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きめ細かい医療で地域に貢献

篠本 雅人 院長

篠本 雅人 院長プロフィール

 キッズ・ファミリークリニックささもと小児科は千葉県船橋市にあり、JR総武本線の津田沼駅からバスで約10分の住宅街で周囲にはマンションや幼稚園、スーパーなどが立ち並ぶ。
 篠本院長は近くで開業していたお父様の診療所を継承し、患者数の増加に伴って現在の場所に移転した。子どもだけでなく、その家族の病気にも心を配り、きめ細かい丁寧な診療を心がけ、皆から頼りにされるホームドクターとして地域に貢献している。プライベートでは3人の子どもの父親である。子どもたちの健康を願う篠本院長にお話を伺った。

 1959年に千葉県に生まれる。1988年に東京医科大学を卒業後、2004年まで東京医科大学病院小児科に勤務する。その間、1999年から2001年までスウェーデン・カロリンスカ王立研究所に客員研究員として在籍する。帰国後は大学病院で小児科の医局長を務め、2004年に父親の診療所である篠本小児科を継承する。2008年に、キッズ・ファミリークリニックささもと小児科と改称、移転し、現在に至る。日本小児科学会認定小児科専門医、日本体育協会スポーツドクター、関東学生ヨット連盟レースドクターなど。


開業前後

外観

 篠本院長のお父様は小児科医として、千葉県船橋市で篠本小児科を開業していた。

 「勤勉な父が見せる医師の姿に幼い頃から憧れ、尊敬していました。その影響が大きく、進学先として自然と医学部を目指すようになっていました。」

 東京医科大学を卒業後は東京医科大学病院で小児科医として勤務する。1999年からはスウェーデンのカロリンスカ王立研究所に在籍し、「細胞死」の研究を行った。

 「カロリンスカ王立研究所はノーベル生理学・医学賞の選考委員会があることでも知られています。私の所属した研究室のボスもノーベル賞の選考委員の一人でした。」

 2001年に帰国後は東京医科大学病院で2年間、医局長を務めた。その任期を終える頃、具体的に開業について考え始めたそうだ。

 「私は医局も好きでした。常に大学病院の第一線で勤務ができて恵まれていたと思います。留学の数年前から週に1回、父の診療所の手伝いをしていました。スウェーデンにいる間に研究に興味を持ち、大学病院に残ることも考えました。しかし、日本に戻ったとき、父も高齢になっていました。多くの患者さんから『お父様の後は先生が引き継ぐんですよね』、『うちの子をこれからもお願いします』といったことを言われ、そうした期待に後押しされて、この場所での開業を考えるようになりました。」

 小児科の医局員が少なくなっていたことや、入局の頃からずっと大学病院の実践的なポジションにいたこともあり、大学病院を辞めるまでには時間がかかったが、2004年にお父様の診療所をそのまま引き継ぐ形で開業した。当初は診療時間の延長、スタッフの増員、器材の導入などのソフト面を変更したが、改装などは特に行わずに続けていた。

 「1年、2年と経つうちに、口コミや評判を聞いてくださったのでしょうか、それまで内科や耳鼻科にかかっていた患者さんが来院するようになりました。さらに、周囲の住宅状況も変化して、人口の動態も変わり、患者数が増加しました。そのままの診療所では許容範囲を超えてしまい、ハード面を変更するのは困難だったので、早々に移転を考えるようになりました。」

 2006年12月に、旧診療所から800メートルほど離れた場所にあるショッピングセンターの駐車場の一部の場所に移転計画を立てた。当時、問題となっていた耐震強度偽装事件の影響で、建築の許可が下りたのは2007年の9月であった。許可が下りてからは順調に進み、2008年4月にオープンにこぎつけた。移転資金は4000万円程度で、自己資金とお父様からの借り入れで賄っている。同時に、隣地に薬局も開業した。

 オープン当初の宣伝は特に行わなかったという。

 「医療コンサルタントの知り合いに、良い機会だからPRすることを勧められましたが、旧診療所で患者数がどんどん増えていましたし、かかりつけの子どもたちのためのクリニックなので、宣伝は控えるようにしました。新しいクリニックを開業して、初日から80人以上の患者さんが続きました。そのため、新しいシステムや新しいスタッフなど、慣れないことが多くて当初は大変でした。」

 外来患者数は旧診療所の継承当時は週に200~250人だったが、移転前の2008年は300~350人、現在は500~600人と順調に推移している。


クリニックの内容と特徴

病院風景

 キッズ・ファミリークリニックささもと小児科では、標榜科目に小児科、内科、アレルギー科を掲げ、ホームドクターとして子どもだけでなく、その家族など大人の診察もし、いろんな相談にものっている。きめ細かい診療をモットーとし、患者数の増加に対しては、大学病院などから非常勤医師や子育て中の女性医師の応援で、丁寧な対応ができるように心がけている。

 また、ホームページを展開し、インターネットの時間予約システムも導入している。それだけでなく、患者さん一人一人に情報をこまめに発信している。

 「予約システムに患者さんのメールアドレスが入っているので、お知らせがあるときにはこちらから一斉に、あるいは条件付きで抽出した人たちだけにメールを送ることが可能です。例えば、年末年始の情報を一斉メールで送ったり『お子さんは年長になったので、MRワクチンの接種を受けてください』といった情報を限定した患者さんに送ったりします。最近では、一定年齢の女性に子宮頸がんのワクチンの情報を送りました。」

 クリニックは篠本院長がデザインを考えた。待合室の壁は曲線を使い、色使いも明るくし、長く待っても居心地がいい場所になるように工夫をした。大きなテレビを2台置き、子どもが遊べる空間も広くとっている。

 「大きなテレビを導入したのは、お子さんがDVDに夢中になっておとなしく待っていられるからです。お子さんが静かにしていれば、お母さんたちも安心して雑誌などをゆっくり読むことができ、待ち時間の間イライラしないで済みますからね。」

 東を向いた正面は全面特殊サッシで目隠しは入れず、オープンになっているため、解放感や清潔な雰囲気を感じさせる。

 「初めは美容室だと勘違いして入ってくる方や『何のサロンですか』と覗きにいらっしゃる方もいましたよ(笑)。」

 通院している患者さんは9割以上が子どもで、乳幼児の頃から長く通っている子どもが多い。また、その父親、母親も篠本院長のお父様の代からの患者さんという人も多くいて、今では地域に欠かすことのできないホームドクターの地位を築いている。


日本の医療の良さ

 スウェーデンは福祉が進んでいるので、医療費は日本よりはかからないですね。ただ、日本では緊急のときに医師が休日でも出てきてくれたりしますが、あちらでは時間外は看護師対応がほとんどで、医師はわずかしかいません。私が大学病院に勤めていたとき、主治医をしていた免疫不全症の子どもが両親とアメリカで暮らしていました。年末に急に具合が悪くなりました。しかし、アメリカでの主治医に全く連絡がつかず、日本での主治医だった私に連絡があり、1月2日に帰国して、そのまま入院、私が処置をしました。日本の医療は個々の医師の意識レベルが高く、献身的で、サービス面など総合的に見ても優れているのに一般の方は気付いていないと思います。私はこの意識を大切にして、日々献身的な気持ちを大切にして診療しています。


院長のプライベート

篠本 雅人 院長

 開業してからは時間に余裕ができたので、朝、小学生の娘を学校に送ってからクリニックに来ています。たった200メートル程度の距離を娘の柔らかい小さな手を握って一緒に歩いていくことにささやかな幸せを感じます。
 また学生時代からヨットに乗っており、今は出身大学のヨット部の監督を務めています。日本ヨット協会のA級審判を取っているので、春秋の関東学生ヨット選手権大会のときに審判もします。ヨットは、職業に関係なく様々な人と同等な立場で接することができて、気分もリフレッシュします。患者さんが少ない夏がヨットのシーズンなので、母校のヨット部の練習を指導しています。冬はクリニックが忙しくなるので、冬眠しています(笑)。冬は食事やアルコールを節制して早く寝るなど、体調管理を心がけています。


開業に向けてのアドバイス

病院風景

 私のように継承して開業するという場合でも「維持するためには変わらなければいけない」と思います。医療の世界の進歩はもちろん、時が経てば環境やシステムが変わってくるので、ある時点で大きく変える必要もでてきますし、常に周囲を把握し対応するためには、変わらなければならないと考えています。
 私のクリニックが今こうして順調なのは、自分の能力というよりも場所が良かったことが大きいですね。父が開業していたため、周辺のライバルの進出が抑えられていたこと、旧診療所から近くのより良い場所に移転したことが良かったですね。ここは後ろが小学校、隣が幼稚園、少し行ったところに別の幼稚園と幼児教室もあるという立地です。クリニックを継承しても、さらに立地条件の良いところに移転しシステムの改善など、「変わる」ということを検討してみることも良いでしょう。
 そして、きめ細かく、地域へ貢献する診療に励めば必ず報われると思います。


タイムスケジュール

タイムスケジュール

クリニック平面図

平面図

クリニック概要

キッズ・ファミリークリニック ささもと小児科

  院長 篠本 雅人
  住所 〒274-0825
千葉県船橋市前原西6-1-22
  医療設備 心電図、スパイロメーター、血球計算機、AED
  物件形態 テナント
  延べ床面積 40坪
  開業資金 クリニック内装2500万、設備器具500万、そのほか家賃など500万、予備資金1500万(全く手を付けず)
  URL http://www.sasamoto-shounika.com/pc/index.html
地図

2010.11.01.掲載 (C)LinkStaff

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