婦で役割分担し、クリニックを円滑に運営

院長

堀井 有尚 院長プロフィール

 1965年に東京都に生まれる。1992年に日本大学医学部を卒業し、日本大学医学部附属板橋病院外科に入局する。2000年に日本大学医学部医学研究科大学院で博士号を取得する。親類の病院での勤務を経て、2003年に東京都板橋区に堀井医院を開設し、現在に至る。日本外科学会専門医、日本消化器学会認定医、検診マンモグラフィー読影認定医。

 堀井医院は東京都板橋区の静かな住宅街に位置する。最寄り駅は東武東上線中板橋駅と都営地下鉄三田線板橋本町駅である。堀井医院は、お父様が開業し、休診していたクリニックを建て替える形で、2003年に開業した。日本大学で同窓生だった奥様が呼吸器疾患、アレルギー疾患を中心とした高血圧、糖尿病などの内科のほか、小児科を担当し、院長が経鼻内視鏡や超音波検査、在宅医療、訪問診療などを行っている。夫婦が役割をうまく分担しながら、クリニックを共同で運営していることが特徴だ。堀井院長に、複数の医師で診療所を運営するメリットや開業を考えている医師へのアドバイスなどをお聞きした。


開業に至るまで

病院風景

 堀井院長のお父様は内科の開業医で、お母様は薬剤師である。医師をしていた親戚も多く、そのような環境の中で、大学進学は迷うことなく医学部を選択した。日本大学を卒業後は日本大学医学部附属板橋病院外科に勤務する。臨床での経験を積みながら、大学院で主に消化器がんについても研究し、2000年に博士号を取得した。

 同じ年に、大学の同窓生で現在、クリニックを一緒に運営している尚子副院長と結婚する。開業については結婚して1年経った頃から考えるようになり、親戚の医院で内科の経験を積んだ。そして2003年、亡くなったお父様が運営し、休診していた東京都板橋区の診療所を建て替え、12月に開業する。

 開業資金は建物に約7000万円、レントゲン、エコー、内視鏡、リハビリ機器、電子カルテなどの設備投資に3000万円ほどかかった。

 「父の医院は10年以上休診していましたし、新規開業に近かったですね。最初は大変だろうと覚悟をしていました。PRについては駅と電柱に看板を出し、ポスティングと内覧会を行いました。ホームページはコンサルタントの方に紹介してもらった広告会社に依頼し、制作しています。」

 来院患者数はオープン当初は1日10人で、3カ月後には20人、半年後に30人、現在では70人と順調に推移している。


クリニックの内容と特徴

病院風景 堀井医院は内科、小児科、外科、呼吸器科、アレルギー科、リハビリ科を標榜科目に掲げ、尚子副院長が風邪、喘息などの呼吸器疾患、アレルギー疾患を中心として高血圧、糖尿病などの内科のほか、小児科全般も担当している。院長は経鼻内視鏡や超音波の検査と乳がん検診、粉瘤などの小手術に加え、在宅医療と往診を行っている。

 特徴的な診療としては、花粉症対策として季節前の秋にレーザー治療を実施している。また、医療設備の中に、鼻から電子スコープを挿入し、食道や胃、十二指腸を観察する電子内視鏡を備えている。この超細径内視鏡は先端外径が5mmで、鉛筆よりも細いため、患者さんへの負担が軽く、「検査が辛いのでは」と敬遠している人も気軽に受けることができる。

 そのほか、ウォーターベットマッサージ機やマイクロ波、干渉波などのリハビリ機器を導入し、肩や腰、膝の痛みのある高齢者などにも対応している。

 「訪問診療や在宅医療は、開業して2年目ぐらいから始めました。この地域も今の日本と同じで、高齢化がかなり早いスピードで進んでいますので、この2、3年特に力を入れていて、今は40名ほどの患者さんを診ています。」

 住宅街の中に立つ33坪のクリニックは淡いグリーンの外壁に覆われ、中に入ると受付の部分が吹き抜けになっている。

 「建物の色はグレーや茶色などの暗い雰囲気の色にしたくなかったので、ペパーミントグリーンにしました。また、開放感のある診療所にするために、受付部分を吹き抜けにし、白を基調とした清潔なイメージのインテリアにしています。」

 診療に当たっては、院長、副院長とも患者さんを自分の家族と思い、親身に対応することを心がけている。


複数の医師で運営するメリット

病院風景 院長は奥様である副院長と共同で診療を行っているが、複数の医師でクリニックを運営するメリットとデメリットについて聞いてみた。

 「これからの日本の状況を考えると、院内処方は見直されてくると思います。当院も薬局を兼ねていますが、薬品の在庫の確認や発注など、全て一人でやるのは難しいんですね。そうした仕事を分担できるのはメリットでしょう。また、内視鏡の検査は一人の医師だと、週に何日か休診にしないとできないようですが、私の場合は家内と2人で運営しているので、検査の予定も積極的に入れられますし、訪問診療などにも出かけることもできます。このように気心の知れた夫婦の場合はデメリットはあまりありませんが、友人や兄弟で一緒に行う場合は意見の食い違いで衝突するケースが多いようです。知り合いの先生で、うまくいかなかった話もよく聞くので、そういうパターンはお勧めできないですね。」


院長のプライベート

 この3、4年、義理の兄や親戚と一緒に、よくゴルフに出かけています。年末年始などの長い休みには家族と沖縄など暖かいところに旅行に行くことが多いですね。


開業に向けてのアドバイス

 今年で開業して8年目ですが、患者さんの半分以上は父の代からの患者さんです。私のように親から患者さんを引き継げる人はいいですが、そうでない内科での新規開業は難しいでしょう。なぜなら高齢の方は既に自分の通い慣れた医療機関を持っていることが多いからです。そのため、内科の新しいクリニックは認知してもらうまでに時間がかかりますが、整形外科や小児科、耳鼻科、眼科などは、内科と比べて早く軌道に乗せることができるのではないかと思います。

 また基本的なことですが、診療圏調査は綿密に行うことをお勧めします。住民に比較的若い世代の夫婦が多い新興住宅街であれば、お子さんが生まれる可能性が高いので、小児科、耳鼻科がメインになり、整形外科を開業しても難しいでしょう。一方、高齢者が多くて、医療機関があまりない地域では整形外科や内科を開業するのに向いています。自分のやりたい分野に合わせて、きちんと地域を選別することが大切だと思いますね。


タイムスケジュール

タイムスケジュール

クリニック平面図

平面図

クリニック概要

堀井医院

  院長 堀井 有尚
  住所 〒173-0011
東京都板橋区双葉町40-13
  医療設備 電子カルテ / カメラエコー
  物件形態 戸建て
  延べ床面積 33坪
  開業資金 13,000万円
  URL http://www.horii-iin.com/

2011.03.01.掲載 (C)LinkStaff

バックナンバーはコチラ

リンク医療総合研究所 非常勤で働きながら開業準備