―「広義のサービス業としての医療」ということで、自由診療の先駆けという面から美容皮膚科に注目される方もいます。
これは非常にデリケートな問題です。過日の皮膚科の総会でも、例えば褥瘡の治療についての発表に対し「保険適応にならないのではないか」といった質問が飛ぶこともありました。もちろん、真剣に病気を治そうという真面目な発表ですし、質問者の方も治したい一心の治療が保険適用にならなかった経験から質問しているのです。
「自費でも良いから治したい」という患者さんは沢山おられます。三十万かけてもPETを受けて、癌の早期発見のため徹底的に調べて欲しい人もいます。ただ、医療に貧富の差が出てしまうのも問題ですから、うまくコンセンサスを作っていく必要があるでしょう。
―厚労省・医師会に対して一言頂けますか。
介護保険制度・医療制度については、議論をつくしてしっかりやってもらいたいです。
それから、現在の医療活動は広告が厳しく制限されたり、法的に大きな制約を受けています。理念・倫理は大切ですが、患者さんのために尽くして正当な報酬を得ること自体が悪なわけではありません。現状に合っていない部分についてはよく議論し、見直していくことも必要だと思います。。
―美容皮膚科医を志す若い先生に、メッセージを頂戴できますか。
最近の若い人の中には、最初から美容皮膚科ばかり意識している人がいます。ですが、シミ、シワ、ニキビしか診られない皮膚科医では困ります。総合的な知識と技術があり、病気がわかる皮膚科医が診るからこそ、美容分野でも患者さんの信頼を得られるのです。少なくとも皮膚科専門医の資格をとってから美容皮膚科に進んでもらいたいです。
医師というのは社会的に重い立場にあります。人の生命や人生に深く関わる仕事です。自分を磨いていかなければ通用しないだけでなく、他人に迷惑までかけることになります。
それから技術に加えて人格も磨いていって欲しいです。これは医学部だけでは学べないことで、人間性を深める思想や哲学などとも積極的に接していって欲しいです。
―先生の医療に向かうポリシーをお聞かせ頂けますか。
一つは、皮膚科医としての二十五年の知識と経験を美容皮膚科に生かしていく、ということです。
もう一つは、先端医療を取り入れつつ根拠のある正しい医療技術を提供し、患者さんに満足して頂くことです。
―最後に、ご家族とご趣味についてお聞かせ下さい。
妻と中三の息子と高三の娘、それからラブラドール犬(チョコレート色)を一匹飼っています。趣味は映画・音楽鑑賞です。
『デイ・アフター・トゥモロー』を息子と見に行きました。
実は感動屋なのです。『ダイバー』という映画をビデオで見たときは、涙が止まりませんでした。映画を見ては泣いているので、子供たちが「お父さんきっと泣くよ」と賭けをしているくらいです。
でも感動するということは、脳が賦活されて健康に良いのですよ。『冬のソナタ』にもはまっています(笑)。
助教授まで勤めながら美容皮膚科の道を選び、真剣に皮膚科医療の未来を見詰めたかと思うと『冬のソナタ』の話題へ。乃木田先生は、非常に人間味あふれる医師でした。一般の医療にもまして患者さんの心に敏感でなければならない美容医療の世界では、そんな柔軟な姿勢こそが大切なのでしょう。