2005年07月06日
フォトフェイシャル機器に関して
一般の方からだけではなく、医療機器や美容機器取り扱い業者の方からも質問をしばしばいただきます。本日は下記のご質問をいただいたので、ここで私の返事を紹介します。
度々申し訳ございませんが、フォトフェイシャル機器に関してお聞きしたいのです
が、フォトフェイシャル機器の価格や機能を教えていただきたく思います。
一応、ネット等を利用して探しては見ましたが…
色々と申し訳ございませんが、よろしくお願いします。
1998年、イスラエルに本社を持つESCシャープラン社のご好意でIPL(Intense Pulsed Light)装置、フォトーダーム、引き続いて、ヴァスキュライトを貸してもらいました。担当のアメリカ人の社員の方がレーザー治療に携わっている日本中の医師を面接して回り、私を含めた2人の医師を選び、2人はサンディエゴで開かれたIPLのワークショップへ招待されました。その後、私の元に日本初のIPL装置が届けられました。
IPLとはレーザーが単一波長の光であるのに対し、カメラのフラッシュと同様、全ての波長の光が交じり合った白色の光を高エネルギーで発します。使用フィルターにより、皮膚に有害な紫外線領域を含めたフィルターに表示された波長より短い波長をカットオフします。治療目的に応じ、フィルターやパルス幅(照射時間)などの照射条件を工夫します。
私の当初のIPLの使用目的は色素(ダイ)レーザーで治療の限界が来た赤あざの更なる改善や、黒あざの効率的な治療を追及すること、および脱毛でした。そして、それなりの使用効果が上がりました。実はその2年くらい前からアメリカレーザー医学会でIPLでの治療の発表が出てきていましたが、評判の悪いものでした。ですから、私がIPLを使い始めていると聞くとアメリカの知人医師たちは「それってほんとはどうなの?」と興味深げに尋ねてきます。私はアメリカでの初期の適用が悪かったのだと思います。なぜなら、その頃の発表は主に刺青治療にIPLを用いた発表であり、色が多少薄くなったものの傷あとができている症例を「効いた」として発表していたからです。刺青治療には照射時間が長すぎたのです。IPLの照射時間は通常ミリ秒単位です。刺青のインクをターゲットにするにはRox Anderson教授が開発したナノ秒単位という極端に短い照射時間を用いたQスイッチレーザーを用いることでよい結果が得られることがすでによく知られており、傷あとの生じた症例を、学会員の先生達は「何をいまさら」という目で見ていたのです。
ところがこのIPL装置をアメリカのPatric Bitter Jr.先生はまったく違う方法で使用し始めました。IPLが幅広い波長の光を出すことを利用して、これを弱めの出力で顔中にあて、しみやくすみ、赤ら顔、毛穴のひらき、産毛、皮膚のはり、などをダウンタイムなく3週間ごとに5回くらいかけて徐々に改善していこうというものです。彼が「フォトフェイシャル」と名づけ、アメリカで人気となってきたこの方法を日本人にも試してみてくれないかと、その後設立されたESCシャープラン日本支社の社員の方たちが頼みに来られました。2000年の早春でした。今までは、いかに効率よくできるだけ少ない治療回数で目的としたものを改善するか、という観点で治療方法を工夫してきたのですが、今度はまったく正反対の考え方です。いかに他人に治療していることを気付かれずに、少しずつ、でも確実に、肌全体をよくしていく、というものです。やってみると、これが日本人のニーズによくマッチしたようで、大変人気の高い治療になり、雑誌やテレビにもよく取り上げられるようになりました。2000年に同じ装置を貸してもらわれた関東の大学病院もこの「フォトフェイシャル」を始めたため、「大学病院でも行われている」ということも人気に拍車をかけることになったと思います。
ところが、人気に応じて内科や産婦人科、整形外科といった、皮膚にも美容にも縁のなかった科の医師たちがフォトフェイシャルを手がけるようになって来ました。私は機械を貸していただいている身ですから、機械のユーザーの先生方のご質問には可能な限りお答えしていました。ところが、まったく皮膚の治療についてご存知のない先生方から、「しみに種類があるのですか」などという返答に困るような初歩的な質問を多く受けるようになりました。また、ノーダウンタイムが売り物のはずの治療ですが、やけどの状態になってしまったり、しみが却って濃くなってしまったり、など副作用も多く見られるようになりました。反対に副作用を恐れるあまりうんと弱い出力で治療するためか、「5回通ったが何の改善もなく、お金をどぶに捨てた気分」という声も聞かれるようになりました。術者や治療施設によって結果に随分バラつきが見られるようでした。
そこで登場したのが第2世代IPLです。ダブルフィルターで短い波長だけでなく、熱エネルギーとなり、不要に皮膚を熱してしまう長波長領域の光をもカットオフするのが特徴です。皮膚が過剰に熱せられるともちろん火傷を起こします。治療に使うエネルギーの2倍のエネルギーが熱となって消費されてしまうため、効果を得るためには高いエネルギーを使用しなくてはなりません。高いエネルギーを用いることにより、色素沈着も起こしやすくなります。熱の発生を抑えるために皮膚を冷たいジェルや特殊な冷却装置によって冷やします。すると毛細血管が縮んでしまうため赤ら顔の治療がうまくできません。第2世代IPL装置の登場によりこれらが解決されたのです。第2世代IPLではフォトフェイシャルの3分の1のエネルギーで同等以上の改善が得られます。それだけ副作用の危険性が低くなるということです。1.5回の治療がフォトフェイシャル5回分の効果に相当すると言われます。治療の手間としては同等なので1回あたりの治療費は値上げ不要です。このEllipse Flexという装置はデンマークのDDD社がルミナス社(元ESCシャープラン社)とは別に独自に長年かけて開発してきた装置で、前に写真をご紹介したデンマークのPeter Bjerring教授がずっと開発に関与されてきたものです。
私がIPLを使用し始めてから、Rox Anderson教授がしきりに、IPLはどうだ?と学会などで出会うと質問されます。レーザー治療の開発者なのになぜIPLに興味があるのですか、と尋ねてみたところ、「赤あざを光で治療しようと思い立った1980年当時、まずIPLで治療してみようと思って試したのですが、適切な条件を出せる機械が作れなかったので、レーザー装置を作ることにしたのです。」という返事が帰ってきました。
現在世界では、Ellipse Flexと同様にダブルフィルターで照射時間も同様なものが出せる小型機種がいくつか作られ、日本にも導入されています。しかしながら、電気容量の不十分な小型機種では照射時間中ずっと安定した出力を保つことができません。そのため、十分な治療効果が期待できず副作用の心配も大きくなると私は考えています。
投稿者 biyou : 2005年07月06日 18:22