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卓越したコミュニケーションスキルで地域住民の健康と命を守る

窪田 美幸 院長

菅 正剛 副院長プロフィール

1984年に独協医科大学を卒業する。卒業後は独協医科大学整形外科学教室に入局し、1997年3月まで13年間、勤務する。途中5年間、学外派遣で関連病院へ出向。大学では主として膝関節疾患(外傷、変性疾患、腫瘍など)を担当し、出向中は整形外科全般の診療にあたる。1997年4月に菅外科・整形外科医院に副院長として着任し、現在に至る。

 東急世田谷線西太子堂駅から徒歩数分の場所にクリニックを構える菅外科・整形外科医院は近隣に住む患者さんが大部分を占めるプライマリケアの最前線である。1日の患者数は80人から100人の間を推移し、近隣住民がいかに菅外科・整形外科医院を頼りにしているかが分かる。
 昼下がり、高齢の患者さんが覚束ない足取りで医院に入っていく。待合室にも患者さんが数人おり、診察室では5人の患者さんが理学療法を行っていた。
 地域に根差した菅外科・整形外科医院は、界隈の高齢者にとって、命と健康を守ってくれる砦でもある。患者さんの表情を伺うと、菅正剛副院長ならびにお父様である菅剛猛院長に全幅の信頼を寄せている安堵感が見えた。


開業前後

病院風景01

 菅外科・整形外科医院が開業したのは1964年である。東京オリンピックが開催され、総工費3800億円で東京と新大阪を結ぶ東海道新幹線が開通した年だ。このとき4歳10カ月だった菅正剛副院長は父である剛猛院長の後ろ姿を見て育った。

 「中学、高校、そして大学時代はラグビーに明け暮れていました。それでも自宅の1階で診察する父の姿をいつも見ていました。」

 そんな菅先生が医学部を選び、整形外科を専門にするようになったのは自然の流れだったのだろう。

 「大学病院では整形外科診療だけでしたが、関連病院などの当直ではひとりで全科を担当していました。急な発熱や腹痛などから脳卒中、心筋梗塞まであらゆる対応を迫られましたから、急場の治療も随分経験させてもらいました。」

 その経験が今、大きな財産になっている。

 「人生には何度か選択を迫られるときがあります。私の場合は医局に入って10年を過ぎた頃が1つの転機でした。そのまま大学に残るか、市中病院で勤務医になる道もありました。一方で、父の後を次いで開業医として生きる道もありました。どの道を選ぶのかという決断のために、まず自分がどういう医師になりたいのかを自問自答しました。」

 「整形外科を極めてスペシャリストになりたいのか、それともプライマリケアを担う総合医になりたいのか」という選択肢を前に、菅副院長が選んだのは家庭医だった。その判断にはお父様の後ろ姿を見て育った環境が色濃く反映しているという。

 「他の病院での武者修行も考えましたが、身近に教えを請うに充分なキャリアを持った父がいることに気づき、ためらわず、菅外科・整形外科医院の副院長として働くことにしました。」


クリニックの内容・経営方針

病院風景02

 菅剛猛先生と正剛先生が1日に診る患者さんは80人から100人で、大半が高齢者である。高齢者にとって整形外科領域の疾患は深刻である。運動器の障害が寝たきりにつながる可能性が高いゆえに、膝や腰の痛みには敏感である。「膝がちょっとねえ」と言って来院した患者さんに「実は血圧も高いけどどうなんでしょうか」と相談を受けることも少なくない。

 「プライマリケアは何でも診なければければなりませんから、骨折治療もできる内科医といったところでしょうか。プライマリケアの真骨頂は的確な症状把握と鑑別診断ですね。X線診断の有無、背後に生命予後に影響するような重大な疾患が隠れていないかなどを見極め、お年寄りにも分かる平易な言葉で状態を説明し、治療方針を示すことが大事です。また、患者さんが高血圧を訴えても、診察室で測定した血圧が高ければ治療するわけではありません。血圧は運動や心理的な影響で高くなるので、まず自宅の家庭血圧計で決まった時間に測ってもらい、次の受診日に毎日測定した結果を持ってきていただいています。それでもなお高血圧の範疇にあれば、治療を行います。」

 安易に降圧薬を処方しない。家庭医が糖尿病や高血圧患者さんに行うべき最も重要なことは正確な診断と病気をコントロールし、患者ニーズに応えることだという。整形外科を受診する高齢者に最も多いニーズは運動器の痛みをとることである。

 「水圧で腰や背中をマッサージするウオーターベッド、干渉波という電気刺激で筋肉をほぐす方法、あるいは牽引といった理学療法を望まれる患者さんは多いですね。血流を改善したり、こり固まった筋肉をもみほぐすと痛みは驚くほどとれるものです。」

 診察室は、かつての医師と患者さんが信頼関係で結ばれていた時代を彷彿とさせる空間となっている。医師を身近に感じさせ、高齢の患者さんにも安心感を与える。

 「同級生の母親が受診したり、同級生の子どもも受診しています」。

 気心知れた仲の患者さんが多いので、巷間、伝えられる希薄になった医師─患者の信頼関係などは無縁のクリニックである。
 スタッフは医師2人、看護師1人、受付事務2人、診療助手2人の計7人で、患者さんへの笑顔を絶やさぬスタッフの応対が心地よい空間を演出する。

 「今、整形外科医として関心を持っているのは、高齢者に多い橈骨遠位端骨折です。整復直後はいいのですが、最終的に変形を残すことがあります。手術すれば変形は防げますが保存的に何とかならないものかと。もう一つは痛くない注射法の開発です。どちらも実現出来たら、患者さんに喜ばれると思っています。」


地域の医療環境

病院風景03

 菅外科・整形外科医院から渋谷までは約4kmしか離れておらず、東邦大学医療センター大橋病院も車でわずか数分の距離である。

 「患者さんの状態や疾患によって、より専門的な診察や治療が必要と判断されれば設備が充実している東邦大学医療センター大橋病院や国立病院東京医療センターを紹介しています。整形外科疾患で手術の必要なケースは個人病院で融通の効く駒沢病院に紹介することもあります。」

 病診連携にも過不足はない。

 「患者さんは近隣にお住まいの方が多いので、紹介する病院も近くの方がいいようですね。」

 地域で急性期と慢性期をカバーする地域完結型医療システムが喫緊の課題と言われて久しいが、菅副院長は地域の病院と連携し、患者さんに優しい地域医療を実現している。

 「おばあちゃん!雨で道がぬかるむようなら無理に受診する必要はないからね」のような言葉が患者さんをホッとさせたりもするのである。菅副院長が考える地域医療とは相手への思いやり、心くばりを徹底させることなのだろう。


院長のプライベート

 少年時代はもとより、大学でもラグビーに明け暮れていました。「one for all、 all for one」というラグビースピリットが大好きで、49歳になった今もクラブチーム「東京ドクターズ」で年間10試合をこなしています。医師、歯科医師のチームですが、なかなかやめられませんね(笑)。それから関東ラグビー協会から請われて、試合中のケガを治療するために試合に帯同することもあります。
 お酒も好きで、行きつけの店は渋谷のバーです。マスターとその奥さんでもあるママとは旧知の仲なんです。


開業に向けてのアドバイス

病院風景04

 開業医にとって最も重要なスキルの一つがコミュニケーションスキルです。分かりやすい言葉で分かりやすく説明することが非常に重要です。患者さんに納得して治療を受けていただくためにも忘れてはならないことでしょう。そして近隣の方と積極的に仲良くなる努力を惜しまないことです。診察室から一歩外に出たら、医師と患者の関係を越えて、人間同士の付き合いを心がけるのが地域住民の健康を守るプライマリケアを成功させるコツでもありますね。


患者さんから見た菅 正剛 副院長

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 菅剛猛院長、正剛副院長と親子2代に渡って、お付き合いのある武藤邦男、朱美ご夫妻にお話を伺った。ご夫妻は渋谷でバー「はな」を経営し、正剛副院長がふらりと飲みに行くこともまれではない。

【菅先生とのおつき合いは長いのですか?】
 大先生(剛猛先生)とは50年近いお付き合いをさせていただいています。正剛先生が5歳くらいのときからになりますね。私(朱美さん)は子どものときから体が弱かったので、親の代からの付き合いです。他の病院で処方してもらった薬でも、先生のところに行けば、どんな薬か分かりやすく説明していただけるし、先生の顔をみただけで病気が治ってしまいそうです(笑)。看護師さんはじめスタッフの方もみな優しいし、医院はいつ行っても清潔ですね。大奥様の内助の功も素晴らしいと思いますよ。

【菅先生のよいところは?】
 患者さんに緊張感を与えない、気さくに何でも話せる先生ですね。大先生も若先生も元気があるから私たちも安心できます。夜中でも、何かあってお電話して「これから行きますから」と言えば、玄関のところで電気をつけて待っていてくれます。それですぐに治療して治してくれるから、本当に名医なんです。だから先生の顔を見たら安心するし、慢性病の患者さんは正剛先生に会うのが楽しみになります。

【菅先生に期待することとは?】
 心が広くて人間味がある先生ですから、後輩医師にも慕われているし、ずっと今のままでいつまでもお元気でいてほしいですね。正剛先生は持って生まれた性格がいいんじゃないでしょうか。お店に来ていただいても、とても気持ちよく飲まれます。ですから、病気でなくても、たまに会いたくなりますね。

【取材協力】
バー「はな」
住所:東京都渋谷区道玄坂1-17-9 ヴェラハイツ道玄坂地下
TEL:03-3461-4955


タイムスケジュール

タイムスケジュール

クリニック平面図

平面図

クリニック概要

菅外科・整形外科医院

  副院長 菅 正剛 氏
  住所 〒155-0133
東京都世田谷区代田1-1-5
  医療設備 -
  物件形態 -
  延べ床面積 -坪

2009.10.01.掲載 (C)LinkStaff

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